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永遠に巡る愛の果てへ 〜XANA、理想郷を求めて〜  作者: とと
第2部:リクとエリナ 〜新たな世界での出会い〜
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第94話:それぞれの突破戦線

* * *


 激しい怒号と金属音が飛び交う、王都の外周。

 剣戟の余波で地面が揺れ、泥と血が混ざる戦場を、王国兵たちが次々と駆けていく。


 そんな中、兵士たちの間で、風に乗って噂が駆け巡る。


 「おい! 聞いたか!? どこかから城内への侵入が始まったらしいぞ!」


 「は? 本気かよ……まだ城壁は崩れちゃいねぇだろ」


 「いや、間違いない! 《白銀の矢》第三遊撃隊が、西の区画で突破口を見つけたって話だ!」


 「すでに拠点構築を始めてるらしい! 物資も運び込まれてるって!」


 「おいおい、マジかよ……!」


 誰の指揮でもなく、無数の兵たちの声が戦場に混ざり始める。

 それは確かな情報とは言い難い、断片的な噂にすぎなかった。

 だが、それでも──その“希望の声”は、兵士たちの胸を突き動かすには十分だった。


 兵たちの視線が、自然と王都の空へと向かう。


 そこに見えるのは、黒煙と火の手が上がる王都の影──

 だが、その影の向こうに、希望は確かに灯り始めていた。


* * *


 《紅蓮の盾》騎士団本隊、南西戦線。


 ユリウスは馬上から、剣を振るいながら前線を駆け抜けていた。

 銀の鎧はすでに泥と返り血に染まり、その鋭い眼光は戦場の一瞬一瞬を見逃さない。


 「第三陣、中央突破を維持! 勢いあるところに兵を集中させて、こじ開けろ!」


 叫ぶたび、周囲の兵たちが即座に反応し、隊列がわずかに流動する。

 攻防が幾度も繰り返される中、ユリウスの指揮はまるで流れるように戦況へ溶け込んでいた。


 無骨な剣を振るうたびに、ゾンビペンギンの黒い血が地に飛び散る。

 馬の蹄が大地を打つたび、兵士たちの士気がわずかに跳ね上がる。


 「第二陣、左から押し込め! ……いいぞ、そのまま行け!」


 その声は、怒号が飛び交う戦場の中でも確かに響いた。

 目の前の地形も敵陣も見極めた上で、瞬時に判断と指示を重ねる。


 それでもユリウスは手綱を緩めることなく、剣を掲げ、最前線へと突き進む。


 「ここが踏ん張りどころだぞ! 壁が崩れたなら、押し込むのみだ!」


 その言葉に呼応するように、仲間たちの盾が上がり、槍が前へと突き出された。

 熱気と緊迫が入り混じる中、確かな信頼のもとに、彼らはひとつの波となって動き出す。


 ユリウスの鼓舞は、兵たちに確かな力を与えていた。

 その背中が、確かに“突破口”へと兵を導いていた。


* * *


 《白銀の矢》副団長、“なん”は騎馬の上から戦況を見渡していた。


 どこもかしこも、死体と瓦礫、そしてゾンビペンギンの群れ。

 だが、その中に、明確な“揺らぎ”がある。


 「……あそこ。敵の密度が、妙に薄い」


 視線の先、城壁沿いの一角。

 地形の関係で防衛線が崩れ、ゾンビペンギンの数が散っていた。

 激戦の最中では見落とされがちなわずかな隙――だが、彼女の目はごまかせない。


 「城壁の一部が削れている……このまま突破できます!」


 なんは鞍を蹴り、前傾姿勢で叫ぶ。


 「各位、私についてきてください! ここから王都内へ侵入します!」


 「「ハッ!!」」


 部下たちの声を背に、なんは剣を抜き、駆けた。

 敵の前衛を切り崩し、わずかな突破口をこじ開けていく。


 「やああああっ!」


 振り下ろされた鋭い一閃が、ゾンビペンギンを切り裂き、血を散らす。

 たちまち一羽、また一羽と地に沈み、その流れに乗るように部隊がなだれ込む。


 そしてついに――なんの馬が城壁の切れ目を越えた。


 内側。王都の路地が広がる。


 「“なん”副団長が王都に侵入したぞーっ!」


 その声はすぐに後続にも伝わり、さらには戦線全体に波及していく。


 「ユリウス団長も抜けたらしいぞ!」


 「よっしゃ、続けーっ!!」


 士気が爆発し、兵たちの進軍が一気に加速した。

「読んでくださって本当にありがとうございます。

ブックマークや評価、感想をいただけたら、今後の創作の励みになります。」

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