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第27話 日本では評判の吸血鬼戦士でも、能力はそんなものなの?

 おれと殺戮の天使ブラン・ノワール(ブラノワちゃん)は、結界が張られた魔空間の、ニースの魔高台にある魔公園で魔戦闘をした。

 魔空間では黒い太陽が輝き、世界が夕景のような薄ぼんやりとした不安色に染まっている。

 ブラノワちゃんは金覆輪のぐるぐる廻る天使の輪を頭上に置き、素懸すがけ威しのアイドル歌手みたいな魔女っ子服に白檀磨きの御手袋と御ブーツ、鹿の角の脇立打ったる魔女っ子帽子に朱のリボン、御右手には紅玉が埋め込まれた錫杖を持ち、公園の海寄りにあるやや高くて大きい街灯の上にすっくと立って、太陽よりも強い光を持つ星々の光を集め、遠距離攻撃の魔光線をおれに連続で仕掛けてくる。

「星界のウラヌスコビッド!」と呪文はラテン語だが、意味はミシマオコゼである。

 おれは短距離走なら誰と競っても5メートルぐらいはトップで走れるぐらいの脚力の持ち主なのだが(要するにちょっとズルをするだけ。50メートルを走ったら普通の女子なみ)、ブラノワちゃんの攻撃は素早くて見切り交わしは不可能である。おれに可能な攻撃は接近戦での打撃だが、近づくこともできない。おれは球状の半透明の防御皮膜で魔光線を受けるが、被膜は1秒と持たずに虹色に光って対消滅する。

「あーら、あなた、ただ逃げるだけなのね。日本では評判の吸血鬼戦士でも、能力はそんなものなの?」と、ブラノワちゃんは攻撃の手をゆるめない。

 おれは覚悟を決めて、前方右45度の角度に飛ぶが、ブラノワちゃんはおれが飛ぶ場所を予測して攻撃するので、広場の地面にはおれが足を着くのと変わらない速度で穴が開いた。

「嘘つきの最期を看取ってあげるわ!」

 さて、円周は360度で、おれが飛ぶ角度は135度、つまり24分の7である。24と7の最小公倍数は168で、23回飛ぶとブラノワちゃんの周りに24個の穴が開く。その穴の大きさと深さは、おれが広げた防御皮膜の大きさで見当をつけており、どの穴もぎりぎりのところでつながっている。

 これ、別に5(75度)でもいいんだけど、それだとすぐにこちらの手がバレてしまうのである。嘘だと思うならやってみるといい。

 おれは24回目には、最初に飛んだ場所の少し後ろの位置に立ち、どすんと片足を前に出して、ぎりぎりつながっていたところを踏んだので、小さな穴の周辺はまとまって崩落して、CGで作ると実にかっこいい形で大きな穴ができた。この公園の地下は立体駐車場になっていることを、おれは事前に知っていたのである。

 魔力ではおれに勝っているが知力では名探偵にもなれない程度のブラノワちゃんは、何が起こっているか状況がわからないまま、え、何なに? と、穴に落ちる寸前、おれはコウモリの翼を広げてその軽い体を抱きかかえて助けた。

「まったく、とんでもない魔女っ子探偵だな」と、おれは苦笑いをした。

     *

「ふーん、ふーん、ふーん、ナオってブラノワちゃんは抱っこできても、あたしはできないんだ。別にいいんですけど!」と、ハチバンは実に、別によくない感じで言った。

 場所はまだ、朝の会談の場で、おれはルビーの指輪とワインの瓶とビールの瓶を、ブラノワちゃん・街灯・おれ、に見立てて物語を作ってみた。

 作ってみて思ったんだけど、おれって戦闘シーン本当にヘタだね。こういうの延々と、何千字も書ける人がうらやましい。どういう練習方法をすればいいんだろうな。テキストの参考にしたのは鎌池和馬なんで、ひょっとしたら同じような、能力者同士の戦闘シーンをすでに先生は書いているかもしれない。その場合はどうもすみません、鎌池和馬先生。

 なんでそんなのを入れてみたかというと、延々と座って謎解きの話をする物語は退屈だろうと思ったから。

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