第1話 出会い
俺は今日もいつもみたいに村の人達に暴力を受けている。
今回は盗っ人の容疑をかけられた。もちろんやっていない。
いつも助けくれるおじさんは少し遠くに出かけてるので助けてくれる人は居ない。
魔力もない俺は黙って相手の暴力に耐えるしかない。
「ん……?」
暴力がいきなり止んだ。
目を開けると俺の前に一人の男性が立っていた。
その男性は俺のことを心配そうに見ながら手を伸ばしてくれた。
後ろから周りの村人の声が上がる。
「そいつは無力者だぞ!」
「そうよ! 異端児だわ!」
この世界では魔法を使えない者は無能者と言われ、使い物にならないゴミと認識される。
男性は村人の方に体をむけてこう言った。
「俺も無能者だぞ?」
村人が騒ぎだす。
「あいつもかよ」
「クズがクズを庇ってるよ」
「雑魚の癖に」
いままで庇ってくれたのは、この人とおじさんだけだ。
優しい人が傷つくのは胸が苦しい。
「あの……もう大丈ーーー!?」
男性に声をかけようとしたが、村人が殴りかかってきた。
「よっ……」
男性は村人のパンチを避けると服部に拳をめり込ませた。
パンチをした村人はたった一発で気を失った。
「なつ!? やっちまえ!!」
『ファイヤー・ボール!』
村人の一人が魔法を唱えて男性に火の玉を飛ばす。
男性は腰に付けていた細い剣を抜くと炎が真っ二つになる。
「魔法を切った……?」
「あっ……ありえねぇ」
魔法を切るなんて、俺も聞いたことがない。
男性は村人を強く睨み付ける。
「まだ、やるか? 次は俺からしかけるぞ?」
村人達は怖くなり怯えきって、走って逃げた。
男性は細い剣をしまう。
「……すごい」
魔法を使わず圧倒し、守ってくれた、この剣士の背中に俺は強い憧れを持った。
「大丈夫か?」
男性がこちらを向き、また手を伸ばしてくれた。
俺は男性の手を握る。
「弟子にしてください」
自分でもビックリした、思ってた言葉がついつい出てしまった。
男性もビックリした様子を見せた後に少し困った顔になる。
そして、俺に質問してきた。
「何で強くなりたいだ?」
「……俺、冒険者になりたいんです」
「それだけか?」
「……大切な人を守れるくらい強くなりたい」
俺は昔に村を焼かれ、家族を殺された。
奴隷として売られそうになったが魔力をもたない俺は役立たずと言われ誰にも引き取られなかった。
そんな俺をおじさんだけは手を伸ばし助けてくれた、俺はそのおじさんを守れるくらいに強くなりたい。
そして、今度は家族、大切な人を守れるくらいに強くなりたい。
「お願いします!」
俺は頭を深く下げる。この人の剣を教わりたい。強くなりたい。
「顔を上げな」
俺は顔を上げて男性と目を合わせる。
「いい目をしてるな。子供なのに覚悟がある。合格だよ」
「いいんですか!?」
「あぁ、俺の名前は藤原 伸司」
「はい、名前はライアンです! よろしくお願いします!」
これが俺と師匠の出会いだ。