明かされる真実 5
「そして、意識を取り戻した時、私は手足を縛られ馬車の荷台に乗せられていました。私の他にも10人くらいの人間が乗っていましたが、皆訳が分からないようでした」
今や、私を含めて聞いている人はみんな息をするのも忘れて聞き入っていた。まるで、子どもがドキドキするおとぎ話を聞いているみたいに。でも、これは作られたお話ではない。現実に起きたことなのだ。
「何日も、馬車は走り続けていました。食べ物なども何もなく、私達はまた次第に意識を失っていきました。そして、次に目が覚めたとき、私達はここ、スキエンティアにいたのです」
そこまで話して、カイルさんは大きく息をはいた。彼にとって、この話をすることはきっと辛いに違いない。
「私たちはなかなか現実を受け入れることが出来ませんでした。家族と離れ、尽くしてきたはずの国に捨てられ、見たこともない国にいる現実を。しかし、この国の方々は、私達を優しく迎え入れてくださった。何日も飲まず食わずで痩せ細った体も、暖かい食事で元通りになった。住む家や、仕事も与えてもらった。そしてようやく、私達はこの国で生きていく覚悟を決めることができたのです」
カイルさんはそこまで話し終えると、ヘリオスの手を取り、そっと包み込むように握った。
「君の探している方も、きっと私達と同じ目にあったに違いない。だが、あの砂漠から生きてこの国にたどり着くのは奇跡に近いのだ。……私は、君だけでも無事でいてくれただけでも嬉しく思うよ」
優しいカイルさんの声。だがヘリオスに突きつけられた現実は、あまりに悲しい。ヘリオスは大きな声を上げて泣いた。私達は、ただそっと見守ることしか出来なかった。
「領主さま、私めにお話できるのはこれで全てでございます」
「ありがとうカイル。続きの話は私からしよう」
ヘリオスが落ち着いたのを見て、カイルさんはそういった。父様はそう言って、カイルさんと代わる形でイスに腰掛けた。カイルさんは静かに一礼すると、部屋を出ていった。