第114話:王国XETA党結成秘話
「王室に意見を言ったり、国をサポートするための民間組織を作ろうと思う──王国、XETA党だ!!」
広場に響き渡る声。
その主は、餌穴でのゾンビペンギン戦でも民衆を率い、力強いリーダーシップを発揮した、筋骨隆々で粗野な気迫を纏う中年の男──toshiだった。
彼の拳が天に突き上げられた瞬間、その場にいた民たちの視線が一斉に集まる。
「XETAって……どういう意味なんですか?」
誰かがぽつりと呟いた。
その疑問に応えるように、一歩前に出たのは、腰に筆とパレットを下げた芸術家風の男──Gorillaだった。
「……XETA。その名は、かつてこの国を築いた建国の祖、“ゼータ女王”にちなんでいる」
「女王ゼータ様の名の綴りはZETAだった。 でも、俺たちはあえて“X”を選んだ。 “X”には正体不明、どこから来たか分からないって意味がある。 つまり──俺たち“民”のことだ」
Gorillaは、静かに拳を握る。
「王族じゃない。貴族でもない。 騎士でも、兵士でもない。 でも、俺たちには、この国を愛する心がある。 この国で生きて、この国と共に歩いてきた。 その誇りがあるんだ!」
続いて、toshiが声を張り上げる。
「……今回、この国がめちゃくちゃになった時、女王は……騎士団は……確かに間に合わなかったかもしれねぇ。 でもな、それを責めるつもりはねぇ!」
彼の目が真っ直ぐ、民衆を射抜くように向けられる。
「女王陛下も、騎士団も、命懸けで戦ってくれていた。 だったらよ──民の俺たちが、ただ守られるだけでいいのか!?」
ざわ……と空気が揺れた。
「おんぶにだっこじゃ、この国は守れねぇ! 今こそ、王国民として、自分にできることをやる時だろうが!!」
その叫びに、思わず数人の民が頷く。
「力なんてなくてもいい! 剣を振るえなくてもいい! この国を“想う気持ち”さえあれば──その一歩が、未来を動かすんだよ!」
toshiの声に続いて、女性の声が上がる。
「私たちも……泣いているだけじゃ、何も変えられない!」
銀髪の女性──AIMIRAIだった。彼女の瞳には、憂いと決意が混ざっていた。
「私は王国の平和を信じたい。でもそれは、信じて待つだけじゃだめだって気づいたの。 だから……私も、やるわ」
そして、小柄な女性がもじもじと手を挙げた。
パンツのようなお面をかぶった、どこかおかしみのある姿──ppaである。
「わ、私も……えっと、あまり戦えるわけじゃないんですけど……伝令とか、補給とか……ぜ、善処しますっ!」
ppaの一言に、場がふっと和らぎ、少し笑いが起きた。
Gorillaがその輪に乗じるように笑みを浮かべる。
「いいねぇ、いい空気じゃん。 俺はアートの力で人の心を支えるつもり。 色や形に想いをのせれば、戦うだけが力じゃないってことを証明できるさ」
toshiがにっと笑い、拳を強く握りしめた。
「XETA党は、そういう想いを持った仲間たちの集まりだ。 戦える奴も、叫べる奴も、描ける奴も、支えられる奴も、誰だっていい!」
「名もなき俺たち“X”が手を取り合い、この国を、もう一度立たせるんだ!!」
「王国──XETA党!!」
「「おおおおおおおっ!!!」」
民たちの声が、空に轟いた。
その後、結成されたばかりのXETA党に、次々と新たな参加者が姿を現し始める。
最初に来たのは、スーツ姿の青年だった。
「私も、参加していいですか?」
一人の男が人混みをかき分けて前へ出た。
スーツ姿にネクタイを緩めた風貌。だが、その目は燃えていた。
「昼はサラリーマン、でも夜は王国のために。 XETAリーマンと呼んでください。 主に書類処理や交渉事なら任せてください」
「おお、いいじゃねぇか!よろしく頼む!」
とtoshiが手を差し出すと、XETAリーマンは力強く握り返した。
続いて、背負い袋を抱えた青年が現れる。
「建築デザイナーのあおいろです。 壊れた街を、もう一度希望の形に変えてみせます。 私の力、復興に役立ててください」
「ありがてぇ……お前みたいなやつを待ってたんだ」
と、toshiは感嘆する。
最後に現れたのは、牌を握る妙にキザな男だった。
「プロ雀士のTAKAってもんだ。 戦いばっかじゃ、民の心がもたねぇ。 娯楽と癒しの場を作るのは、俺に任せてくれ。 勝負師の嗅覚は伊達じゃないぜ?」
「バカみてぇに強そうだな」
と、toshiが苦笑する。
こうして、年齢も肩書きも立場も異なる者たちが次々と集い、XETA党はゆっくりと、しかし確実にその輪を広げていく。
それは、騎士団でも王族でもない、“名もなきX”たちによる、もう一つの王国再建の物語だった。
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