幕間?【PENPENZ】18:五忍衆、妖刀解放
砂塵を巻き上げながら、バタケと五忍衆の激突は続いていた。
だが──妖刀を手にした5人の動きは、もはや先ほどまでとは別物だった。
刀身から立ち上る黒い靄は、まるで意思を持った生き物のように蠢き、刀身に絡みつき、斬撃の軌道を不規則に歪ませる。
それは視覚だけではなく、空気の流れすら歪め、回避のタイミングを狂わせる。
一度は完璧にかわしたはずの刃が、背中をなぞるように迫ってくる。
その感覚に、バタケの耳がピクリと動き、目が細まった。
「……ほう」
正面から迫るのはらふしゅたいん。踏み込みは地を割るほど重く、刀身を振り下ろすたびに黒靄が爆ぜるように広がる。
バタケは両腕を交差させ、衝撃を正面から受け止めた。
瞬間、刃先から漏れる霊圧のような衝撃が骨を伝い、虎の逞しい筋肉をきしませる。
「チッ……重い」
息を吐く暇もなく、横からなおたんが切り込む。
その刃筋は低く鋭く、足元を狙って一閃。バタケは反射的に右脚を引き上げてかわすが、その動きに合わせて、コナスキー・ハイが死角から一直線の突きを放ってきた。
突きの速さは稲妻のようで、視界の端で光の線となり、喉元を狙う。
「ぐっ……!」
バタケは腰をひねってかわすが、その動作で体勢がわずかに崩れる。
そこへ──背後から高く跳び上がったミン・キャンベルが、縦一文字の斬撃を振り下ろしてきた。
黒靄を纏った刃は空気を裂き、耳の奥で低く唸るような不気味な音を響かせる。
「チッ……!」
バタケはなおたんの刀を爪で弾き、その勢いのままコナスキー・ハイの突きをかわす。
しかし背後からのミン・キャンベルの一撃は避けきれず、肩口に熱い痛みが走った。
鮮血が弧を描き、黄金の毛並みを深紅に染める。
痛みよりも、そこにまとわりつく妖刀の気配のほうが不快だった。まるで傷口から靄が入り込み、血肉を侵そうとしているかのようだ。
「ぐぅ……!」
足場を崩されぬよう踏みとどまりながら、バタケは前へ出ようとした。
だが、再びらふしゅたいんが踏み込み、低い姿勢から斬り上げてくる。
その動きは先ほどよりも速く、正確で、無駄がない。
──違う。速くなったのではない。
妖刀の靄が……俺の動きを読んでいる。
直感がそう告げた。
らふしゅたいんの瞳の奥で、黒い炎がちらりと揺れる。
同時に、なおたんとコナスキー・ハイも息を合わせるように動き、三方向から挟み撃ちにしてきた。
刃と刃が交わる音が、まるで金属ではなく骨が軋むような、不快な響きに変わっていく。
攻防のたびに、バタケの呼吸は荒くなり、血の匂いが濃くなる。
* * *
その光景を、岩陰からPENPENZが固唾を飲んで見守っていた。
三郎が震える声で呟く。
「やばいやばい! これ、本当にやばいよ……!」
花子と良子も緊張で耳を伏せ、次郎が声を張り上げた。
「助けに行こう! もう時間がない!」
太郎も大きくうなずき、叫ぶ。
「いくぞぉーーー!」
全員が飛び出そうとした、その瞬間──。
「来るんじゃないっ!!!」
戦場の中心から、バタケの怒鳴り声が響いた。
その迫力に、PENPENZの足がピタリと止まる。
「ヒーローが……一般人に助けられたら終わりだ!」
虎の瞳がぎらりと光り、牙をむき出しにして言い放つ。
「まだだ……まだ俺の方が強い!」
その瞬間、バタケの目がキラーンと鋭く輝き、まるで獲物を仕留める寸前の獣のような殺気を放った。
「……かっこいい」
太郎が思わず口元を緩める。
良子は胸を押さえ、花子は目を見開いたまま呟いた。
「こんなの……惚れるしかないでしょ……」
三郎も頬を赤らめ、太郎は力強くうなずく。
「やっぱり動物界最強のバタケだ!」
戦場では、妖刀の黒い靄とバタケの黄金の眼光が、互いの闘志をぶつけ合うように激しく煌めいていた──。
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