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第24話 皇帝


 第二都市での出来事をさかのぼること数年前、ハインシュトルムが帝都を出る前のことである。


 帝都の中心には皇帝の宮殿がある。だが、実権は評議会が握っており、皇帝は飾り物に過ぎない。先帝に男子がなく、うら若き皇女が第51代皇帝となってからは特にその傾向が顕著だった。


 皇帝、サン・ル・ナは、壮麗な宮殿の一角で、評議会の中でも1、2を争う実力者、ハインシュトルムと向き合っていた。元々、彼女の後見人であり、幼い頃からの家庭教師でもあった人物なのだが、室内は妙な緊張感に包まれていた。沈黙に耐えかねて、サン・ル・ナが話を促す。


「どうしたのです。何か話があるのでしょう?」


「この帝国において、この哲人、ハインシュトルム以上に、陛下を思い、帝国を思い、人民を、未来を憂う者はおりません」


「わかっております。幼少の頃より、余を導き、ここまで育ててきてくれた。そなたがいなければ、陛下と呼ばれることもなかっただろう」


「では、なぜ? なぜ陛下からお話しいただけぬのですか。このハインシュトルム、悲しうございます」


「話とは?」


「おとぼけになられますか。よろしうございます。陛下も大人になられたと思っておきましょう。我が研究施設が襲撃を受け、集めた詠唱士たちの多くが逃亡しました。ご存知でしょうか」


「知っておる」


「その詠唱士たちが皆殺しにされたことも?」


「どういうことだ。逃亡したのではないのか」


「やはり、ご存知ありませんでしたか。逃亡を手助けしたのは陛下の手の者ですね? いや、お答えいただかなくて結構です。非人道的な研究に反対されていることは知っております。

 しかし、どなたに唆されたか知りませんが、目的は救出ではなく研究対象の廃棄だったのです。研究を遅延させ、同時に、その不手際を批判するため。さらに、陛下と私の間に不和の種を蒔くことも考えてのことでしょう。もっとも、このハインシュトルム、陛下への忠誠に一点の曇りもありませんが」


「そうか。余は利用されたのか」


「もはや帝国内に留まって研究を続けるのは限界です。外へ出て、究極魔法アルティメットを求めてまいります。始まりの書と終わりの書を、ともに手に入れて見せましょう」


「しかし、それではお主の体が……」


「私がどうなろうと、左様なことは瑣末なことです。陛下の御ためならば何者にでもなりましょう。

 帝国は傾き続け、我らの世界は終わりを迎えつつあります。保守の連中は問題を先延ばしにし、自分たちの代さえ安泰なら良いと思っているようですが、シェルターの耐用年数は遠い昔に過ぎ去っているのです。拾い集めてきた遺物を継ぎ足し継ぎ足し、騙し騙しやってきましたが、もう限界なのです。外に活路を見出すしかありません」


「わかっておる。だが、あまり無茶をするな。必ず、無事に戻ってくるのだぞ」


「はっ、仰せのままに」

 


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