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才色兼備のナナ姫は、恋の作法がわからない!  作者: 日々一陽
第6章 ナナ、スーパーへ行く
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第6章 第2話

 ナナの説明によると、宇宙で売られているカップ麵には分量による厳格な区分けがあるらしい。日本の通常サイズはCカップ麵、小ぶりな「ちょっとサイズ」がAカップ麵、大盛り1.5倍はEカップ麵、2倍になるとGカップ麵という具合にAAAカップ麵からJカップ麵まで宇宙食品協議会で規格化されているのだそうだ。


 そんな話を聞き、自分の胸を見ながら呆然とするマイリトルシスター。


「月子、規格外なんだ……」

「大丈夫よ。あと少ししたら月子ちゃんもブラが必要になるわ。そうしたら一緒に買いに行きましょうね」

「ホント? ナナねえ一緒に付いてきてくれるの!」


 ちなみにベガ語で「カップ麵」という単語は女性名詞なのだそうだ。

 どこまで本当でどこから冗談か分からないけど。


「日本のカップ麵は種類が多いですね! これは焼きそば、こっちはスパゲティ。うどんにそうめんにお茶漬けまであるじゃないですか! あれっ、缶詰も凄いです! サバにサンマに紅鮭に赤貝に、こっちはコーンに小豆にフルーツもいっぱい!」


 いつの間にかカゴを手にしたナナが次々と買いまくる。


「あれっ? こっちはカレー? レトルト食品?」


 すぐにカゴが満杯になって、ふたつ目のカゴをゲットする。


「なあナナ、色々興味があるのはわかるけど両手にカゴとか大変だろ、カートもあるぞ」

「大丈夫ですよ。これくらい片手でらっくらく!」


 肘にひとつ手にひとつ、片手にふたつのカゴをぶら下げて山のように買っていく。


「あっ、こっちは冷凍食品!」

「ナナねえ、ひとつ月子が持ってあげるよ!」

「ありがとう月子ちゃん。ところでこれって美味しいの?」

「冷凍ラーメンは美味しいよ、本物の味だよ! 月子はとんこつが好きだよ!」

「そうなんだ! 他にもいっぱいあるわね。炒飯、ハンバーグ、スパゲティにうどんにロールキャベツ……

 って、ロールキャベツって何でしょう? 早速買って食べてみなくては」


 月子に新しいカゴを渡して、自分はやっぱりふたつ持っているナナ。


「おいオリエ、あいつの買い物止められないか?」

「いいんじゃない? お金は自分で払うでしょうから」

「いや、次にカゴを持たされるのはお前だぞ」

「止めましょう」


 ショーケースの生ラーメンを手に取るナナにオリエが寄っていく。


「ねえナナ、そんなに買ってどうするのよ」

「勿論食べるわよ。早く地球の味を覚えなくっちゃ!」

「太るわよ」

「うっ!」


 ナナの手が止まった。

 決まったわね、とばかりにドヤ顔で僕を見たオリエの視線は、しかしすぐ僕の背後に動いた。


「…… なあ陽太、あれは何」

「ああ、あれはプリンだ」

「じゃあそっちは?」

「それはシュークリームにエクレアだな」

「じゃあ…… ってケーキがいっぱいあるじゃない!」


 突然、オリエがカゴを持つ。

 そうして2個ワンパックになっているショートケーキを5種類、シュークリーム3個ににエクレアにクレープにプリンにプリンにプリンにプリンにプリンに……


「って、オリエまで何買いまくってんだ! 何個プリン買ってるんだ!」

「何個って、たったのひと山よ」


 棚買いしていた。

 スーパーを潰す気だろうか?


「お兄ちゃん、みんな凄いよ! 月子、カート持って来るね!」


 さすが気が利くマイリトルシスターは、しかしカートを4台持って来る。


「1人1台ね、さあこれでもっと買いまくろう!」


 気が利きすぎだった。

 こうしてナナとオリエの爆買いは続き。

 やがてカート4台に山と積んだ商品を精算した僕らは、白いビニール袋に大量の商品を詰めていく。


「なあ、この食い物の山、どうやって持って帰るんだ?」

「カートに乗せて押して帰ればいいじゃない」

「オリエ、カートは持ち帰れないんだ」

「えっ? ケチね」

「大丈夫ですよ、陽太さん。全部わたしのポケットに収まりますよ!」

「あ、そう言う便利装置があるんだったな…… って、こんな人目のあるとこで使うなよ」


 カート4台分の山のような荷物の山は、周囲の主婦たちに好奇の目で見られている。

 ここでその大量の大きなビニール袋が次々とナナのポケットへ収まっていったら、絶対大変なことになる。


 しかしナナは平然と。


「きっと拍手喝采が起きますよ? 凄い手品だなって。アンコールもあるかもです」

「ねえよ!」


 さて、どうしたものか?

 車で買いに来てるんだったら何度か運べば済むだろうがそんなものもない。


「はあ~っ!」


 マジでどうすんだ、この買い物袋の山……



 ガラガラガラガラ……



 と。

 入り口の方から商品を山と積んだ買い物カートが猛スピードで突っ込んでくる。



 ガラガラガラガラ……



 反対側からもカートを持った背広姿の男。

 野球帽を深く被り表情は見えないが、ふたつのカートはナナを挟むように突撃してきて。


「ナナ危ないっ!」

「ナナねえっ!」


 何が起きてる?

 ナナを助けなきゃ、って?


「はいっ!」


 カートの行く先からナナの姿が一瞬で消える。

 そうしてカート同士が激突し、派手に商品が散乱した。

 驚く野球帽の男の頭上、ふわりと宙を舞う金髪の少女。

 ナナは軽く伸身3回ひねり2回宙返りを決めると空いた通路へと着地する。


 パチパチパチパチ……


 あまりの華麗な身のこなしに拍手さえ聞こえる。


「ナナねえ凄いっ! ナナねえカッコいいっ!」

「照れるわ、月子ちゃん!」


 頭を掻いて謙遜するナナだが、いや重要なのはそこじゃない。


「チッ、こうなったら!」


 男が捨てゼリフを吐くや店内の照明が赤暗く変化する。やがて周りの人々が姿を消し、不気味な雰囲気のスーパーには僕ら4人とカートを持ったふたりの男。更に玄関からぞろぞろとカートを持った背広姿の男たちが入ってくる。


「亜次元空間に移行したわね」


 オリエに言われなくてもだんだんわかってきた。


「お前ら、何をする気だ!」

「何をするって? その皇女さまの命を戴きに」



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