元ニンゲン、人外に転生する
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「まあ、なんて可愛らしいんでしょう」
「無事にお産まれになって本当に良かった」
ざわざわと、いくつもの影が目の前に現れたり消えたりする。それが、「私」の最初の記憶。
(ここは……)
聞こえる声や、雰囲気から、どうやらここは分娩室らしきところのようだ。「私」は助産師らしき人に大事に抱かれている。
そう、「私」は今まさにこの世に生を受けた赤ん坊なのだ。
その生まれたての赤ん坊が、どうしてそんなに冷静に状況を把握しているのかと疑問に思った皆様もいらっしゃるだろう。何を隠そう、私は『前世の記憶持ち転生者』なのだ。読んで字の如く、前世での記憶を持ったまま、新しい人生をスタートさせる人のことだ。前世での世界にはそういった人たちが時々現れて、その知識などが重宝されていた。
そんな人の仲間入りなんてラッキー……と言いたいところなのですが、
(どう見てもここ……人間の世界じゃないんだよねー)
「私」を抱きかかえている助産師を見上げると、黒い角に背中にはコウモリの様な羽。周りで動き回っている人(?)も同じ様な姿をしている。そもそも、生まれてすぐの赤ん坊にこんな視力が備わっていること自体オカシイ。
なんだか、思っていたのと違う転生をしてしまった様な気がする。
この先、一体どうなるのか……。
考えても仕方ない。とりあえず「私」は赤ん坊らしく、大きく産声をあげるのだった。
初めての投稿となります!完結できるよう頑張りますので、読んでいただけると嬉しいです。