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永遠に巡る愛の果てへ 〜XANA、理想郷を求めて〜  作者: とと
第2部:リクとエリナ 〜新たな世界での出会い〜
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幕間?【PENPENZ】11:忍者村ガチ勢、現る。

 「……あれ? 意外と、ふつうの村?」


 日光忍者村と書かれた門をくぐった五羽のペンギンたちは、ぽかんと口を開けてその景色を見回した。


 そこに広がっていたのは、想像していたような忍者の訓練場や隠し武器の数々ではなかった。整然と並ぶ瓦屋根の家々、規則正しく手入れされた畑、山あいの静かな風。どこか懐かしさすら感じる、典型的な日本の農村の風景だった。


 「にんじゃ村ってさ、もっとこう……“火遁の術!”“水遁の術!”とか、手裏剣がビュンビュン飛び交うの想像してたんだけど」


 花子が口をとがらせ、むすっとした表情で言った。


 「俺は、もっとこう、天井裏からカサカサって動く影とか、壁から刀がスッって出てくるやつだと思ってたんだけどな……」


 三郎が腕を組み、眉間にしわを寄せてぼやく。


 試しに一軒の家に入ってみると、中はやはりごく普通の農家だった。木の床、囲炉裏、壁には干し柿と味噌の樽。忍者の“に”の字もない。


 「えー、なにこれ……ただの無人の古民家じゃん。ぜんっぜん、忍者要素ないじゃん……」


 良子ががっくりとうなだれる。


 「いや、きっと奥に行けば何かあるんだって!」


 太郎が明るく言ってみせるが、次に訪れた家も、そのまた次も、どこもかしこも似たような構造と雰囲気だった。


 そして最後の、大きな屋敷に入ったときだった。


 「また古民家だよ!! ふざけんなあああああ!!!」


 三郎がついにブチ切れて、壁をぶん殴ろうと拳を振り上げた。


 ──ばこっ。


 「……へっ?」


 拳は空を切った。いや、回転戸だった。壁だと思っていたそれはぐるりと回転し、三郎の身体はそのまま吸い込まれるように、姿を消した。


 「……え? 三郎、どこいった?」


 次郎が首を傾げる。


 三郎は別の部屋で何者かに首に刀を突きつけられ、冷や汗をかきながら声だせず


 「隣の部屋かな?」

 太郎が呑気に言って、残りの四羽はそちらへ向かった。



 そのときだった。


 「──きゃっ!」


 最後尾を歩いていた花子の足元が崩れ、ぽっかりと穴が開いた。


 どさっ


 「いたたたた……。 う、うそでしょ!? 落とし穴!?」


 ぐさっ


 花子はうつ伏せに落ちた体勢のまま、何者かによって顔のすぐ横に突き立てられた一本の刀を見て、絶句した。


 (ひゃああああ……声、出せない……殺さないで……!)


* * *


 一方、先へ進んだ太郎たちは、三郎が見当たらないことに気づく。


 「三郎ぉ〜? どこにいるのぉ〜?」

 良子があたりを見回す。


 「あれ? 花子は?」


 太郎、次郎、良子がキョロキョロ周りを見回す


 「あ、あそこにはしごが!」


 次郎が叫んだ瞬間、天井に目をやると、縄ばしごが垂れていた。


 「「「うぉぉぉぉ」」」


 太郎、次郎、良子は歓喜する


 「花子や三郎も別の仕掛けを見つけて先に行ったんだよ、きっと!」


 次郎は、謎はすべて解けたと言わんばかりに、自信満々の声で告げた。


 「よし! なら見つけた人が先へ行く権利があるよね! にいちゃんたちは別の仕掛けを探して!」


 先に仕掛けを見つけた高揚感に包まれ、鼻息も荒く縄ばしごをよじ登っていく。


 勢いよく天井裏に顔を出すと──そこに待っていたのは、無言で刀を突きつける黒装束の影だった。


 「……ひっ!」


 次郎は声も出せず、冷や汗をたらたらと垂らす。


* * *


 「くそー!生意気な次郎め!俺はもっとすごい仕掛けを見つけてやるんだからな……!」


 太郎がムキになって部屋中を探し始める。


 「わたしの方がもっとすごい仕掛け見つけるんだから!」


 良子も便乗する。


 「ん?あの掛け軸、紐ぶら下がってるのはなんだろう?」


 太郎は何げなく紐を引っ張った。


 太郎が紐を引くと、壁がすーっと開いた。

 そして紐を手放すと扉は元通り。


 「きたー! 完全に隠し扉じゃんこれぇぇえ!」


 太郎が飛び跳ねて喜ぶ。


 しかし、喜んだのも束の間


 「ふふん♪」


 良子がすました顔で、スッと紐を引いてさっさと中に入っていった。


 「おい! ずるいぞー!! 俺が見つけたのにぃぃぃ!!」


 太郎が怒って後を追おうとした瞬間。


 ──スッ……


 気配。


 空気が凍るような、静かな圧。


 太郎の首元に、ぴたりと刀の刃が当てられた。


 「……ど、どちらさまですか……?」

 声を震わせながら、目だけで相手を確認しようとする。


 その姿は──言葉もなく、闇に溶ける黒装束。


 太郎の喉が、ゴクリと鳴った。

「読んでくださって本当にありがとうございます。

ブックマークや評価、感想をいただけたら、今後の創作の励みになります。」

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