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聖印×妖の共闘戦記―妖王乃書―  作者: 愛崎 四葉
第五章 壊れゆく絆
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第六十六話 陰謀の始まり

 定例会議は終了した。

 話し合いの結果、月読の提案を受け入れ、作戦を実行することが決定となった。

 密偵隊、陰陽隊、討伐隊が、特殊部隊の援護することで戦力が減少を防ぐことになるだろうと推測された。

 真谷達は反論したが、意見が覆ることはない。

 勝吏の意見に従わざるおえなかった。

 終了した後、勝吏と月読を見送った後、真谷親子は、部屋を出たが、どう見ても納得はしていないようだ。

 怒りをにじませ、形相の顔で歩いていた。


「何よ、あの女!鳳城家でもないくせに威張っちゃって!」


「あいつは、邪魔だ。僕らにとって」


「だいたい、武官は鳳城家が取り仕切ってたはずよ!妻となってもあいつは天城家の人間でしょ!?なんで、武官になれたのよ!」


「仕方がない。これも軍師がお決めになられたことだ」


「わかってるわよ!」


 巧與と逢琵は、月読が武官となったことを快く思っていない。

 武官は、鳳城家が務めてきた役職だ。他の家の者が武官になったことはない。たとえ、鳳城家に嫁いだものでも。

 そのため、千城家の月読が討伐隊の武官となったのは異例中の異例だ。

 武官の役職につけるのは本家の人間がほとんどである。分家の人間も役職につくことはある。

 虎徹が役職をけったからと言う噂も耳にしたことはあるが、だからといって鳳城家の人間を差し置いて、月読が武官につくことは納得していないようだ。

 二人は鳳城家をのっとられたような気分なのだろう。

 真谷も月読の事を快く思っていなかった。

 だが、軍師が決めたことは絶対だそれこそ覆ることはない。彼らは従うほか選択肢はなかった。


「お父様、何とかならないの!?」


「……」


 逢琵の問いに真谷は黙ったままだ。

 息子達の願いを聞き入れてやりたいがそう簡単にはいかないことはわかっている。

 真谷だって月読を黙らせたい。だが、月読は手ごわい。今の状態ではどうにもならなかった。


「今は、難しいだろうな。特殊部隊の功績が目立っている。しかも、隊長は兄者の息子だ」


「ああ、柚月ね。馬鹿よね、警護隊に入らないで討伐隊の隊長に志願するんだもの。人生を棒に振ったようなもんでしょ」


「物好きな奴だ」


 二人が、柚月が警護隊に入らなかった理由がわからなかった。

 警護隊に入れるということは名誉なことだ。聖印一族なら、いや、聖印寮にいる人間なら、誰しも入りたい部隊であろう。

 にもかかわらず、柚月は警護隊には入らず、討伐隊の隊長と言う地位に至った。

 二人には到底理解できない話だ。


「けど、最近の特殊部隊は驚異的だ」


「特殊部隊を潰せれば、あの女を黙らせることもできるんだろうけど」


「やめないか。誰が聞いているかわからんのだぞ」


「……」


 逢琵の発言を指摘する真谷。

 一族同士が争うことなどはよくある。名誉や地位を獲得するために。

 かといって、彼らの敵は妖。争いなどをしている場合ではない。妖を討伐し、平穏をもたらさなければならない。それが一族としての品格であろう。

 今の発言は一族としての品格を損なうものだ。同じ聖印一族を陥れようとするなど、以ての外であった。

 誰かに聞かれたりでもしたら、指摘を受けることになるだろう。

 逢琵が言いたくなる気持ちもわかるのだが。


「けど、何とかしないと。次の大将は柚月だ」


「そうよ!私、嫌だからね!あいつの部下になるなんて!ま、お兄様の部下になるのも嫌だけど」


「どういう意味だ?」


「お兄様みたいな暗い男の部下になるのはごめんだってことよ」


「なんだと?」


「やめなさい!」


 二人は言い争いになり、声を荒げて制止させる真谷。

 二人の動きは止まり、黙ったままであった。

 巧與と逢琵は、仲がいいわけではない。ただ、目の前にいる敵・月読に抵抗するため、手を組んでいると言っても過言ではない。

 勝吏や柚月達がいなければ、次は自分達のどちらかが大将に立つ。すなわち、鳳城家の頂点に立つことができるのだ。

 そのためには協力しなければならない。このままでは柚月が頂点に立つことになるのだから。かといって、どちらも地位を譲ることはしないであろう。

 真谷もそのことには手を焼いているが、今は、勝吏達の事を何とかしなければならなかった。

 自分が大将になるために。


「あの特殊部隊何か裏がある。僕はそう思う」


「やはり、そう思うか?さすがは私の息子だ」


「……」


 巧與を褒める真谷であったが、逢琵は面白くない様子。

 真谷は、巧與を頂点に立たせたいと願っているようだ。言葉では言わないが、態度でわかる。逢琵は、それが気に入らない。

 巧與につとまるとは思っていないからであろう。

 巧與は、頭の回転は速いが、根暗だ。そんな人間に大将がつとまるわけがない。

 だからこそ、自分が頂点に立つべきだと考えていた。そうなれば、鳳城家にとって初めての女当主であり、聖印寮にとって初めての女大将になれるのだから。

 逢琵は、必死で真谷に認められたいがために、務めてきた。

 そして、今も……。


「だったら、調べてみましょうよ。そしたら、何か弱点を掴めるかもよ?」


「それがいい。密偵隊を放つ」


「私も陰陽隊に指示しておくわ。いいでしょ?お父様」


「……わかった。だが、私の指示があるまで動くな」


「どうして?」


 巧與は、疑問に思う。

 調べるなら今すぐのほうがいいだろう。ぐずぐずしていると、月読に気付かれてしまう可能性だってある。

 彼らを探るのは今しかない。

 だが、真谷は指示があるまで動くなと命じる。何かあるのだろうか。

 巧與の疑問に対して、真谷は答えた。


「作戦を練らなければならない。特殊部隊は極めて優秀だ。だからこそ、警戒される可能性がある」


 真谷は、月読も特殊部隊も優秀であるが、それゆえに、気付かれる危険性を不安視していた。

 もし、自分達が探っていると知られてはならない。慎重に動きべきだと考えたのだ。

 彼らを陥れるためには作戦をじっくり練る必要がある。

 どんな手を使ってでも。

 答えを聞いた巧與は、納得したようだ。


「案が浮かび次第報告する。それまではこの件に関しては待機とせよ」


「わかったわ」


「わかった」


 巧與も逢琵も納得したため、うなずき、勝ち誇ったような顔つきで去っていく。

 それは、真谷も同じだ。

 これから、勝吏達を陥れることができると思うと居ても立っても居られないほどであろう。


――確かに、特殊部隊は何か裏がある。兄者も月読も知っているみたいだ。さて、どうやって陥れるか……。


 真谷達にとって彼らは強敵だ。一筋縄ではいかない。

 この作戦は失敗はできない。

 自分達の命がかかっているようなものなのだから。

 その時だった。

 真谷はある案が思い浮かんだのは。

 その案は冷酷で聖印一族としてはあるまじき行為であるが、真谷は気にも留めていない。彼は、自分達が頂点に立てるのであれば、手段を選ばない残忍な性格であった。


「あの男を使ってみるか」


 真谷は、不敵な笑みを浮かべていた。



 聖印京から遠く離れた土地、東地方と西地方の境目付近に存在する獄央山(ごくおうざん)だ。

 地獄へ通じる場所があると言われている。

 そんな場所にいたのはあの四天王だ。

 四天王はあの靜美塔から逃げ切り、傷を癒した後、この獄央山にたどり着いた。


「何とか、ここまで逃げ切れたわね」


「あの塔はもう使えないだろうね。あの柚月って奴のせいで。もう少しで、殺せるところだったのに」


「アノオトコ……キケン……コロス……」


「待ちなさいよ。あんな速さで斬られたら今度こそ死ぬのよ」


 六鏖達にとって柚月があんな高速で移動し、自分達を斬るとは思ってもみなかったであろう。

 それに緋零の幻術も破ったのも柚月が初めてだ。切り札であった幻術はもう使えない。今ここで、彼らを襲撃しようものなら返り討ちに合うだけであろう。

 彼らは、逃げるしかなかった。


「で、六鏖。どうするつもり?」


「あの場所なら、隠れられるであろう」


「アノバショ……シッテル」


「え?何?」


「そうか、新参者のお前は知らなかったな。天鬼様が気に入っていた場所だ」


 天鬼が気に入っている場所と言うのは獄央山にある洞窟だ。

 地獄の門があると言われている洞窟である。

 昔、天鬼が地獄の門をそこで見つけて以来、その洞窟を気に入っていた。

 地獄というものは妖にとっても地獄だ。入って生きて帰れたものなどいない。なのに、なぜか天鬼は気に入っている。その理由は誰にも分らなかった。

 その洞窟で身を隠していれば、いずれ、天鬼とも合流できるであろうと六鏖は考えていた。

 九十九を殺そうとしたことを天鬼は気付くかもしれないが、それでも天鬼に縋りつくしかない。

 そうでなければ、柚月達が自分達を殺しに来るであろう。なんとしても、生き延びなければならなかった。



 六鏖達は、洞窟に入り込み、灯をつける。

 彼らは奥へ進んだ。

 地獄の門があると言われている場所に。

 しかし……。


「!」


 その地獄の門の前である人物がたっていた。

 彼は、振り返ると妖気を放ち、六鏖達をあざ笑うかのように見ていた。

 彼と目が合った六鏖達は恐怖で硬直していた。


「来たか。待っていたぞ」


 彼らの眼の前にいたのはなんと天鬼であった。


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