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私の名は「ティア」

生まれてから数日間、「私」は地下の神殿のような所で怪しげな儀式に参加させられていた。そこで「私」は「ティア」という名前を授けられた。名前を付けられると、ようやく、ああ、ホントに生まれ変わったんだなぁ〜と、この現実を受け入れることができた。前世の私はもういない。これからは、「ティア」が私なんだ。


儀式がすべて終わり、私は神官らしき人に抱かれて久しぶりに地上へと戻ってきた。


「ティア様、これから父君と母君の所へと参ります」


神官が、歩きながらそう話しかけてきた。そう言われて、生まれてからまだ両親の顔も見てないことに気づいた。どんな人たちなんだろう…。


神官は私を抱きかかえたまま、宮殿のようなところに入っていった。長い廊下をすすみ、行き止まるとそこにはとてつもなく大きな扉があった。


「お連れいたしました」


神官が一言そう言うと、扉が大きな音を立てながらゆっくりと開いた。神官は、静かに中へと入っていく。


扉の奥は広い空間が広がっていた。明かりは壁につけられた松明だけだったので、全体はよくわからないけど、こっそりと辺りを見回すと、奥の方に王様が座っていそうな豪華な椅子があり、そこに誰かが座っているのがぼんやりと見えた。


「領主様にご挨拶申し上げます。重ねて、御息女様の生誕の儀、無事終わりましたことをご報告致します」


神官は、部屋の真ん中あたりまで進んで、そこに置かれていたゆりかごに私をそっと寝かせると、その横にひざまずいてうやうやしくそういった。


「ご苦労、下がっていいぞ」


領主様、と呼ばれた人の声だろう。低く、聴いていると安心する声がそう言った。神官はそれを聞いて、静かに一礼すると、私を置いて扉に向かって歩き、そのまま暗闇の中に消えていった。


しーんと静まり返る中、こちらに近づいてくる足音が聞こえる。どうやら1人ではなく、2人のようだけど、ゆりかごに寝かされていて全然見えない。


突然、ぱっと2つの顔が目の前に現れた。1つは頭に大きな角が生えた、黒髪の男の人。もう1つは、真っ白な長い髪の、綺麗な女の人。2人とも、とても嬉しそうに笑っている。


「ああ、やっと会えた。私達の愛しい子」


そう言って、男の人は私を優しく抱き上げて、そっとほっぺにキスをした。


「ほら、父様と母様ですよ」


女の人も、そう言って優しく手を握ってくれた。


(ああ、この人たちが私のお父さんとお母さんなんだ…)


2人の嬉しそうな顔を見て、自分が望まれて生まれてきたのだとわかってホッとした。2人が代わる代わる、絶え間なくキスしてくるのがくすぐったくて、キャッキャと笑ってしまう。しばらくそんなスキンシップが続いていたけど、父様のほうが、私の首元を見て、驚いたような顔をした。


「セルリア、みてごらん」


セルリアというのが、母様の名前のようだ。そう言われた母様も、私の首元を見て、目を見開いた。


「まあ、『転魂(てんこん)紋様(もんよう)』…生きている間に見るなんて…しかも、私達の娘だなんて…」


どうやら、首元になにかの印が付いているみたい。転魂…とか言ってたから、もしかして転生者にはそういう印がつくのかな?母様の口ぶりだと、この国では珍しいみたいだけど。


「きっと、この子はなにか使命を持って生まれてきたのだろう。どちらにせよ、転魂(てんこん)の紋様があろうとなかろうと、私達の大切な娘に違いはない。そうだろう?」


父様が優しくそう言った。それを聞いて、母様もそうね、と頷いた。


「さあ、ようやく家族が揃ったのだ。盛大に祝わなくては!」


父様が明るくそう言って、2人は私を抱いてあるき出した。


(これからどんな生活が待っているんだろう…)


期待と不安を持って、私は「ティア」としての新しい人生をスタートさせたのだった。

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