明かされる真実 1
森の中で出会った「ニンゲン」を、そのまま捨て置くわけにも行かず、私達は馬車に乗せ、一緒に屋敷に帰ってきた。出迎えた使用人頭のエドワードは、とても驚いていた。まあ、ピクニックに出かけたのに「ニンゲン」1人拾って帰ってきたらそれは驚くだろう。犬や猫じゃないのだから。しかしそこはベテランの使用人頭だけあって、すぐにテキパキと各方面に指示を出す。
「とにかく、領主様にはご報告させていただきます」
「ニンゲン」を部屋に運び、屋敷専属のお医者様を呼ぶと、そう言って部屋から出ていった。
森から部屋に運び入れられる間も、全く目を覚まさなかった。今も死んだようにベッドに横たわっている。まさか本当に死んでいるんじゃ……と、こわごわ近づいてみる。診察を終えたお医者様は、そんな私の考えを読み取ったのか、笑いながら「大丈夫です、寝ているだけですよ」と言った。
「ただ、栄養状態が悪いですね。あとで薬を届けさせますので、それを飲ませてください。あと、栄養たっぷりの食事も与えてください」
「わかりました。ありがとうございます」
お医者様を見送った後、改めてベッドに目を向ける。
それは、おそらく10歳くらいの「ニンゲン」の男の子だった。ぼさぼさとした黒髪で、頬は痩けている。たしかに、しっかりと栄養を取っているようには見えない。
「お嬢様、素性もわからない者にあまり近づかないでください」
近づこうとすると、ユアンに止められた。
「大丈夫よ、まだ子どもみたいだし。ねえ、なんであんなところにいたのかな?森の奥から出て来たように見えたけど……」
森で見たときは怖かったが、ここは安全な屋敷の中。怖さよりも好奇心が勝ってしまう。ベッドの横に置かれた椅子に座り、相手が寝ているのをいいことに、全身を隈なく観察する。
痩せ細ってはいたが、体格はしっかりとしていた。服は、今は新しいものに着替えさせているが、元々着ていたものは酷くぼろぼろだった。彼は一体なぜあの森にいたのだろう。本当に森の奥から来たのだろうか。そんなことがありえるのか、だって森の奥には……
「う、うう……」
溢れ出る疑問について頭の中がいっぱいになりかけた時、ベッドからかすかな唸り声がして、意識が現実に戻される。
「ね、ねえ!目を覚ましたわ!」
「お医者様を呼んできます」
慌てる私にユアンが冷静にそう言って、部屋から出ていった。ど、どうしよう、なにすればいい?
「大丈夫? 私の声が聞こえる…?」
そう呼びかけると、閉じられていたまぶたがぴくりと動き、ゆっくりと開かれた。ああ、良かった、ちゃんと生きてた。まだ意識がはっきりとしないのか、ぼんやりとした表情であたりを見回している。
「ここ、は」
「ここは、私の家よ。森で会ったの覚えてる?あなた、そこで倒れちゃったから連れてきたの」
体を起こそうとする彼を支えてやろうと手を伸ばすと、横からさっとサシャが出てきて、「お嬢様、私が」と、彼の背中を支えて起こしてやった。
「気分はどう? どこか痛いところは?」
私の問いかけに答えようとして、彼が口を開きかけたその時、
ぐーーっ
腹の虫が盛大な鳴き声をあげた音が、部屋に響き渡った。音の出どころは当然……
「はら、へった……」
彼は、そう言って、再びベッドに倒れ込んだ。