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永遠に巡る愛の果てへ 〜XANA、理想郷を求めて〜  作者: とと
第2部:リクとエリナ 〜新たな世界での出会い〜
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第118話:焼大人、奇跡の初飛行

 「はぁっ……! くそっ、数が……っ!」


 リクが息を切らしながら剣を振るう。

 剣筋に切り裂かれ、魔物の体が裂ける。

 が、その隙間を埋めるように、次の魔物が這い出してくる。


 「リク! 右!」


 エリナが声を張り上げ、鎖の魔法で炎を巻き上げる。

 燃えた魔物は転げ回りながら消滅したが──


 「止まらない……っ」


 リクの脳裏に、焦燥の二文字がちらつく。


 どれだけ戦っただろうか──感覚では、空が白み始めてもおかしくないほどの時間が経っている。

 けれど、この城の中には外の気配が一切なく、昼も夜も区別がつかない。

 体感ではとっくに一晩どころか、それ以上を戦い抜いてきた気がする。


 休む間もなく、押し寄せる魔物の波。

 今いる場所が“魔王城”の内部だと分かっていても、どこまで進んだのか、そもそも進めているのか、もはや判然としない。


 「……っ、エリナ、大丈夫か!」


 「まだ動ける……でも、そろそろ限界が近いかも……」


 言葉の端に、疲労の色が滲んでいた。


 城の内部。

 次々に湧き出す魔物の群れに、リクとエリナの二人はじりじりと押し込まれていた。


* * *


 ──ガシャァァァン!!


 突然、上方の高窓が砕け散り、何かがすさまじい勢いで落下してきた。

 しかも、それは二人のすぐ目前へ。


 「っぶねええええ!!?」


 リクとエリナは咄嗟に飛びのいた。

 次の瞬間、鉄と怒声と衝突音が混ざり合い、城内に爆音が轟いた。


 ──ずしゃあああああっ!!


 土煙を巻き上げて墜落したのは、金属の骨組みに車輪と謎の回転羽根がついた奇怪な構造物──まるで、見たことも聞いたこともない「何か」だった。


 「な、何これ……!?」


 「……いや、知らんし、魔王の攻撃……?」


 エリナが困惑し、リクも戦闘の疲れを忘れるほど呆然とする。


 そして、ぐしゃぐしゃになった機体の後部から、ひとりの男が這い出てきた。


 「ちょっ……っっっ焼大人ぉぉぉおお!!」


 すり傷だらけのライアンだった。

 怒りと混乱の形相で、全身を震わせて絶叫する。


 「前見て運転しろって言っただろ!! あれだけ言ったよなぁぁ! 命が五回くらい終わった気がするんだけど!!」


 「ていうかこれ……どこをどう見たら空飛べる設計になってんだよ!!」


 ライアンが全身を震わせながら、今にも崩れ落ちそうな機体を指さして絶叫した。


 だが──その横で、土埃まみれの焼大人は、どこか誇らしげな顔で胸を張って立っていた。


 「ふ……これは“せんぷうき”というのだ」


 「……は?」


 「古の東方において、風の力で空を制したという伝説の飛行手段。 我が流派では、眠眠書房の文献第三十二巻『空を駆ける古の知恵』を参考に、独自に再現したのだ」


 顎をクイッと上げて仁王立ちする焼大人。

 その姿に、リクもエリナも目が点になる。


 「……流派って……何?」


 「というか、“せんぷうき”って単語初めて聞いたんだけど……」


 「どこかに風車とたけとんぼ混ざってるのは分かるけど……いや、分かんないな……!」


 焼大人の主張は強烈だったが、あまりにも理不尽な理論展開に、もはや突っ込む気力も奪われそうになる。


 そして、後部座席からリセル、Dai、コルクが転がり出ていた。


 「……死ぬかと思った……」


 リセルが地面に仰向けになり、目を閉じたままつぶやいた。


 「空を飛ぶ手段として……選択肢が致命的に間違っている……ワインより酔った……」


 Daiがよろよろと立ち上がり、横でコルクだけ元気にしっぽを振っている。


 地面に広がる残骸と、立ち尽くす面々──


 そして、呆然とその一部始終を眺めていたリクとエリナの口から、同時にこぼれる。


 「……何してんの?」

「読んでくださって本当にありがとうございます。

ブックマークや評価、感想をいただけたら、今後の創作の励みになります。」

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