『捜査零課』3
「「「――っっっ!!?」」」
私と双子は思わず口を開けっ放しにして、唖然としてしまう。
完全に予想外だった。
正直、老女だけならここまで驚かなかっただろう。それくらいの覚悟はしていた。
ターボババア――都市伝説でもわりと有名なほうじゃないだろうか?
名の通り、ターボがついているが如く、高速で走るお婆さんのことである。
別名も色々あるらしく、マッハババアとも言われる、とか。
そのスピードで走行する車を追いかけ、事故を誘発させる、というのが都市伝説としてよく語られるのだが、このターボババアだけなら、そこまで驚かなかっただろう。
しかし、バイクに跨る、いつもの服装の所長は予想していなかった。
ヘルメットをして、パーカーとハーフパンツ姿で、光の縄を振り回して、バイクで老女を追い掛け回す所長……
ダメだ、どっちが都市伝説だか分からなくなる。
「……カウボーイみたいだったわね、所長……」
私の言葉に双子が付け加える。
「でも、捕まえようとしてたの、婆さんだし……」
「じゃ、ババアボ~イ?」
いや、それもおかしい。
「ボーイじゃないわよ、うちの所長」
「ジジイとまではいかないわね」
「じゃ、ババアオヤジ~♪」
うん、これでだいたい合ってる。
私と双子が大満足していると、
「勝手に都市伝説を増やすな」
「錬金術師のような合成具合でしたね~」
助手席と運転席の二人に窘められた。
特に、運転席の奴は、自分の思い通りの反応をしてくれたのが嬉しいのか、上機嫌だ。
表情はいつもどおりの笑顔だけど、声に喜びが感じられた。
正直、めちゃくちゃムカつく……!
やがて、車はトンネルを抜け、すぐ脇の道に停車し、私たちは降りることになった。