明かされる真実 4
静かに話を聞いていた父様が、またヘリオスの頭をぽんぽんと優しく撫でた。ヘリオスはくすぐったそうにわずかに身をよじった。その顔は照れくさそうにほんのり赤く染まっていて、年相応の子供らしさを感じる表情だ。
「君はきっと、この国に来るべくして来たのだろう。でなければ、あの砂漠を子ども一人で超えられるわけがない。そうだろう、カイル?」
父様が呼びかけたのは、さっき一緒に入ってきた人物だ。その人は父様のそばに来て、かぶっていたフードを取った。その顔を見て、私は「あっ」と小さく声を上げる。その人は、直接話したことはなかったが、部屋の窓からよく見かけていた、初老のニンゲンの男性だった。
「本当に……信じられません。きっと、シャルムティーヤ様のお導きに違いない」
カイル、と呼ばれたその人は、ヘリオスを見ながら両手を組んで祈りを捧げるようなポーズを取る。
シャルムティーヤ様というのは、この国を創ったとされる魔法使いだ。この国に宗教はないが、みなこのシャルムティーヤ様を崇拝している。王家はこのシャルムティーヤ様の子孫であり、彼女の遺志を受け継ぎこの国を治めている。それ故に国民から尊敬されているのだ。
話が少しずれてしまったけれど、父様はどうしてカイルさんを連れてきたのかしら?父様はそんな私の心の声を読み取ったように、
「カイル、話してはくれないか。彼の国の真実を。彼は、それを聞く権利があるだろう」
と、カイルさんに話しかけた。カイルさんは大きく頷いて、
「彼の話を聞き、お話する決心がつきました。語り慣れていないゆえ、お聞き苦しいところもあるかと思いますが、ご容赦ください」
そう言ってカイルさんが語り始めたのは、にわかには信じがたい話だった。
「皆様方は、どうしてこの国に我々ニンゲンがいるのか、不思議に思ったことはございませんか?」
そんな問いかけから、カイルさんの話は始まった。
「私は元々イグノーランティアで、妻と2人のと共に暮らしておりました。そしてある日、私は前世で違う次元の、違う世界で暮らしていたことを思い出しました」
「それって……」
カイルさんも、転生者ってこと?!
「イグノーランティアでは、他の世界の記憶を持つものが時々現れます。その中には、この世界にまだ無い技術や知識を持つものもいます。それを集めるのが『知の塔』の目的です」
それは、私も知っている話だった。集めた技術や知識を、国の発展に役立てるために、転生者は『知の塔』に集められる。
「私も『知の塔』に連れて行かれました。そこで与えられた部屋で、知っている前世の世界の知識を、全て紙に書き起こす作業を、1日中行いました。そして、半年ほど経って、ようやく知っていることを全て書き終わり、『知の塔』の研究者たちに技術を教えきりました。ああ、ようやく家に帰れる。そう思って、仕事を終えたお祝いにと出されたワインを飲むと、私は意識を失いました」