幕間?【PENPENZ】13:忍びの牙、抜き放つ!
太郎の瞳が爛々と輝き、鋭く叫んだ。
「次郎! 花子! 三郎! 良子! ――武器を出せ!」
その声は、広場に響く冷たい空気を切り裂いた。
一瞬、敵も味方も動きを止める。だが兄妹たちは、その場で一斉に腰を落とし、袖や背、腰袋へと手を伸ばした。
太郎の手に現れたのは、金属製の節を備えた頑丈な棍。
長年手に馴染ませてきたそれは、握った瞬間に手のひらへ重量と温もりを伝え、背筋をぴんと伸ばさせた。
「おっしゃあ、待ってました!」
次郎の背中からは、四枚の刃を持つ巨大な風魔手裏剣がすべり出す。刃がくるりと回り、金属音を響かせながら月明かりを反射する。まるで戦場を知る古参兵の武器のように、重く確かな存在感を放った。
「これで全部ぶっ刺す!」
花子の袖口からは、鋭く研がれたクナイが両手に二本ずつ、合計四本現れた。握った瞬間、翼の筋肉が張り、瞳に燃えるような闘志が宿る。
「……ふっ」
三郎は腰から小太刀を抜き、左右の翼に一本ずつ構える。鋼の刃が月光を受け、二本の銀線が交差するように光った。
「もう、遠慮なんてしない!」
良子は背中からボウガンを引き抜き、素早く矢を番える。構えは低く、狙いは正確。矢羽が微かに震え、放たれる瞬間を今か今かと待っていた。
目の前で次々と展開される武器の数々に、敵陣の表情が変わった。
「お、おまえら……武器、どこに隠していたんだ……!?」
コナスキー・ハイの瞳が細まり、剣呑な色が宿る。
「忍者になると決めて、ずっと遊んでたわけじゃないんだ!」
太郎は棍を肩に担ぎ、声を張り上げた。
「最初から――全力だぁぁぁ!」
「おう!」
「任せて!」
「やってやる!」
「もう逃げない!」
四羽がそれぞれ短くも力強く応え、互いの間合いを確認する間もなく、一斉に地面を蹴った。
* * *
戦いの火蓋が切られた瞬間、広場全体の空気が爆ぜた。
太郎の棍が風を切り、唸り声のような音を立てて横薙ぎに振るわれる。その勢いで砂埃が舞い、迫っていたミン・キャンベルの足元を鋭く払った。
「くっ……! 速い……」
体勢を崩しながらも、ミンは素早く後方へ跳び退く。だがその間合いを詰めるように、次郎の巨大な風魔手裏剣が回転しながら飛んだ。
「くらえぇぇぇっ!」
刃先がなおたんの袖を裂き、布切れが宙に舞った。
「……ふぅん、やるじゃない」
なおたんの笑みが、わずかに獰猛さを帯びる。
花子は低く滑るように地面を走り、クナイを二本、正面と足元へ同時に投げ放った。
らふしゅたいんが「あーーー」と声を漏らしながらよろめき、足元の一本を辛うじて避けるが、もう一本が外套を裂く。
三郎は二刀の小太刀を交差させ、素早く敵陣の中を縫うように走り抜ける。
「ぬうっ……!」
コナスキー・ハイがその刃を受け止めたが、腕に重い衝撃が走り、口元を歪めた。
直後、良子のボウガンが放った矢が一直線にその間隙を突いた。
「っ……!」
ギリギリで身をひねって避けたコナスキー・ハイは、鼻で笑いながらも、その視線に明確な警戒を滲ませた。
「……本当に、簡単に捕らえられ、さっきまで泣き喚いていたペンギンか?」
兄弟の動きは淀みなく、まるで事前に打ち合わせたかのように攻撃と防御が連動する。
一羽が攻撃し、もう一羽がその隙を突き、さらに別の一羽が背後を守る――その連携は即席とは思えぬほど洗練されていた。
「思ったより……いや、それ以上に強い……」
ミン・キャンベルが吐息を漏らす。
「……油断はできないね」
なおたんも表情を引き締めた。
戦況は確実にPENPENZ優勢。
だが――広場の中心、太郎とここったが向かい合う場所だけは、張り詰めた均衡が続いていた。
太郎の棍が唸りを上げるたび、ここったの刀が水流のように受け流し、角度を変えて斬り返す。
「……いい目だ。死ぬ気で来ている」
ここったの声は淡々としているが、その瞳の奥に光が走る。
「当たり前だ……!」
太郎は呼吸を乱しながらも、口角を上げた。
「おまえが一番強そうだ!俺は、ここでお前を止める!」
二人の武器がぶつかるたび、激しい火花が散る。
周囲の戦闘音が遠のいたかのように、二人の間だけが別の戦場のような空気に包まれていた――。
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