第5話 ドーム
本当は女の子でしょうと問われ、アリは少し躊躇ってから応えた。
「隠していてごめんなさい。施設に集められていたのは女の子ばかりだったから、追っ手に見つからないよう、男の子の振りをしていました」
「なるほど。その方がいいでしょう。さすがに一緒に暮らしていれば分かりますが、少しでも誤魔化せるかもしれませんしね」
と、シューがそばを走りぬけながら、鉾の柄でビドゲルのわき腹をえぐった。その先で魔獣に一撃喰らわせながら言う。
「このエロリゲルが! 女とわかってて、一緒に寝ようだとか、風呂に入ろうだとか言ってやがったな」
「痛いじゃないですか。反応を見たかっただけで、疚しい気持ちはありませんでしたよ」
「どうだかな」
「妬いているんですか? 年頃の娘は難しいですねぇ」
「馬鹿言ってんじゃねぇ!」
ビドゲルの鳩尾に、本気の一撃が見舞われた。
狩った魔獣のうち、損傷の少ない物を選んで、血抜きした上で街へ持って帰る。戻る途中で、アリは自分のことを改めてシューにも話した。
「ふーん、それで地下通路にいたのか。魔獣や魔人、獣人どもの住処になってるが、昔は都市と都市を結ぶ通路だったらしいからな。大きな乗り物が人を詰め込んで走り回ってたとか。わざわざ地下を通るなんて、昔の人が考えることは分かんねぇな」
首をひねるシューに応じて、ビドゲルが言う。
「当時、地上は建物でいっぱいで、地下に通したらしいですよ。しかし、アリ、そこを通って来たにしても、帝都からでは大変だったでしょう?」
「あ、いえ、帝国軍に追いつかれるまでは、小型の宙船で逃げていたので。でも、追いつかれて、船を壊されて、そこからみんな散りぢりになってしまった。生存と居場所が分かる術式を使ってましたが、すべての反応が消えてしまいました。
一緒に逃げた子達も、帝国軍が迫るたびに足止めに後に残って殺されていきました。僕が詠唱術を正確に再現できることを知っていたから、みんな手持ちの術式を僕に託していったんです。
僕を生かして逃がすことが、たった一人でも逃がすことが意地になっていた。友達というわけじゃなかったけど、みんな大切な仲間でした。
一人になって、追っ手も迫ってきて、もうダメだと思ったところに魔人の襲撃があったのです。僕を連れ去るのに、追っ手が邪魔だったんでしょう。魔人は僕を追っていた兵団を殲滅しました。そうでなければ、この街まで帝国軍がやってきていたはずです。帝都でも、僕が兵団と一緒に魔人に殺されたと思ってくれていれば良いのだけれど」
街に着くと、中央部の巨大なドームへ向かった。街の外、遠く離れた場所からでも分かる大きな建築物だ。ドームを取り囲むように、シュー達が住む街が広がっている。
アリは、ここに来るのは初めてだった。ドームと街との境目あたりに、いくつか長い列ができていた。




