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第23話 そ、それはニンジャの、カエル型攻撃体勢…?

 ブラン・ノワール(略してブラノワ)さんは紺色の、日本で昔流行していたというセーラー服みたいなワンピースに、白系のボレロをはおって、赤系のおしゃれタイをしていた。要するにクローネンブルグ・ブランのビール瓶と同じ色である。あれってやっぱフランス国旗のイメージなんだろうな。ビール瓶にしてはスタイルがいいほうだけど、フランス人の女子にしてはボリューム感がなさすぎである。(本日の豆知識)自由・平等・博愛は、フランスの三色旗のどの色に対応している、なんてことはない。青は自由、とかいうのは俗説だ。

 オレンジ色の肩がけおしゃれバッグ(ほとんど携帯端末とカード類とミニお化粧道具ぐらいしか入らなそうな奴)の中から、ブラノワさんは正規の私立探偵許可証を出しておれに見せたので、おれは濃い紺色のミニハット(ピンで実に複雑な方法で留めてあるシルクハット型のもの)を外し、素直に謝った。

「誤解をして大変に申し訳ありません」と、おれは変な日本語風に言ったけど、名探偵許可証じゃなくて私立探偵許可証やん、と心の中では思った。

「許してあげるわ」と、その子は言った。本当はフランス語で言ったんだけど、この子はとりあえずお嬢様言葉にしておくとキャラ立てが楽なのでこのまま続けよう。

「ニホンゴ、スコシ、ワカルマス」と、ブラノワさんは日本語で言った。

「アマリ、タクサン、ワカルマスン」だそうだ。まあそんなもんよね。

 しかし物語では、パンツじゃないから恥ずかしくないアニメなんかは、世界各国の言葉でしゃべってるんだけど、全然問題ないしな。語族の段階で違っているフィンランド語(ウラル語族)とロシア語(インド・ヨーロッパ語族)の子だって仲良しだし。多分アニメ語で会話してるんだろう。

 それでやめとけばよかったんだが、おれはお詫びの方法としては日本人としては普通の、会社役員がやったらハゲ頭がずらりと並ぶような最敬礼風に頭を下げて、ちょっとブラノワさんを見たら挙動がおかしい。

 考えたら外国では、頭を下げるって、相手・対象物に対する自分の敬意とか恭順以外の意味はないんだよね。だから、日本のアニメ見てる外国人は、「お願いします、ぼくと付き合ってください」という告白も、「ごめんなさい」とその告白を断わるときも、なんでこの二人はお互いお辞儀してるのかって不思議に思うよ。お願いとお詫びの動きで、両手を合わせる(拝む)というのも変だよね。「ちょっとノート貸して(拝む)」「ごめん、今日はちょっと用事があって(拝む)」。

 ブラノワさんは、おれの最敬礼的お詫びの姿勢に、びくっと身を引いた。ネコだったら完全に毛が逆立って、こわがりながら相手を威嚇しているような状態だと言ったらわかりやすいだろうか。

 そして、おれにお辞儀をし返して、腰を曲げながら顔をおれに向けて言った。

「サア、コイ!」

 そして、柔道の受けの姿勢を取った。あれ、誘いの姿勢だっけ。攻めだったっけ。とにかく誘い受けの形。

「私はジュードーではクロオビなのよ」

 外国人にお詫びをするときには、股間のあたりに手をやって、すこしうなだれて下を向いて、「悪かった…」ってボソボソとつぶやくだけでよかったんだ。

 でも、黒帯ってのは嘘だよね、ブラノワさん。

 その礼とファイティングポーズは、映画の中の日本人、さらに言えばハリウッド映画の中に出てくる、間違った日本の格闘家のイメージだ。

 おれは面白いので、テーブルの上に乗って、相手の顔を見たままで座礼をしてみた。

「そ、それはニンジャの、カエル型攻撃体勢…?」

 ブラノワさんはさらに(架空の)毛を逆立てて、2歩後ろにさがった。

「しゃああああっ!」と、おれはもっと調子に乗って脅かしてみたら、ハチバンに脳天チョップをくらった。

「話がぜんぜん進まないよこれじゃ!」

 ブラノワさんは半泣きである。

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