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永遠に巡る愛の果てへ 〜XANA、理想郷を求めて〜  作者: とと
第2部:リクとエリナ 〜新たな世界での出会い〜
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幕間【PENPENZ】7:ここで見ぬふりしたら

 兄弟たちはモグラのようにフリッパーでせっせと土をかき分け、黙々と穴を掘り進めていた。


 「兄ちゃん、そろそろ出口かも!」


 「おう、地上の匂いがしてきたぞ!」


 期待に胸を膨らませて進んだその先、開けた空間に出た。


 ──真っ暗だった。


 広い。

 あまりにも広い。

 天井は見えず、足元は岩と土と瓦礫にまみれている。


 「なんだよ……外、じゃないのかよぉ〜……」


 「やっと地上だと思ったのに……」


 がっくりと肩を落とす兄弟たち。

 しかし、奥の方に微かに光が差し込んでいるのが見えた。


 「……あれ、外の光じゃない?」


 「ほんとだ! やった! 出られるぞ!」


 歓喜の声を上げる兄弟たちだったが──その直後、異変に気づいた。


 空間のいたるところに、人間がいたのだ。

 子ども、大人、老人──数百、いや数千か。


 しかもそのほとんどが、光とは逆方向──空間のさらに奥にある穴の方へと、押し合いへし合い、前にいる者を突き飛ばしながら進んでいた。


 「……何してるんだ?」


 「なんで……光に向かわないんだ……?」


 老人や女性、子どもたちは壁際に蹲り、すすり泣いている。

 中にはうわ言のように「ごめんなさい……」「誰か、助けて……」と繰り返す者もいた。


 太郎たちの頭に「?」が浮かぶ。


 その時──光の近くで、少女の泣き叫ぶ声が響いた。


 「うわああああん! やだぁぁぁああああ!」


 見ると、一羽のゾンビペンギンが、少女を抱きかかえて光の方へと歩いていた。


 「待てこらあああああっ!!」


 太郎が叫びながら駆け出す。


 その声に、ペンギンが振り返った。


 「ん? お、太郎じゃん! 久しぶりー!」


 ――ycmanだった。


 「お前……ycmanか!」


 次郎が驚くと、他の兄弟たちも「あいつ、村の……」とざわめく。


 「久しぶりに再会できたのはいいけどなぁ……お前、何やってんだよ!? その子、泣いてるだろ!」


 太郎が怒鳴る。


 だが、ycmanはゲヘゲヘと笑って答えた。


 「何って……お肉運びだよ、太郎。 ロイヤルペンギン様に献上する、最高のお肉! ボクたちはそのために生まれたんでしょぉ? たっくさん食べていただくんだからぁ」


 目玉をぶら下げ、ヨダレを垂らしながら語るその姿は、かつての仲間とは思えなかった。


 「……ふざけんな」


 太郎が、一歩前に出た。


 「おいおい、怒るなって。 ほら、太郎たちも一緒にロイヤルペンギン様の──」


 その言葉が終わるより先に、太郎の棍がycmanの顔面をぶち抜いた。


 「ぐべっ──!?」


 容赦なく、何度も、何度も叩きつける。


 「太郎、やめ──」


 「うるさいっ!!」


 砕けた骨と肉が飛び散り、かつての仲間は見るも無惨な肉塊となって転がった。


 静寂が訪れる。


 兄弟たちは、言葉を失っていた。


 やがて──


 「……兄ちゃん……」


 三郎が、そっと声をかけた。


 太郎は肩で息をしながら、血に染まった棍を握りしめたまま叫んだ。


 「……ここで、見て見ぬふりなんかしてたら──俺たちは、ずっと弱いままだ!」


 「バタケなんか、絶対に倒せるわけないっ!!」


 その言葉に、兄弟たちの目が光を取り戻した。


 「兄ちゃん……」


 「俺たち……」


 「行こうぜ。俺たちで、こいつら全部、駆逐するんだ!」


 「おおおおおおっ!!」


 ペンギンたちの咆哮が、暗い空間に響き渡った。

「読んでくださって本当にありがとうございます。

ブックマークや評価、感想をいただけたら、今後の創作の励みになります。」

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