幕間?【PENPENZ】16:虎の咆哮、空を裂く
「……聞こえたぞ、悲痛な叫びが。 そして――見届ける。 お前たちの悪しき行いは、この場で終わる!」
突如、広場の頭上――月明かりの差し込む空から、低く響く声が降ってきた。
張り詰めた空気を切り裂くようなその声に、すべての視線が空を仰ぐ。
「光を失った大地に、今、正義の息吹を吹き込む者……! 我こそは――バタケ!!」
叫びと同時に、夜空から虹を纏った彗星のような存在が舞い降りた。
地面に着地したその男は、尋常ではない筋肉を備えた人間の体躯――しかし、その首から上は凶暴な虎そのもの。
猛々しい咆哮を上げる口元には鋭い牙が光り、燃えるような眼が敵を射抜いている。
身に着けているのは、あの目にも鮮やかなレインボーの虎柄シャツ。
胸元の虎の顔と本人の顔が奇跡的に調和しており、両肩にあしらわれた金の葉飾りが月光を反射して煌めいていた。
「「「「「バタケェェェーーー!!!」」」」」
太郎、次郎、花子、三郎、良子の兄弟が、全員同時に叫びながら飛び跳ねた。
まるで限界を迎えていたとは思えないほど、元気よく、勢いよく、瞳を輝かせて大歓喜。
「お、おまえたち……さっきまで瀕死だったじゃないの!?」
なおたんが目をひん剥き、信じられないというように声を上げる。
「そんなの唾つければすぐ治るに決まってるだろっ! 当たり前だろバァーカ!!」
太郎が血の気の戻った顔で叫び返すと、次郎がニカッと笑って風魔手裏剣をくるりと回し、花子も地面から跳ね起きてクナイを両手に握り直した。
三郎は小太刀を構えながら「そりゃ治るわ」と当然のように言い、良子もボウガンを構えながら「パワーがみなぎってきたわ」と謎の再生力を見せる。
「回復早すぎるだろ!?」
「いやちょっと待て、明らかに医療の常識を逸脱してるぞ……」
「何者なの!? ていうかなんでそれで全快するの!?」
敵陣からも混乱と驚愕の声が上がる。
ミン・キャンベルは目を見開き、コナスキー・ハイは信じられないというように眉をひそめ、らふしゅたいんは「あーーーー!?」と全力で困惑した咆哮を放つ。
そんな混乱の中、バタケはゆっくりと前に進み出る。
重厚な足音が、一歩ごとに敵陣の空気を軋ませていく。
「PENPENZ……ここから先は、私に任せろ」
静かな口調に、凄まじい自信と威圧が込められていた。
* * *
ここったが前に出る。
鋭く光る目がバタケを見据え、刀の柄に指を添える。
それに続いて、コナスキー・ハイが低く構え、らふしゅたいんが唸り声を上げながら両拳を鳴らす。
なおたんとミン・キャンベルも静かに背を合わせ、五人の戦士が虎の男を取り囲む。
「行くぞ!」
ここったの号令と同時に、五者五様の攻撃がバタケへと放たれる!
シュバババッ! ドグァン! ザシュッ! ゴゴゴゴッ!
だが――バタケは動じない。
らふしゅたいんの怪力を受け止め、逆に吹き飛ばし、
なおたんの跳躍斬撃を片腕で防ぎ、振りほどく。
ミン・キャンベルの奇襲は反転蹴りで撃退。
ここったの斬撃すら、肉体の硬さで弾き返す。
コナスキー・ハイの超高速突進も、バタケの足払いで宙を舞った。
「おいおい、これ一対五のはずだよな……!?」
「ウソでしょ、バケモン……!」
「動きに無駄がない……っ」
圧倒的。
まさに圧倒的。
誰もが認めざるを得ない、虎の男の実力。
「く……悔しいけど……やっぱり」
「バタケって、強いし……」
「かっこいいんだよな……」
「オーラが違うもん」
「うちら、マジで追いつけるのかな……」
PENPENZ兄弟は思わず感嘆の声を漏らすが――その瞳はもう、諦めてはいない。
彼らの心に、再び火が灯りつつあった。
広場の月が照らす中、虎の咆哮が再び響く。
正義の拳が、悪を穿つその時まで――この戦いは終わらない。
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