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才色兼備のナナ姫は、恋の作法がわからない!  作者: 日々一陽
第12章 才色兼備のナナ姫は、恋の作法を気にしない!
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第12章 第1話

 第十二章 才色兼備のナナ姫は、恋の作法を気にしない!



 誰も相手にしてくれなかった。

 どこへ行っても門前払いの連続。

 それはもう、いっそ清々しいほどに。


「バーナード星と国交を開きたい? あのね、ここは外務省! 探査ロケットなら文部科学省ね!」

「何? バーナード星から来た皇女? あのね、くだらない話に付き合ってるヒマはないの。次の人も待ってるからさっさと帰って!」

「何この変なカード。名刺は子供のおもちゃじゃないんだよ。さあ帰った帰った!」


 そびえ立つ高層ビルの下、ナナとふたり自販機の横でジュースを飲み干す。


「やっぱりダメか……」

「ごめんなさい。陽太さんにまでイヤな思いをさせて」

「いや、謝るのはこっちだよ。だけど大人ってどうしてあんなに石頭ばっかりなんだ」


 いくら言っても信じてくれない。

 だったら……


 僕は円盤で官庁街の人達の前を飛び回ることを提案した。

 しかし、ナナに猛反対された。


「ダメですよ! そんなことをして戦闘状態になったらどうするんですか! 貿易連合外の星に挑発行為をしたとしてわたしたちバーナーナが懲戒されてしまいます!」


 5時を過ぎたのだろう、陽も大きく傾いて官庁街は仕事を終えた人達が家路を急ぐ。


「もう、地球との星交は諦めましょうか……」

「ナナはバーナーナの経済を何とかしたいんだろ」

「それは勿論……」

「じゃあ、また計画を練り直して再チャレンジだ」

「……はいっ」

「今日は戻ろう」


 亜次元空間に隠しておいた小型円盤に乗り込むと見慣れた駅前までひとっ飛びだ。


「今日はこれから閉店までシフト入ってるんです。陽太さんも何か召し上がっていきませんか」


 もう見慣れたフルーツパーラー・シャングリラ。

 ナナと勝手口から店に入ると厨房には包丁を握る黒江嬢、休憩室では天川店長が何やら書類と睨めっこしていた。


「何を見てるんですか、店長」

「あ、これは大葉さんと日向くん。いや実はね……」


 僕たちは一緒に書類を覗き込む。

 それは英語で書かれた文書だった。


「これって、凄いじゃないですか店長!」

「そうなんだよ大葉さん。しかし一体どう言う経緯で……」


 英文理解出来てないの、もしかして僕だけ?


「あ、ごめんなさい陽太さん。いま日本語に訳しますね」


 ナナは宇宙スマホを取り出すと書類をパチリと写す。そうして僕に見せた画面は日本語に変換されていた。


「ええっ? サモスランカの加工工場、それにヨーロッパと日本にある18店舗の権利について委譲の手続きをしたい、って、これまさか!」

「あの時、彼へのメールに書いた内容がそのまま実行されたんでしょうね」


 僕がダークの宇宙スマホから丸田に宛てたメール、その文面を思い返す。




  地球侵攻事業部・丸田へ

  今すぐ天川の店から手を引くこと。

  果物の密輸による地球マーケットへの侵攻も中止する。

  即刻全ての店の権利を天川に譲り本社へ還れ。

  尚、この指示は絶対であり一切の質問は受け付けない。

  ダーク




 そうだった。

 しかし、あのメールが律儀に実行されるとは。

 あの丸田という男、天川店長が言う通り上司の命令にバカ忠犬なんだ……


「で、サモスランカに来てくれ、って書いてあるんだけどサモスランカって日本から直行便がなくて乗り換えが必要だから片道だけで丸一日掛かるんだ」

「秘密の空飛ぶ円盤で行ったらいいじゃないですか?」

「そうはいかないよ。入国審査が出来ないから厄介なことになるよ」

「そうですね。どうやってきたんだ、パスポートにスタンプないじゃないか、って追求されたら困りますね」

「なあナナ。素朴な疑問だけど、お前がマンションを借りたときの手続きとか学校への転入とかに必要な証明書とかはどうしたんだ」

「そりゃあ公文書偽造、と言うか……」

「やってんじゃねえか!」

「まあまあ」


 空色の髪をした天川店長は苦笑いを浮かべながら。


「調べたんだけどサモスランカは人口9万人の小さな国。入国審査の情報もほとんどないんだよ。まさか『ワレワレハ宇宙人ダ』とか言って堂々円盤で行くこともできないし、それにぼくはあのタナボタな権利なんて欲しくないし……」

「なあナナ、サモスランカって、この前の大統領の国だよな」

「そうですね。きっと、こんな話があるから丸田さんを捜してたんですね」

「だよな」

「なあ日向くん、その話は置いといて何か食べてってくれよ。妹さんとオリエ王女も来てるからさ」


 僕は客席に向かいながら大統領とそのロン毛の付き人のことを思い返す。

 中年紳士の大柄な大統領はラフなアロハを着て、くだけた感じがした。

 付き人兼通訳兼ボディーガード兼荷物持ちだという若いルーバックさんも愛想が良く僕と月子にパフェを奢ってくれた……


「お兄ちゃん早かったね。何食べる?」

「ああ、ありがとう。でももうすぐ晩ご飯だから」

「じゃあ飲み物メニューだね」


 メニューを差し出す月子の横には大盛りチョコパフェを頬張るオリエの姿。


「しかしオリエはよく喰うよな」

「食べなきゃやってられないのよ!」

「ははは…… あのねお兄ちゃん…… ひそひそひそひそ」


 月子が耳打ちするには。

 放課後、オリエが作ったマンガ用のシナリオを漫画研究会とアニメ研究部に持ち込んだところ、ズッタズタに扱き下ろされたらしくただいま絶賛ヤケ食い中だとか。


「まあ初めて書いたんだし仕方ないだろ」

「だって、採用してくれるどころか、使い古されてるとか、平凡だとか、カップリングがダメだとか、みんな好き勝手に言ってくれて。そりゃ屈託のないご意見を、とは言ったけど……」


 オリエはオリエで自分の星のためにマンガやアニメの創作技術を会得しようとしている。しかし、どんなことであれ簡単にはいかないのが世の常だ。


「こんなシナリオじゃ萌えないって、どんなんなら萌えるのよっ!」


 白いノートにさらさらと美少女キャラを描いたオリエはそのまま鉛筆の芯をベシリとへし折る。


「絵、すっごい上手いじゃん! シナリオやめて絵描きに転向したら?」

「あらそうかしら。シナリオもすっごく上手いはず、なんだけど」


 彼女が描いた長髪の美少女は一流の絵師さんが描いたのかと見紛うくらいだ。彩色してステッカーとかにしても売れそうだ……


 そう言えば。

 サモスランカのお兄さんが引っ張っていたスーツケースにも美少女アニメシールがでかでかと貼られていたっけ。大統領の付き人ともあろう方が何を貼ってるんだと思ったけど……


「ご注文はナナですか?」


 金髪少女が笑顔でお冷やを持って来た。


「いや、コーヒーの方がいい」

「酷いです陽太さん」


 彼女は膨れっ面でお冷やをテーブルに置く。


「そうだナナ、今からサモスランカへ行かないか!」

「ええっ、今からですか?」

「サモスランカって日本より時間が遅れてるだろ。まだ昼間だよな」

「えっと、時差は5時間ですから、まだ昼の1時ですね」

「よし、ナナの宇宙船でひとっ飛びだ!」

「えっ、急にどうしたんですか! わたしはまだバイト中ですから」

「店長には僕からお願いするよ」

「でも、サモスランカには店長が呼ばれてるんじゃ……」

「店長よりも僕たちが先に行った方がいい」


 席を立ち、厨房に店長を見つけた僕は思っていることを伝える。

 彼はふたつ返事で認めてくれた。


「行こうナナ。勝算は5分5分だけどやってみよう。ルーバックさんに会いに行こう!」

「ねえ月子は?」

「月子も付いてこい。オリエも一緒に来てくれ!」



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