運命の分岐
セイラは自分の人生が好きだった
貧しいが優しい両親、愛おしい弟たち
大好きなお花に囲まれた「花屋」という仕事。
戦争真っ只中ながらも彼女は自分の人生を恨まなかった。
貧しくても、恐ろしくても、彼女はただまっすぐだった。
……だが彼女が19の誕生日を迎えた次の日に全てが瓦解した。
逃げ回る人々、瓦礫から見える家族の腕、その魂を心臓に仕舞い込みまた顔見知りを蹂躙していく天使と、
それに付き従う人間たち。
怖かった、ただ恐ろしくて彼女は一人全てに背を向け必死に駆け出した。
足が痛くて、肺がはち切れそうで、ズキズキと痛む体の傷を背負って街の外れまで必死に、ただ「死にたくない」と願った。
それは彼女の目の前に舞い降りた天使によってその背を切り裂かれても、後一撃で死ぬのだと、終わるのだと理解しても
喘鳴と掠れた泣き声を滲ませる
空にただ手を伸ばした、無垢なただの花屋だった彼女の首に容赦もなく武器が下ろされ…彼女の人生があっけなく終わる…
ことはなかった
「願ったな??」
死を背負った存在が、彼女に手を伸ばしたこの時に、ただの虐殺は長い彼女の聖戦に変わった。
真っ白だった天使の胸が赤く、赤く染まっていく。
重い肉が地面に叩きつけられた音がし、彼女の周りだけが切り取られたように静かになる。
…そして、理解すら不可能になり始めた彼女は、真っ赤な、「悪魔」の姿を垣間見る。
「死にたくないならこの手をとれ、小娘」
手が震えた。
この手を取れば命は助かる。
彼女は不安と本能的な恐怖を滲ませ……
静かに「生きることを選択した」