第9話 二年後
あれから月日は流れて二年が経過した。俺は10歳になり師匠から今も剣術を教わっている。
二年が経過しても大きく変わったことはなく、師匠ともっと仲良しになったくらいだろう。
それと、師匠が俺に武器をくれた。師匠と同じ武器で、刀と言うらしい。前に貸してもらった小刀よりも長く、普通の剣に比べて細いが、綺麗な形をしていて扱いやすい。
俺はこの刀を気に入っている。
今日は師匠に早く来てほしいと言われたので、いつもより早く起きて師匠のところに向かっていた。
話しとはなんだろう? と考えていると師匠の姿が見えた。
「師匠、おはようございます」
「おう! おはよう!」
師匠は藁を束ねていた。
「よし、斬ってみろ」
「え? はっ、はい」
随分と唐突だなと思いながら、鞘から刃を抜き、巻き藁に剣先をつける。
「すぅーはぁー」
一度、深呼吸をして巻き藁を縦に切り落とす。
「うん、斬れるようになったな」
「はい、でも、まだ師匠みたいに乗りません」
本当は師匠みたいに斬った部分を地面に落とさず乗っけたいのだが、まだ未熟なので落ちてしまう。
「いや、斬るだけで充分だ」
師匠が俺の目を見る。この真剣な感じは何か重要な話をするときの目だ。
「どうかしたんですか?」
「俺は三日後にこの村を出る」
「………」
いつか、こんな日が来ると分かっていた。だが、いざ、口に言われてると悲しくなり泣きそうになってしまう。
だが、師匠を困らせるわけにはいかない。
「なら、後三日間、ご指導お願いします!」
俺は涙を堪えて笑い、師匠に頭を下げる。
「あぁ、もちろんだ!」
今日は早くきたから、師匠からもっと教えてもらおう。そう思ったのだが、後ろから声が聞こえた。
「なんだー? まだやってたのかー?」
「おっ、お兄ちゃん!」
あいつは俺と同い年くらいの子で名前はアベル。そっちの方はアベルの妹のシャネルだ。
「今日はお前に構ってる暇はないんだが」
「うるせぇ! 俺もこいつから教わりに来たんだよ!」
「師匠と呼べ!」
アベルは前に師匠に喧嘩を売って負けてから、毎日ここに来ては剣術を一緒に習ってる。
それから、修行が終わる時間になったので、アベルとシャネは帰っていった。
「あっ、師匠、今日はおじさんがウルフ肉の料理を作ってくれるらしいですよ!」
「おっ! なら、今日はごちそうになるかな!」
俺と師匠は家に帰ることにした。
ーーー
そんな生活をしてたら時間が過ぎるのなんてあっという間で、もう三日が経過してしまった。
今日も師匠のところに向かうと素振りをしていた。この素振りを見るのも今日が最後になると思うと寂しくなる。
師匠がこちらに気が付いた。
「おはよう」
「はい! おはようございます!」
師匠に聞こうと思って聞けなかったことがあるので、俺は質問した。
「師匠はこの村を出たら、どこに行くんですか?」
「桜の木が咲いてある村があると聞いたから、そこに行くことにしたんだ。」
桜? 始めて聞いた名前だ。
「桜ってなんですか?」
「ピンク色の花だ、とても綺麗でまた見たくなったんだ」
「そうなんですね」
桜の花、いつか俺も見てみたい物だ。すると師匠が木刀を俺に渡してきた。
「よし、俺に勝て」
「………はぁ!?」