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才色兼備のナナ姫は、恋の作法がわからない!  作者: 日々一陽
第9章 ナナの願いとカツ丼と
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第9章 第5話



 イグールの行動は早かった。

 あの後、ナナが宇宙スマホで連絡を取ると、その1時間後には招待メールが届いた。

 舞踏会は今日の夕方。ナナが連絡をして6時間後というスピード開催だ。


「そんなに急いで開いても、みんな都合が付かないんじゃないか」

「構わないんでしょうね、他に参加者がいなくても」


 他人事のように呟くオリエ。

 ま、イグールにしてみりゃ舞踏会はナナに会う口実だし、ナナさえいればいい訳だし。


「だけどダーク社長がいなけりゃ意味ないよな」

「そこは大丈夫です。彼の元にも案内状は行ってます。バーバーナ政府経由でも転送しました。抜かりはありません」


 力強く肯いたナナのきりりと端正な顔が脳裏から離れない……


「お兄ちゃんどうしたの、ずっとぼう~っとして。何かあったんでしょ! 正直に教えなよっ!」


 月子がまとわり付いて離れない。

 もうすぐ2時。

 招待メールが届くとナナは店を手伝いに行った。

 僕は月子を連れて家に戻った。オリエは自分の家でのんびりマンガでも読んでいるだろう。


「今晩のことを考えてるんだ。イグールの舞踏会で何が起きるかと思うと……」


 舞踏会にはオリエも僕も、そして月子も出ることになっている。

 オリエはベガの王女だし、僕と月子はナナの招待人として参加する。


「ホントにそれだけ? 他にも何かあるんじゃない? とろけたチーズみたいな顔しちゃって」


 そんな顔してるのだろうか。

 いや、そりゃ仕方ないだろう。あんな事があったんだ。

 あのあと、ナナはショッピングモールへと戻りながら。


「次は陽太さんからのプロポーズを待ってますね。わたし最初に言いましたよね、陽太さんからプロポーズさせてみせるって。わたしにはそこが何より大切なんです……」


 ちなみにナナが通った中学校ではキスの仕方も教えるらしい。


「えっ、日本の学校では教えてくれないんですか? わたしの通った中学では自分にあった異性の探し方とか、付き合い方とか、正しい別れ方まで教えてくれましたよ。勿論男女が織り成すあんな事とかこんな事も、って陽太さんってば。ぽっ!」


 後でオリエに聞くと、ベガやバーナーナのように豊かな星はどこも、豊かになるにつれ人口が減少するという問題に直面したらしく、少子化対策として学校で必要な知識を教えるようになったらしい。その効果がいかほどかは不明らしいが。


「お兄ちゃん、ナナねえと何かあったでしょ!」


 今日の月子は結構しつこい。


「だから何もないって」

「うそっ。ナナねえデートに行く時と帰ってきた時で全然違ったよ。戻ってきたナナねえはお肌つやつや笑顔てかてか足取りふわふわだったもん!」

「ほらっ、お兄ちゃんは今から勉強だ。月子も自分の部屋に戻れよ」


 渋々部屋に戻る月子を見送ると大きく嘆息する。


「はあ~っ!」


 脳裏に浮かぶのはあの時の瞼を閉じたナナ。

 また心臓が激しく騒ぎ出す……


「宿題宿題!」


 そう自分に言い聞かせると僕は机に座って大きく深呼吸をした。


 ……

 …………

 ………………


 ベランダの向こうから楽しそうな子供の声。

 ナナはどうしてあんなことを。

 そして、僕はどうしてあんなことを。

 いや、後ろを振り向く必要はない。

 だけど僕は知らなすぎる。

 宇宙のことを、ナナのことを、自分自身のことを。


 ナナ。

 僕は何でもするよ、ナナのためなら……

 ふと思い立ち部屋を出ると居間へと入る。


「母さん」


 ゆったりソファでテレビを見ている母に声を掛ける。


「あら、なあに陽太ちゅん!」

「ちゅん、じゃないよ。それよりさ、父さんに連絡取れないかな」

「珍しいわね、陽太ちゅんが父さんに連絡なんて。出来るわよ」


 そう言うと母はバッグの中から宇宙スマホを取り出した。



 第九章  完



【あとがき】


 いつもご愛読ありがとうです。

 宇宙人って案外たくさん身の回りにいてビックリな日向陽太です。


 さて、ナナと出会ってからと言うもの、色んな事がありました。

 マンションの壁をぶち抜かれたりオリエや背広姿のおっさんどもが襲来してきたり、宇宙の星々に何度も出向いていったり。凄く短い時間だけど、何があったか忘れてしまうくらいたくさんのことがありました。だけど今日の出来事だけは絶対に一生忘れないでしょう。彼女の可憐なくちびる、あの柔らかな感触、甘く胸狂わせる香り…… って、ごめんなさい、あとがきの真っ最中に不謹慎でしたね。


 ところで僕は最近、スーパーに行くとついついバナナのチェックをしてしまいます。

 だいたい4~6本くらいが袋に入って、安いもので70円、高いのは300円ってところですけど、正直その違いは分かりません。リンゴは品種や産地などで値段の違いが結構わかりやすいんですけど、バナナは基本どれも同じに見えます。実際日本で売られているバナナはその多くがジャイアントキャベンディッシュという種類だそうで、あとよく見るのはモンキーバナナでしょうか。でも世界的にはもっと沢山の種類があるらしいです。煮たり焼いたりするための料理用バナナの種もあるとか。バナナも奥が深いですね。


 そうそう、バナナって木じゃなくって草なんですよ。多年草の巨大な草。最近まで知りませんでした。


 なんだかバナナについて語っちゃいましたけど、ナナに語らせたら止まりませんからね。こんなもんじゃ済みません。まったく凄いバナナ愛ですよ。


 と言うわけで、次章予告です。


 満席殺しを仕掛けられピンチのフルーツパーラー・シャングリラ。

 僕たちはその暴挙をやめさせるため帝国コンツェルンの社長・ダークを誘き出す作戦に出る。ナナが仕掛けた晩餐会、その会場であるアルタイルまで出向いた僕らは見事彼とその愛娘のカエラを見つけ出す。そして手筈よく作戦計画を遂行するが、そこには思わぬトラップが待ち受けていた。危うし陽太!


 次章「おいしい美味しい舞踏会」もぜひお楽しみに。


 と言うわけで、舞踏会でとっても痛い目に遭う日向陽太でした。

 って、そうなの作者さん?

 痛いのはやだよ、何とかしてよ~!



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