幕間【PENPENZ】29:PENPENZ、その後…
バタケを土葬し終え、PENPENZの五羽はしょんぼりとうなだれながら城の外れを歩いていた。
空はどんよりと曇り、風はひんやりと頬を撫でる。
先頭を歩く太郎が、長い溜め息をついた。
「……地上へ帰る方法、探さないとなぁ。こんな空の上で暮らすわけにもいかないし」
その言葉に、次郎が腕を組んで首をかしげる。
「……下が海か川だったら、ワンチャン飛び降りる? ほら、羽ばたけば案外どうにか――」
三郎は即座に目を丸くした。
死んだ魚のような瞳がさらに大きく見開かれる。
「……何言ってんの兄ちゃんたち……そんなのムリムリ。ボクが高所恐怖症って知ってるでしょー!」
良子もだるそうに羽をばたつかせ、同調する。
「……そうよ、私もいやよ。下が何百メートルあると思ってるの」
そんな中、花子が小首をかしげ、にやりと笑った。
「……私もスカート履いてるから無理ぃー」
「「「え? スカート!?」」」
太郎・次郎・三郎の三羽が揃って叫ぶ。
花子は頬を染め、腰をくねらせながらセクシーポーズを決めてみせた。
「イヤーン♡」
「「「いや、着物じゃん!!!」」」
三羽そろって見事なツッコミ。
良子まで吹き出す。
花子はけろりと肩をすくめ、羽先で髪を払う仕草までつけた。
「冗談は置いといて……これからどうしようかしらね。 帰るにしても方法が分からないわ」
その時――
バコォォォンッ!
突如として大地が震え、耳をつんざく轟音が響き渡った。
「「「「「ひぃぃぃぃーーーー!!」」」」」
五羽は一斉に悲鳴を上げ、羽をばたつかせて跳び上がる。
恐る恐る空を仰いだ太郎が、声を裏返らせる。
「な、なに!? 魔王城の上……壊れて、変な怪物が頭出してる!」
三郎と良子は恐怖で抱き合い、わけの分からない声をあげる。
「「オあいえrpちあmヴぃrばぁぁぁっ!」」
次郎は指を震わせながら天を指した。
「あ、あれ! あれ魔王じゃない!?」
花子は顔を青くして叫ぶ。
「誰よぉーーー! 魔王怒らせたのは誰ーーーーっ!」
城の上では、どったんばったんと激しい戦闘音が続いている。
恐怖に固まるPENPENZの前で、大地がさらにうなりを上げた。
ドォーーーーーン!!
目の前に、化け物の下半身がドスンと落下してきた。地面が割れ、砂煙が吹き荒れる。
「カ、カ、カ、カ……」
太郎の声が裏返った。
「カイブツだーーーー!!」
次郎が悲鳴を上げ、三郎と良子は白目を剥き、泡を吹いて「ぶくぶくぶく」。
花子は半泣きで羽をばたつかせる。
「わーーーーん、漏れちゃったじゃないぃーーーー!」
慌てふためく五羽の足元が、突然大きく傾いた。
「おわぁぁぁぁぁ、スベルスベルスベル!」
次郎が滑りながら叫ぶ。
「わっわっわ、落ちるぞこれ! 三郎と良子が落ちる!」
太郎が焦る。
花子は涙目で、羽をばたつかせた。
「えーーー、下は地面じゃないの!!」
その瞬間――
上空から無数の光の鎖が降り注ぎ、大陸そのものを締め付けるように絡みついてきた。
「今度は何ぃーーーー!」
花子が絶叫。
「に、にいちゃん! 光の鎖に引き寄せられるよ!」
次郎が必死に羽をばたつかせる。
太郎は一瞬、懐かしさに目を細めた。
「……なんか懐かしく感じるなぁ。まるで故郷の――って惚けてる場合じゃない! あぁぁぁぁぁ!」
「わーーーーー!!」
次郎と花子の悲鳴が重なる。
そして――
PENPENZの五羽は、きらめく光の鎖に包まれ、渦を巻く眩い光の中へと吸い込まれていった。
その先に何があるのかも分からないまま、ただ運命に身を委ねながら――。
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