幕間?【PENPENZ】26:まだバタケがいるから!
「ぶっ殺してやるわよォォォーーッ!!」
怠惰の魔人こった姫が絶叫と共に地を蹴った。
土煙が噴き上がり、黒い残像が雷のように走る。
「うわっ!」
PENPENZは本能的に飛び退き、八方へと散開する。
次の瞬間――さっきまで彼らが立っていた地面が轟音と共に爆ぜた。
土の地面が大穴を穿ち、乾いた土塊と砂塵が爆風のように四方へ飛び散る。
「ひぃぃっ!」
「当たってたら今ごろミンチだよぉ!」
良子、三郎は顔面蒼白。
土煙に咳き込みながらも、全員が慌てて構えを取る。
「ひぃっ! 危なかったぁ!」
花子はほっとしている。
「にいちゃん、今の見た!? 当たったら一撃で吹き飛んでたぞ!」
次郎は地面のクレーター見つめながら冷や汗をかいた。
「しゃ、しゃべるな! 集中だ!」
太郎はこった姫を睨みつけながら言う。
否が応でも、ガチンコの戦闘を強いられる。
五対一――それでやっと互角。
太郎が棍棒を振り抜く。
唸りを上げる軌道は土煙を割り裂き、
こった姫の頭を狙う。
「はぁっ!」
だがこった姫は上体を反らし、鼻先をかすめて回避する。
「甘いわねぇぇっ!」
返す掌底が太郎の胸を叩き、彼は大きく吹き飛ばされ、土に叩きつけられた。
「にいちゃーーん!」
三郎が小太刀二刀を交差させ、弾丸のように踏み込む。
縦横に斬撃を浴びせるが、こった姫は紙一重で回避。
「ちょこまかと鬱陶しいガキねぇっ!」
爪が閃き、三郎の頬に鮮血の筋が走る。
その一瞬を狙い、良子がボーガンを放つ。
「当たれぇっ!」
矢は一直線にこった姫の背を狙ったが、腰をひねって弾かれる。
「フンッ!」
こった姫が矢を払いのけた瞬間――。
その隙を逃さず、次郎の風魔手裏剣が唸りを上げて飛び込んだ。
旋風が巻き起こり、刃はこった姫の頬を掠めて紫の血が飛沫を描く。
「こっちだぁぁっ!」
「……ッ、この……!」
こった姫の眼光が鋭く光り、再び超スピードで懐へ飛び込む。
「来るっ!」
花子が必死にクナイを投げ放つ。数本は空を切ったが、一本がこった姫の腕をかすめた。
「ちっ……小娘が!」
怒りの蹴りが放たれる。
「ぎゃっ!」
花子の体が宙を舞い、土煙を巻き上げて転がる。
「ねえちゃん!」
良子が慌てて駆け寄ろうとした瞬間、太郎が泥だらけの顔で棍棒を地面に突き立て、立ち上がった。
「まだ……まだだ! 俺たちは……バタケが戻るまで時間を稼ぐんだ!」
「そうだ……!」
「負けない……!」
「ここで逃げたら忍者じゃない!」
ボロボロになりながらも、PENPENZは再びこった姫を囲むように配置についた。
砂煙と血の匂いの中――小さな体は震えていたが、それでも踏みとどまっていた。
「……ふぅん」
こった姫が眉をひそめ、ぴたりと足を止める。
荒い呼吸を繰り返すPENPENZを見回し、唇を歪めて冷笑を浮かべた。
「おまえたち……さては、さっきの虎が復活するのを待ってるのかしら?」
突然の言葉にPENPENZは目を見開いた。
「なっ……!」
激しいキレっぷりから一転、冷静にかけられて言葉にびっくりする太郎。
「バタケは……必ず戻ってくるんだ!」
次郎の声は裏返り、必死すぎてかえって震えていた。
その必死さがこった姫の嘲笑を誘い、唇が大きく吊り上がる。
「ふふっ……あはははは! おっかしいわねぇ。もうとっくに死んでるわよ。だって私の“覚り”には、声ひとつ響いてこないんだもの!」
「うそだ!」
「そんなの……信じない!」
三郎と良子は反発する。
こった姫は紫の舌で唇を舐め、顎でバタケの倒れた方角を指す。
「現にさぁ……あそこに転がってるでしょう? さっきから微動だにしてないじゃない」
「そ、それは……!」
三郎は動揺する。
太郎が棍棒を強く握りしめ、必死に声を張り上げる。
「それは俺たちがすぐに頼らないよう、演技してるんだ! 回復に集中してるんだよ!」
「そうだ! バタケは絶対に戻る!」
「わたしたちに頑張れって、言ってくれたのよ!」
次郎と花子は反発する。
その言葉に、こった姫は肩を揺らしてにやけた。
「ふふん……そう思いたいなら勝手に思ってなさいよ。だったら確かめてあげるわ。今すぐ、あの虎をひっくり返して――」
言いかけた瞬間。
「「「やめろォォォッ!!」」」
太郎、次郎、三郎が咆哮し、花子と良子も同時に走り出す。
「バタケの回復の邪魔は――絶対にさせない!!」
小さな体が土煙を蹴り、死神のように迫るこった姫へと突進していった。
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