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才色兼備のナナ姫は、恋の作法がわからない!  作者: 日々一陽
第4章 星の皇女と白馬に乗ったバカ王子
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第4章 第9話

 広いキッチンの勝手口から抜け出すと空飛ぶ自動車みたいなのに乗って宇宙船の登機場までは一瞬だった。


「あんなにでっかいお城なのに小さな扉一枚の勝手口があるんだ」

「はい。いつも誰にも気付かれないようあそこから街に出ているんですよ」

「都合がいい設計なんだな、バーナーナ城」


 来た時と同じ円盤に乗り込むと地球へ向けてダイヤルをセットするナナ。


「離陸許可もおりました。最後にシートベルトを…… って、月子ちゃんはそのままでいいですよ。きっと疲れちゃったんですね」


 バーナーナに来て約4時間。こちらの時間はまだ夜8時だけど日本じゃもう深夜12時。月子は円盤に乗るなり寝てしまった。僕の肩に赤毛のショートボブがしな垂れかかる。寝顔も可愛いな、スヤスヤと。今日は昼も夜も頑張ったからな……


「だけどシートベルトしないと危なくないか?」

「大丈夫ですよ、それ、単なる飾りですから。航行中はセーフティシールドが働いてるから大丈夫なんです」

「なら、いちいちベルト締めさすなよ!」

「ええ~っ、この方がレトロな雰囲気出るじゃないですか!」


 シートベルトは既に過去の遺物いぶつらしかった。


「じゃあ出発しますねっ」


 あっと言う間に宇宙船の周囲が暗くなったかと思うと僕らの頭上にバーナーナの星が見えた。地球よりも青く、とても美しい星だった。


「綺麗だな」

「まあ陽太さん! わたしのことを綺麗だなんて、そんな…… ぽっ!」

「いや、ナナのことじゃなくって、ナナの星のことだ」

「紛らわしいですねっ! 「綺麗な」はナナに付く枕詞まくらことばなんですよっ!」


 結構図々しいヤツだった。

 ナナの話ではバーナーナ第一惑星は星の80%を海が占める、豊かな自然と光の星なのだそうだ。


「バーナーナはいかがでしたか?」

「バーナード? ふっ、相変わらず何もない星ね。今日歩いた星一番という繁華街もすっごく地味でフェラハトのブティックもチャネルの直営店もなかったし。ベガみたいにエッフェル門とか凱旋塔とかもないし……」

「うるさいですね、オリエには聞いてません!」

「じゃあ聞きなさいよ、ハッキリど田舎って答えてあげるから」

「聞きません」


 オリエにピシャリ言い放つと、運転席から僕を振り返るナナ。


「陽太さんは、その、いかがでしたか?」

「あ、ああ、いい街だったな。緑が豊富で暖かで。それにさ、街の人もみんな朗らかだったし、ナナのご家族にも親切にして貰ったし、それに何より……」

「それに何より?」


 何より一番驚いたのはナナがこの星じゃ完全無欠な皇女おうじょさまだったこと。

 街の人もお城の人もみんな彼女を慕い敬っていたし、儀式に臨む姿は神々しくすらあった。およそ地球で粗相そそうを繰り返すナナからはとても想像できない。そう言えば月子を追いかけ回すイグールに呆れ果てた彼の従者は、溜息混じりにこんな事を言ったものだ。


「ご覧の通り殿下はわがまま放題でして、だからこそナナさまがおきさきになってくださればアルタイルも安泰かと思っていたのですが。はあっ。ホントにあのバカ殿下は……」


 彼の話では宇宙の社交界でもナナの評判はすこぶる高いらしく、心寄せる王子は他にもたくさんいるらしい……


「ねえってば陽太さん! それに何よりって、何ですか?」

「あっ、いや、何でもない。ともかくいい星だったよ」

「どうせ陽太もナナにぞっこん惚れちゃったんでしょ? あ~あ、やっぱりナナにゃ敵わないのかしら……」


 フルーツの串刺しを頬張りながらうそぶくオリエ。

 って、お前いつの間にそんなもん買ったんだ?


「そうなんですか陽太さんっ! ついにわたしたちの愛はクライマックスを迎えるのですか? あの美しいミルキーウェイに愛を誓い合うんですね! わたし、子供はいっぱい欲しいなあっ!」

「いや、無理しなくてもいいんだぞナナ。お前には僕なんかよりもっとお似合いの人がいるんじゃないか?」

「ええっ! それってどう言うこと…… 本で読んだ日本のお断りの言葉?」

「あ、そう言う意味じゃなくって、ただナナは社交界でも人気があるんだろ、何も僕みたいな何の取り柄もない……」

「地球の本で読みました。やっぱり陽太さんはお優しいんですね、私を傷つけまいと。だけど、わたしに何が足りなかったのですか? 何がいけなかったのですか? 教えてください陽太さんっ!」

「ふう~ん、やっぱり陽太は私との方が上手く行くかもね、ねえ陽太!」

「オリエってば何を言ってるんですか! って、なに後ろ向いて陽太さんの手を握ってるんですかっ!」

「ナナはちゃんと前を見て、航行中なんだから」

「うき~っ! 陽太さん、帰ったらいっぱい手を繋ぎましょうね、右手と左手と触手も繋ぎましょうね! そしていっぱい見つめ合いましょう、いっぱい愛を語り合いましょう!」

「いや、帰ったら寝よう。もう深夜12時だぞ」


 騒々しいヤツらとスヤスヤ眠るひとりを乗せた宇宙船の上空には、これまた美しく青い星が大きく見えてきた。



 第四章 完



【あとがき】


 どうも日向陽太です。

 ナナの故郷、バーナードでの一話はいかがでしたか?


 太陽に二番目に近い恒星、バーナード星。

 僕らの太陽よりずっと小さい太陽を持つバーナード第一惑星は緑と笑顔が溢れる幸せの星なのだそう。オリエに言わせると退屈な星らしいですけどね。

 そんなバーナードにものの5分で行けるなんて宇宙の技術は凄いです。


 あまりに凄いのでその原理を作者に聞いてみたんですけど、


「空想は知識よりも重要である by アインシュタイン」


 とドヤ顔で言ったっきりエロゲ攻略に戻りました。

 全然説明になってません。

 ってか、最初から理論付けをする気がないようです。

 ごめんなさい、こんな作者で。


 凄いと言えば月子。

 小学4年生なのに僕より年上の男を手玉にとって、アルタイルと交わした貿易条約はバーナード9時のニュースでもトップで伝えられ、星民から大喝采を受けたとか。勿論月子の活躍は秘密ですけど。


 さて、次章の予告です。

 イグールをとりこにして地球に逃げ帰った月子。

 バーナーナに有利なバナナ貿易条約も締結されめでたしめでたし、のはずだったが。

 楽しい日曜の朝を過ごす僕らの前に突然現れたのはあのイグール。

 地球にまで月子を追ってやってきた彼は駅前モールを白馬に乗って歩き回り……


 次章「月子SOS」もお楽しみに!

 半分宇宙人だけど心はピュアな地球人、日向陽太でした。


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