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第25話 襲撃


 ネスティたちの宙船が何者かの襲撃を受けた。第二都市に入って数日後のことである。


 深夜、襲撃は密やかに行われた。眠りに干渉する魔導式が用いられ、心地よい眠りの中、魔法書とその所有者を連れ去る予定だった。概ね事は上手く運んだのだが、翌朝、手に入れた獲物を前に、同盟の軍事顧問ガムスは困惑した表情を浮かべていた。襲撃班の責任者に問う。


「所有者だけを連れて来いと言ったはずだが……」


 どういうことだ、と顎で示した先には、怯えた表情のクナと、余裕たっぷりのキュムの姿があった。責任者がいうには、襲撃の際、クナにしがみついて寝ていたキュムを一緒に連れて来ざるを得なかったらしい。普段から優しいクナに懐いていたのだ。


 いやはや、がっちりしがみついてましてと続ける責任者の言葉を遮って、ガムスは、クナに向かって優しい笑顔を作って見せた。


「レディーに不安な思いをさせて申し訳ない。同盟の軍事顧問をしているガムスと言います。帝国による不当な干渉、支配に抗するために活動しています。決して、悪いようにはしません」


「そう?」


 と応えたのはキュムの方で、ガムスが笑いながら声をかける。


「お譲ちゃんも災難だったね。1人で帰れるかな」


「帰れるわけがないですわ。姉さま1人を置いて。と言っても、血が繋がっているわけではありませんけど。私は……」


 とキュムの目が細められ、身体の表面がざわざわと音を立てると、長い耳と尾、口の端から覗く牙、指先に伸びる鉤爪が現れた。


「見てのとおりの獣人ですからね。私に手を出したら、優しい女王様が黙ってませんよ」


「ほう、恐いのう」


 と部屋の入り口から野太い声が聞こえた。入ってきたのは軍服を着た太鼓腹の中年男と、目の下のどす黒い隈が目立つ険のありそうな少女だった。


「恐いのう、恐いのう。わしは将軍のイサッタじゃ。人ならざる者たちの女王は千里眼を持つとか。今も見ておるかも知れんのう。恐いのう、ジルよ」


「ふん、気安く呼ぶな」


「ほっほっほっ、こっちも恐いわい。のう、ジルよ。せっかく来ていただいたのじゃ。御二人とも、自慢の移動コテージへ招待してはどうかな」


「私のところへか?」


 ジルと呼ばれた少女が不満そうに言う。


「そうじゃそうじゃ、そっちのチビッコ獣人とは歳も近そうだし、良い友達になれるのではないかな」


「誰が、こんな能天気そうな獣人と……」


 その言葉が終わるかどうか、目の前にキュムが立っていた。驚くジルの頬を、ギューっと両手でつねりあげる。


「能天気な獣人で悪うございましたね。貴方こそ、なんですか。世の不幸を一身に背負ったような陰気くさい顔をして。ほれほれ、これでも真面目くさった顔でいられるかしら」


「こ、この!」


 ジルも両手を伸ばしてキュムの頬をつねる。ぐぬぬぬ、と互いにやりあう2人の様子を見ながら、不安でたまらなかったクナは思わず笑ってしまった。


 さて、その後のこと。


 ジルはキュムとクナを連れて部屋を出て行き、それをイサッタ将軍が見送っていた。


「くくく、2人も詠唱士のストックができたわい。チビッコもなかなか愛らしいし、獣人というのも良いのう。クナとかいう女も清楚な感じでそそるわい。わしが皇帝に成り代わった暁には寝屋で相手してやっても良いかもしれんな」


 と、その呟きを聞いていたガムスが、イサッタ将軍に聞き取れないほどの声で言う。


「ゲスが」


「なんじゃ、何か言ったか」


「いいえ、何も」


 と応えながら、ガムスは、心のうちでイサッタを切り捨てるタイミングを考えていた。この俗物は、究極魔法アルティメットの価値を分かっていない。兵器代わりにするなど愚の骨頂よ。私は、世界を変えてしまった力を見てみたいのだ。



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