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才色兼備のナナ姫は、恋の作法がわからない!  作者: 日々一陽
第10章 おいしい美味しい舞踏会
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第10章 第2話

 広いホールのど真ん中、真っ赤な絨毯じゅうたんのその上でイグールに導かれナナが舞う。鮮やかなイエローのドレスに艶めくブロンドの髪、しなやかで優雅なその舞にパートナーの王子はステップを止めて見惚れる始末。見守る聴衆の感嘆と溜息が聞こえてくる。そう言う僕も釘付けだった。いけない、ここに来たミッションを果たさねば。

 200を超える貴人たちで賑わう大広間をじっくり見回す。しかし未だターゲットの姿は確認できない。


「ねえ陽太さま、踊ってくださらない?」


 紅い髪をさらりと揺らしエミリアが僕を見上げてくる。


「あ、いや、その前にさ、帝国コンツェルンの社長って今日は来ないのかな?」

「カエラ様もいらっしゃるから、きっと来てくださいますよ」


 そのカエラ嬢はさっきからずっと串焼き肉を頬張りながら睨むようにナナに視線を注いでいる。その横では月子も何やら肉のようなものを手で掴み頬張っていて。


「串焼きならここにもございますよ。はい、アルタイルビーフのロース串焼きです。どこの星にも負けない柔らかく味わい深い超一級品のお肉です」


 カエラ嬢の串焼き肉を物欲しそうに見えたのか、メリルが長く大きい串焼き肉を目の前に差し出す。


「あ、ありがとう」


 カエラを監視してると悟られなくて良かった。

 豪快に切り分けられた大ぶりなロース肉とサッパリしたパインやアボガドをふんだんに使った串焼き。焼き加減も味付けも抜群に美味なのだが、こんなの何本も喰ってたらそりゃあポチャるよ、カエラ嬢……

 と、肉にかぶりついていたらナナと目が合った。



 パチパチパチパチ……



 曲が終わり、ナナはスカートを抓んでイグール王子に挨拶をする。

 やおらナナはカエラ嬢のテーブルへと歩み寄ると巨大な串焼きを手に取った。お腹が空いたのだろうか。もう一曲を迫る王子に笑みを浮かべて話をしている。暫くの後、王子はカエラ嬢の手を取ると次の曲が始まった。さっきまでつまらなそうに肉を食いまくっていたカエラ嬢は打って変わって嬉しそうに王子に従う。


「あら、王子がカエラ様と踊られるなんて珍しい」

「そうなのか?」

「王子は面喰めんくいですからね」


 アグネスの言葉にメリルも笑いながら。


「だけど、カエラ様って痩せれば綺麗になると思うんですけどねえ」


 ま、あれだけ喰ってりゃ痩せるわけないわ。

 そんなことを思いながらふたりの方を見る。


 ん?


 ナナが僕の方を見て何か合図を送っている。

 彼女が何度も視線を送る先、広間の奥の方から黒服の一団が歩いてくるのが見える。


 これって!


 サングラスを掛けた長身の黒服軍団に囲まれた小太りの中年男。不自然にフサフサと風に揺れる頭髪に黄金色のキンキラ背広が目立って仕方ない。


「ああ、あの人よ。彼がダーク社長よ」


 僕の見ている方向を追ったのかメリルはそう言うと。


「カエラ様が踊り始めると必ず見にいらっしゃるのよね。目に入れても痛くないほど可愛いんでしょうね」

「典型的なバカ親だな」

「かも」


 彼女は僕に近寄り誰にも聞こえないように小さな声で続ける。


「経営者としての手腕にも疑問符が付くというウワサですしね。親の七光りだけの社長だって評判」

「そうなんだ」


 宇宙も地球と似たようなものだろうか。

 その結果苦労するのは天川店長のような優秀な社員なのだろうけど。


「フッ!」

「うわあっ!」


 突然、耳元に息を吹きかけられた。


「何をヒソヒソ話してるの」

「あっ、って、オリエか」

「目尻下がりまくりのようだけど?」

「そんなはずは、ないんだ、けど……」

「それより何か忘れてないかしら?」


 オリエがちらり視線を向けた先にはバカ親丸出しのダーク社長。イグール王子にほおを染めてしなだれ踊るぽっちゃり娘にペンライトを振りながらヒューヒュー声援を送っている。アイドルの追っかけか?


「ああ、モチ忘れてないよ。だってそれが今日のメインイベントだからな!」


 オリエに小さくサムズアップすると華やかな舞踏会を静寂が包み込んだ。



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