表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
才色兼備のナナ姫は、恋の作法がわからない!  作者: 日々一陽
第2章 織姫さまにご用心
5/74

第2章 第1話




 第二章 織姫さまにご用心



「おはようございますっ、陽太さん!」


 紺色のセーラーに身をくるみ玄関の前で微笑んでいたのはサラリ綺麗な金髪の美少女。


「あっ、ナナねえだあ、おはようナナねえ!」

「おはよう、月子ちゃん!」


 腰をかがめて月子にも微笑んだ彼女はポケットに手を突っ込んで。


「はい、バナナ」

「わあ~い。ナナねえ、ありがとう!」


 赤と白、縞模様のハイソックスを穿いた月子はぴょんぴょんと跳びはねる。


「月子ちゃんは可愛いわね」


 マンションを出ると三人で学校への道を歩く。


「これから毎日一緒に登校できますねっ、陽太さんっ!」

「昨日みたいに命を狙われたらいけないからな。だから、仕方なく、だ……」

「陽太さんってばお優しいっ!」


 花開くようなナナの笑顔にドキドキ胸が早鳴っていく。だけどこいつは宇宙人。凄い怪力だし色々とおかしな行動も多いし。まあ、悪いやつではなさそうだけど、落ち着け陽太。


「ねえ、ナナねえはお兄ちゃんと同じ学校なの?」

「そうよ。席もおとなり」

「へえ~っ、よかったね、お兄ちゃん。ナナねえ飛び切り綺麗だし、ナナねえなら月子も許してあげるよ! 上手くやれよっ、このこのっ!」


 バナナをモシャモシャ食べながら肘で僕を小突くおマセな月子。

 こりゃ、僕の部屋に出現した秘密のドアを知ったら月子に何言われるか分からないな。

 歩きながら僕は、昨日の夜のことを思い出した。


          ◆ ◆ ◆


 昨晩、マンションの隣に越してきたナナが挨拶をしに来て一時間後。


「鳴かぬなら鳴くよウグイス平安京、ってヘンな語呂合わせだな……」

 

 入浴も終えパジャマに着替えた僕は自分の部屋で勉強をしていた。

 と、何やら音がする。


 バリバリバリバリ……

 ガリガリガリガリ……


 音は壁に貼ってあるシャガールのポスターから聞こえてくる。

 僕が椅子から立ち上がり壁の方へ近づいたその瞬間だった。


 バリッ!


 と、ポスターを突き破って人の手が出て来た。


「うわあっ!」


 驚いて壁から飛び退くと、その白く細い手はポスターを破り捨て、信じられない破壊力であっと言う間に壁に大きな穴を作って、そして……


「遅くなりましたっ! あなたの可愛い妻、ナナですっ!」


 穴の向こうから金髪の美少女が顔を覗かせた。


「って、おい! 何やってんだよ!」

「何って、愛し合う夫婦のお部屋はこうやって繋がないといけませんよね」

「繋がねえよ!」


 そう言う間にも人が通れるほどの巨大な通路を壁にぶち開けるナナ。


「おい、どうすんだよ、マンションにこんな巨大な穴作って」

「ちゃんとドアも付けますか?」


 怒る僕をキョトンとした目で見つめるナナ。


「ドアって……」


 彼女の話によると、今、宇宙連合の星々の若い恋人たちは都会のマンションに隣り合って住むのがトレンディなのだそうだ。そうしてふたりが結婚するとマンションの間の壁を取り払い、新しくひとつの空間にして生活を始めるのが習わしらしい……


「陽太さんとわたしは夫婦(仮)ですし。だから隣に超してきて陽太さんのお部屋と通じないといけないなって、陽太さん喜ぶかなって……」


 僕が怒っていることを知るとナナは申し訳なさそうに項垂うなだれる。


「知らなかったんです、地球ではマンションの壁をぶち抜いちゃいけないって。だけど…… 愛する人とは一緒にいたいじゃないですか!」

「いや、だからってマンションの壁ぶち抜くとか……」

「だったら、ちゃんとドアも付けますから。陽太さんが納得するまで、陽太さんがわたしに地球の方法でプロポーズしてくださるまで、ドアは外したりしませんから。ちゃんとノックもしますから。だから……」


「はあ~っ!」


 やっちゃったものは仕方がない。

 僕の前に座る金髪美少女の大きな瞳からはポロポロと涙がこぼれ落ちて、それでも一生懸命に嘆願してくる。思わず胸がキュンと締め付けられる。彼女も悪気があってやった訳じゃないし可愛いだけに始末に負えない、ああもうっ!


「分かったよ。その代わりドアに鍵を付けろよ」

「そんなことしたら自由に出入りできないじゃないですか!」

「勝手に出入りするな! 僕のプライバシーはどうなる!」

「夫婦間にプライバシーなんて、そんなの…… ぽっ!」

「ぽっ、じゃねえよっ! 何想像してんだよ! 鍵付けろよ!」

「分かりました、陽太さんがそう仰るんなら。今から星の業者に頼んでおきます」


 朝起きると約束通りに鍵付きのドアが付いていたけど。

 こりゃ、学校より自分の部屋の方が落ち着かないことになりそうだ……


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご意見、つっこみ、励ましのお言葉など、何でもお気軽に!
【小説家になろう勝手にランキング】←投票ボタン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ