表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠に巡る愛の果てへ 〜XANA、理想郷を求めて〜  作者: とと
第2部:リクとエリナ 〜新たな世界での出会い〜
157/198

第127話:禁忌を告げる声

 背後から轟音が響き渡った。爆ぜるような衝撃音が幾重にも重なり、石造りの廊下そのものが震える。

 振り返らずとも分かる――ライアンたちが、ついに強欲の魔人PIROとの死闘を始めたのだ。


 リクもエリナも足を止めなかった。

 耳に焼き付く戦いの気配に心を揺さぶられながらも、二人はただ前へ。仲間たちの覚悟を噛みしめ、石の階段を一段、また一段と必死に駆け上がる。

 背後の轟音が、まるで「決して振り返るな」と告げているようだった。


 やがて、最後の段を踏みしめる。

 息を切らせながら顔を上げた二人の視線の先――そこには巨大な両開きの扉がそびえ立っていた。人の背丈など軽く十倍はあろうかという、威圧そのものを形にしたような扉。外観からは到底想像できぬほど荘厳で、近づくだけで全身を押し潰されるような重圧がかかる。


 リクとエリナは立ち止まり、互いに視線を交わした。

 リクは拳を固く握りしめ、絞り出すように声を張る。


 「行くぞ!」


 「うん!」


 エリナは強い瞳で頷き返した。その返事が、二人の心を決戦へと縛り直す合図となる。


 ――ギィィィ……。


 扉を押し開いた瞬間、重苦しい音とともに、二人の目の前に広がったのは異様なまでの闇だった。


 足元には赤い絨毯だけが真っ直ぐに延びている。しかし周囲は墨を流し込んだかのように漆黒で、壁も天井も、何ひとつ存在していない。光も音も吸い込まれるようで、歩を進めるごとに靴底の音さえも、虚空に呑み込まれて消えていく。


 「……ここ、本当に“部屋”なの?」


 エリナが不安げに囁く。


 「壁も天井も……何も見えない。まるで、闇に飲み込まれそうで……」


 その声がわずかに震えているのを、リクは聞き逃さなかった。


 彼は剣を抜き、鋭く周囲を見渡す。


 「気を抜くな。幻惑かもしれない。だが――道があるなら進むしかない」


 強がるように言い放ったが、喉の奥は乾き、心臓は高鳴っていた。


 二人は肩を並べ、絨毯の上を一歩、また一歩と前へ進む。

 踏みしめるたびに足音が大きく響き、それが逆に緊張を煽る。背中に汗が流れ、呼吸が乱れるのを互いに感じながらも、決して歩みを止めなかった。


 「ねぇ、リク……もし、ここで私たち二人とも倒れたら――」


 「言うな」


 リクは短く遮った。


 「絶対に倒れない。……俺たちがここまで来られたのは、みんなの命を背負ったからだ」


 短い沈黙。

 しかしその沈黙は、互いを結び直す強い絆となった。


 やがて――。


 ――ボッ。


 突如、左右の闇の奥で松明に火が灯る。

 ひとつ、またひとつ。まるで二人の歩みに合わせるかのように、順番に炎が走っていく。

 橙色の火が絨毯を挟んで一直線に連なり、ようやく空間の輪郭が浮かび上がった。


 「……!」


 エリナが小さく息を呑む。


 炎が次々と広がり、最後には正面を照らし出す。

 漆黒の闇の奥――そこには巨大な玉座。

 そして、玉座に鎮座する影。


 魔王ルシファー。


 炎に照らされたその姿は、言葉を超えた圧力を纏っていた。巨躯であるにもかかわらず、微動だにしない存在感が、二人の心臓をわし掴みにする。

 目が合った瞬間、背筋に冷たい刃を突き付けられたような感覚が走る。


 「……ここまで来たか」


 低く響く声が、空間全体を震わせた。氷のような眼差しが二人を射抜く。


 リクは一歩前へ進み、剣を構えた。


 「ここでおまえを討ち、すべてを終わらせる! ここで決着だ!」


 だがルシファーは鼻で笑い、まるでその言葉など存在しないかのように続ける。


 「……やはり貴様らか。古より続く理を破り、禁忌を犯し、我が主の怒りを買った“■■■■■■”」


 リクは目を見開いた。


 「……なに? 今、なんと言った!?」


 ルシファーは冷ややかに視線を逸らし、ゆるりと玉座から立ち上がる。


 「知る必要はない。貴様らはイレギュラーに過ぎぬ。……さて、我が主の御心を満たすため、早々に幕を引くとしようか」


 その巨体が動いた瞬間、圧倒的な重圧が空間を満たした。

 リクとエリナは同時に武器を構える。


 ――ついに、魔王との戦いが幕を開ける。

「読んでくださって本当にありがとうございます。

ブックマークや評価、感想をいただけたら、今後の創作の励みになります。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ