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第5章 第1話

 第五章 月子SOS



 艶めくブロンドがサラリと揺れて、くりりと澄んだルビーが優しく微笑む。


「陽太さん、ありがとうございました。ご恩は一生忘れません。いつまでもお元気で!」


 華麗に身を翻し、黄色いドレスのナナ姫は白馬に乗った王子に連れられ笑顔を残して去っていく。


 これでいい。

 気高く清く美しいバーナーナ星の第二皇女、ナナ・カテリーナ。

 彼女には僕なんかよりもっと相応ふさわしい世界がある。

 偶然で、ただ僕に助けられたってだけの理由で、古いしきたりに縛られて自分の幸せを見失っちゃいけない。


 だけど……


「ナナっ、ナナあ~っ! 待ってくれ~っ! だいす…………」


  ゴチンッ!


「いでえっ!」


 ベットから落ちて目覚めると、時計の針は朝8時を回っていた。


「大丈夫ですか、陽太さん?」


 僕の横にひざまずき、心配そうに覗き込む金髪の美少女……

 ……って。


「ナナ~っ! どうしてお前がここにいるっ!」

「だってほら、ドアはまだ壊れたままですし。折角だから陽太さんのお部屋のお掃除をと。しかし陽太さんったら夢の中でもわたしのことを…… ぽっ!」

「そ、それはあの、いやなんだ……」


 返す言葉が見つからない。

 意味深に微笑む彼女の右手には白いレースの雑巾ぞうきんが握られて、そしてその左手には、って!


「ナナ、ちょっとその本!」

「ああ、この本ですね。ベッドの下に落ちてたので、ちゃんと本棚に戻そうかと」

「返せっ!」


 僕はその、青少年の大切な絵本を引ったくるように取り上げて。


「見たのか?」

「はい。しっかり穴が開くほど。ご愛読のファッション誌なんですよね。陽太さんはどんなファッションがお好みなのかと……」


 いや、激しく違うんだけど。


「陽太さんがお好きなお洋服なら、わたし試してみます。ちょっと恥ずかしい格好ばかりですけど、でも陽太さんのためなら……」

「いやごめん! あれはファッション誌とかそんなんじゃなくって」

「じゃあ、女性の自己啓発誌?」

「あ、いや、そうでもなくて……」

「一言で言うと、エロ本でしょ!」


 ナナの背後で呆れたように僕を見ていたのはオリエ。


「ナナもナナだけど陽太も陽太よ。その本の用法用量、正しい使い方は私が教えて置いてあげるから、早くどこかへ隠しなさい」

「あ、助かったよ。ありがとう」


 もう、顔が火炎放射しそうな恥ずかしさ。

 ふたりが自分たちの居間に戻るのを確かめると、僕は大切なその本を机の中に仕舞い込む。そうして急いで着替えると部屋の中を見回した。


 いつも雑然と置かれている机の教科書はきちんと整理されていた。

 棚の本やゲームソフトも背表紙が几帳面きちょうめんに揃って、チリのひとつも見当たらない。

勝手に入ってくるのは困るけど、こんなに綺麗にしてくれて。

 ちゃんとお礼は言わなくちゃ……


 やがて、オリエにどんな説明を受けたのか、戻ってきたナナはしゅんと悄気しょげ返っていた。


「わたし、まだまだですね。学校でもお城でもみんなにチヤホヤされて思い上がっていたんですね、あの本のモデルより劣るんだなんて。わたしってそんなに魅力がないんですね……」

「いや、何を言ってる? そんなことないって! おいオリエ、お前どんな説明したんだ!」

「あら、ここでもう一度言って欲しい? あの本の使用法」

「いやごめん。僕が悪かった」


 あの本は今度のゴミの日に捨てておこう。

 そう心に決めるとまだ落ち込んでいるナナに向かって。


「その、ナナありがとう。部屋、綺麗にしてくれて」

「そんな、お礼だなんてっ! わたしはただ恋のおまじないをしただけで…… ぽっ!」

「恋のおまじない?」


 3秒前まで落ち込んでいたナナの目が突然輝いた。


「はいっ、宇宙に伝わる恋のおまじないなんですよっ! 使用済みのパ●ティで愛する人のお部屋を隅から隅まで綺麗にしたらその日のうちにゴールインできるっていう……」

「おいコラ! その雑巾って、まさか」

「はい、そのまさかです。あっ、でも安心してください、ちゃんと綺麗に洗って使ってるから雑巾としての衛生面もばっちり、って陽太さん、突然掃除を始めないで! ちゃんとわたしが綺麗にしたばかりじゃないですか! 陽太さんってば!」

「ナナ、あんたそんな黒魔術使ってるの! じゃあ私も遠慮なく……」

「おいオリエ、なんだその黒いレースが付いた布切れは! やめろ! お前らふたりとも自分の部屋に戻れっ!」

「どうしてですかあ~っ! このおまじない、される方にも大人気って宇宙女性週刊誌にい~っ……」


  がちゃっ


 油断も隙もないヤツらだった。

 壊れたドアを無理矢理に閉めて追い返す。


「どうしたのお兄ちゃん?」

「あっ、おはよう月子。うるさかったか?」

「ううん、とっくに起きてたから。朝ご飯出来てるよ」


 そう言うと月子は壊れたドア越しに向こうの部屋に声を掛ける。


「ナナねえ! オリエねえ! 一緒にご飯食べませんか~っ?」

「おい月子、母さんがいるだろ」

「うん、そのお母さんがご一緒にって」


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