表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/43

第35話 咆哮


 目を覚ましたイサッタ将軍は、銃を取り出し、ガムスを狙うが、魔竜が邪魔になっていた。背中を魔獣に押さえられたままで動けず、銃口をクナに向ける。この女を殺せば、奴の望みを絶つことができるのではないか。奴の思い通りになどさせてやるものかと。


 ぐっと、引き金をひく。


 銃声が響く寸前、間に割って入ったジルがその場に倒れた。銃撃に気付いたガムスが魔獣を動かし、将軍を踏み潰した。焦った様子で言う。


「ジル、よくやってくれた。本当に、最後まで役に立ってくれたな。だが、ここでお別れだ。私は帝都に行かなければならない。寂しくないように、君の友達も、一緒に逝ってもらおうじゃないか」


 ガムスは、クナを乗せた魔獣とともに飛び去り、残された魔獣たちが二人に襲い掛かった。銃弾を受けて虫の息のジルを守りながら、キュムは懸命に戦ったが、その奮闘も長くは続かない。


「キュム、もういい。お前だけなら逃げられるはずだ。私はどうせ死ぬ。早く行けよ」


「うふふ、嫌ですわね。お姉さまも攫われて、可愛い妹までおいて、おめおめ生きてられませんわ」


「誰が妹だって? 私の方が背も高いし、お姉さんだろうが」


 ふふふ、と笑いながら、どちらからともなく伸ばした手を合わせる。その時を待っていたかのように、一匹の魔獣がキュムに飛びかかった。

 ジルがキュムを引き寄せ、その身で一撃を受け止める。傷口から吹き出した血が周囲に飛び散り、他の魔竜や魔獣も、一斉に二人に襲い掛かった。


 キュムは、死を覚悟してジルを抱きしめた。


 長い長い数秒が過ぎ、それでもその時は来ず、キュムが目を開けると、そこには、人ならざる者たちの女王が立っていた。


「よくも、部下をいたぶってくれたな」


 怒りをむき出しに、次々と魔竜を屠り、魔獣を屠った。それほど大型のものが残っていなかったとは言え、その強さは桁外れだった。女王の戦いぶりに安堵してジルの手を握ったキュムは、その手から急速に温かみが失せていくことに気付いた。


「ジル、ジル、しっかりなさい。そんな弱い妹を持った覚えはありません」


「妹じゃねぇって言ってんだろ。私の方が姉ちゃんだっての」


「もう大丈夫です。すぐに治癒の詠唱を」


 キュムが一心に詠唱を始めるが、効き目はなく、手の力は徐々に失われていく。青ざめた顔で笑いながら、ジルがいう。


「私の姉ちゃんも妹を庇って死んだんだ。だからさ、お前は、私の妹ってことでいいだろ? なんだ、やけに素直じゃないか。やっと私の方が年上だって分かったか。姉ちゃんが死ぬ時に何か言ったんだ。ずっと忘れていたけど、いま思いだしたよ。そう、確か……」


 言いかけたままジルが息を引き取った。続いて、女王が驚くほどの激しい咆哮が上がった。ふらつきながら立ち上がったキュムが、残った魔獣を葬り去る。さらに、女王目掛けて本気の一撃を叩き込む。

 

「遅い! 遅い! 遅い! 馬鹿野郎! 死んじまったじゃないか。女王様のせいだ。女王様が遅いから、死んじまったじゃないか。遅い! 遅い! 遅いんだよ!」


 激しく抱きついて泣くキュムに、すまん、すまんと、いつになく真面目な声で女王が応じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ