奴隷商マンモン
王妃様と王女様は楽しい一日が過ごせたと大喜びだった。
王妃様達が王宮へ戻られると言ったので、俺も一緒に付いて行く事にした。
みんなには部屋でゆっくり寛ぐ様に言って置いた。俺は歩いて行こうとしたら、王妃様に馬車に乗る様に言われたので乗せて貰った。
王宮に着くと、王室に通され、王様も姿を見せた。王妃様や王女様から楽しく過ごせた事を聞くと、王様も顔を綻ばせてお礼を言って来た。
俺は魚が大漁だったのでお裾分けするする事を伝えると、王様は料理人を呼んで大きな籠を持って来させた。沢山の魚を幾つもの籠に溢れんばかりに入れた。その大漁ぶりに王様も目を丸くして、今度は自分もやってみたいと言っていた。
侍女が洋菓子と紅茶を用意してくれて、みんなで楽しくお喋りをした。食事も勧められたが、屋敷でも用意されているだろうからと、又今度お誘い下さいと言って王宮を後にした。
屋敷に着くと、魚を全部リュックから出して、地下の冷蔵庫に運んで貰った。みんな凄い
大漁なのに喜んで屋敷の中がその話で持ち切りになっていた。
夕食は色々な魚をふんだんに使った料理でちょっと華やかになった。
翌日、山賊から巻き上げた物をリュックから取り出してみた。金貨176枚と銀貨が108枚、銅貨が1263枚あった。全部で188万630円分だ。何かお宝が向こうからやって来てくれた感じだ。武器もリュックから全部取り出すと、蜘蛛の糸で編まれた大きな袋に突っ込みみんなに分けて持って貰う事にした。
武器商に着くとそれらの武器を見せた。質の悪い物もあったが、結構良い物もあったみたいだった。全部で金貨35枚になった。何かまた所持金がいっぱい増えてしまった。またみんなに大盤振舞いでもしてやろうか?みんなの喜ぶ顔を想像しながら、俺は一人でにやけていた。マリーとジュリア、ドン子が、俺の方をチラッチラッと見ながら何か気持ち悪そうにしている。別に変な事考えて無いから。
屋敷に戻って、またドン子を除くみんなに金貨10枚ずつ渡した。屋敷のみんなは大喜びで目を輝かせていた。マリーやジュリアは、前から貰っているお金を全然手を付けて無いからと辞退したが強引に渡した。
平穏な日々が続き、俺は屋敷のみんなを一人ずつ交代で一週間の休みを取らせ、渡したお金で旅でもする様に言った。
みんなは凄く喜んで、実家がある者は里帰りすると言っていた。
ドン子にも、熊のおばさんの店で食料を金貨10枚分買って、俺のリュックに詰め込むとマリーとジュリアを連れて、久々にゲールの郷を訪れた。
郷に着くと、族長始め郷のみんなに歓迎されて、またまた大宴会となった。
翌日、ドン子には暫く郷でのんびりする様に言って、マリーとジュリア、それにポニーとピコを連れて郷を出立した。
帰り道の途中で隊商に出くわした。しかし、近付いて来たその隊商を見たら、普通の隊商では無い事に気づいた。
幌の掛かった荷台の中は、大勢の人であった。みんなボロボロの格好をして、手足を鎖で繋がれていた。俺は、オレスティーでマーガレット姫達を救出した時の事を思い出した。
俺は即座に奴隷達を救出する事を決断した。ドン子はいないが、俺が以前よりかなり戦力アップしているから何とかなるだろう?そう思って隊商に近付いて行って、只ならぬ雰囲気を感じ取った。
彼らの背後の空間が薄黒く澱み、そこから恐ろしい程邪悪な気が発せられていた。隊商に随行している傭兵達は何とかなる物の、これはとてもじゃ無いが太刀打ち出来ない。下手に攻撃したら、こっちの被害は相当な物になるだろう。
そう判断した俺は、取り敢えず更に隊商に近付いて、人当た
りの良さそうな商人の格好をしたでっぷりと太った男に話し掛けてみた。
「今日は。奴隷商の方ですか?」すると、周囲の傭兵達が、「何の用だ?俺たちゃ忙しいんだ。お前ごときの小僧に構ってる暇はねーんだ。命が惜しかったらさっさと消え失せろ。」と言った。
しかし、商人風の男は「まあまあ、所で小僧。何か用か?」と聞いて来た。「しかし、マンモン様、こんな小僧に構ってたら時間の無駄ですよ。」と傭兵の一人が言うと、商人風の男は「まあまあ、それ程急ぐ旅でも無い。どれ、小僧。奴隷でも所望かな?まっ、金次第じゃがな。」と下卑た笑みを浮かべた。
どうやら穏やかな商人風のこのマンモンと言う男が、この隊商の主人である様であった。他の男達と違い、このマンモンと言う男とは話が通じた。
マンモンによると、この隊商はアルマン国御用達の奴隷商と言う事だった。その為、国王から護衛として魔人の一人を付けて貰っているらしい。しかし、表面は穏やかに見えるこのマンモンと言う男からも、相当な邪気が感じられた。恐らく、その本性は魔人の一人なのだろう?と言う事は、この間のオレスティーの盗賊は公認じゃ無かったと言う事なのかな?
どうやら、アルマンの国の国王には神が味方に付いているらしかった。そして、その配下に何人もの魔王、更にはその下に多くの魔人を従えていると言う事だった。