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第2話 街へ


 魔人の頭蓋骨が楽しそうな笑い声を上げた。襤褸切れが浮き上がると、白い手を伸ばして頭蓋骨を拾い上げ、襤褸の中に仕舞いこむ。


「それほど人間くさい不死者も久しぶりだ」


 立ち上がった魔人が、警戒するシューを見、ビドゲルを見、少し離れて震えている子供を見た。薄れていた光が再び広場に差し込み、魔人の背中に当たり、じりじりと焼き焦げるような音と匂いが立ち込めた。邪魔くさそうに一歩下がる。


「不死者同士でやりあっても面白くないな。ここまでで預けておこう。そこの娘も、人にしては中々だった。褒めてやろう」


「下手な負け惜しみは止めな。その首、何度でも叩き落としてやる」


 シューの挑発を軽く聞き流して、魔人は笑いながら闇へと引き下がっていった。魔人の気配が消えたことを確認し、さて、とビドゲルが子供の方を向いた。


「初めまして、お坊ちゃん、それともお嬢さんでしょうか」


「わ、ぼ、僕は、アリと言います」


「ふむ、お坊ちゃんでしたか。私は、ビ・ド・ゲル。続けて読まないで、ビ、ド、ゲルですよ」


「うるせぇ、くそやろうめ!ビドゲルで十分だ」


「スラングで、ゲル状のくその意味らしいので、ビ・ド・ゲルでもビドゲルでも、どうでも良いのですが、紳士としては、名乗りは正確にね。こちらの口の悪いのがシュー、スラングで……」


 名前の意味を説明しようとするビドゲルを、シューが蹴り倒した。


「わざわざ説明すんじゃねぇ。蹴り倒すぞ」


「口より手が先に出るその性格は直した方が良いですよ。淑女として」


「淑女じゃねぇ。それに出したのは手じゃねぇよ」


「なおさら悪いような気がするのは私だけでしょうか。まあ、そんなことより……」


 まじめな口調で、ビドゲルが続ける。


「アリと言いましたね。あんなモノに追われているとなると、何があったのか気になります。普通の魔人ではない。目的と意思と知性を持った固有種です。明るい場所にまで出てくるとは、よっぽどですよ」


「ぼ、僕は、その……」


 答えられずに俯いてしまったアリを見て、シューが不愉快そうに舌打ちをする。さらに、ぐぅーと腹の虫が鳴くのを聞いて、もう一度舌打ちをすると、


「答えたくなきゃ別にいい。ビドゲルも、もういいだろ。街へ戻ろうぜ」


「わかりました。そういう適当な生き方、嫌いではないですよ」


 へっ、と吐き捨てると、シューはアリを担ぎ上げて歩き始めた。まごついた様子を無視して言う。


「もう歩けやしねぇだろ。見りゃあ分かる。四の五の言うんじゃねぇ」


 シューに連れられて、アリは街へ入った。


 無愛想なシューに向かって、街の人々が嬉しそうに声をかけてくるのが不思議だった。ああとか、おおとか、うるせぇなとか、そんな返事しかしないのに笑顔で近寄ってくるのだ。ビドゲルが得意げに言う。


「ふふ、不思議そうですね。シューはね、この街に育てられたようなものなのですよ」


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