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才色兼備のナナ姫は、恋の作法がわからない!  作者: 日々一陽
第4章 星の皇女と白馬に乗ったバカ王子
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第4章 第6話

 夕食を終える頃には日は沈んでいた。


「さあ、そろそろあいつが来る頃ですね」


 正装のドレスに着替え直したナナが口元を引き締める。

 時計の針は夜7時を指そうとしていた。もうこの星に来て2時間半が経とうとしている。


「これから始まる晩餐会ばんさんかい、よろしく頼みますよ陽太さん!」

「えっ、晩餐会って今食べたばかりじゃ?」

「形だけですよ、わたしは何も食べません。あんな男と一緒に食事なんてしたくもありませんから」


 かなり嫌われているようだ。そんなにブサイクな男なのだろうか?

 やがて、立派な広間に僕らは並んで待った。

 皇妃の横にはロイ王子とサキ皇女。

 少し離れてナナと僕。

 オリエと月子は傍聴者のように壁に沿って立った。


「似合うわよ、月子ちゃん」


 月子はナナのお古という真っ赤なドレスを着てご満悦。そう言う僕は学校の制服を着ていた。こっちの感覚では正装に近いらしく、この服装でいいと言う。胸の名札も「保健委員」というバッチも着けたまま。「勲章みたいでカッコいい」とナナが外させてくれない。オリエはどこからともなく取り出した青いドレスを着ている。


「お兄ちゃんだけ学生服名札付きっ、ぷぷぷっ!」

「笑うな月子!」


 と言いつつ、自分でも笑ってしまう……


「アルタイル王子、イグール殿下のご到着です!」


 重厚な門が開くと誠実そうな年配の従者を伴って白馬に乗った王子が入ってくる。


「ねっ、わざわざ城の中を白馬に乗ってくるなんて、バカ丸出してしょ!」


 僕だけ聞こえるようにナナが囁く。


「だけど見た目はカッコ良さげじゃないか?」

「何を言っているんです。あの男のどこがカッコいいもんですか。わたしの目には最低のチキン野郎にしか見えません」


 小声だけど危険な発言を平気でするナナ。


「やあ久しぶりですね、ナナ皇女!」


 下馬する彼に恭しく頭を下げる皇妃さまやロン王子を軽くスルーしてナナに声を掛けたイグール王子。足元は茶色のブーツ、手元には黒いポシェット。白いスーツにはたくさんの勲章をぶら下げてマントを羽織ったその男はハッキリ言って凄いイケメンだった。正直こんないい男をどうして嫌うのか理解出来ない。悔しいけど僕なんかよりずっとカッコいい。


「はい、お久しぶりでございます。いつもバーナーナ産品を重用ちょうよう戴き感謝致します。今宵はごゆっくりお楽しみくださいませ」

「うん、楽しませて貰うよ。晩餐もいいけどナナ皇女、ふたりきりで話もしたいのだが」

「ふたりきり?」


 意外な申し出だったのか、ナナが小声で反復した。


「そう、ふたりきり。少しの時間でも構わない」

「申し訳ございません、それは出来かねます」

「そう言わずに…… って、あれっ?」


 それまでナナしか見ていなかったイグール王子が僕に目を向ける。今頃気が付いたのだろうか?


「この男は?」

「はい、わたしのフィアンセ、陽太さんでございます」

「イグール殿下、お目にかかれて光栄です。日向陽太でござそうろう。これからナナ姫と同じくよろしくお願い申し上げ候」


 ナナに教えられた通りの挨拶をすると、ふたり揃って頭を下げる。しかしイグール王子からの返事はなかった。視線を上げると、真っ赤な顔をした彼が僕を睨みつけていた。


「フィアンセだって? チッ、貴様がそうか!」


 貴様がそうか、ってどう言うことだ?


「はいその通りにございます。わたしたちは既にちぎりの言葉を交わしておりますゆえ

「そんなこと許せるかっ! ええい陽太とやら、そなたに決闘を申し込む!」


 決闘だって?

 宇宙じゃ人殺しとかはないんじゃなかったのか?


「お待ち下さいイグール殿下、決闘とは穏やかではありません」

「勿論決闘と言っても剣の試合だ。命を奪う訳じゃない。なあ陽太とやら、男なら受けて立つよな」


 ちょっと待て。

 剣の試合?

 剣道じゃないよな、多分フェンシングみたいなものだろう、広間に防具みたいなのが飾ってあったし。って、そんなのやり方すら知らないじゃん……


「おやっ、その顔はルールすら分からないって顔かな? なあにこのエペと言う剣で上着を突けば勝ち。エペは手を使っても口にくわえても足で持っても構わない。但し、他の人が手を貸したら反則だ」

「待って下さいイグール殿下。殿下はフェンシングの競技会で輝かしい実績をお持ちのはず。一方陽太さんはエペを持つのは初めて。ここはハンデを付けて貰えませぬか?」

「ハンデ? そうだな…… 俺さまは紳士だから特別にひとりだけ助っ人を付けることを認めよう。一対二だ」

「分かりました。じゃあ」

「おっと!」


 ナナの言葉をさえぎってイグール王子。


「但し、ナナ姫さまはダメですよ。いくら宇宙インターハイで優勝した俺さまでも、あなたのスピード相手じゃサシの勝負でも危ない」

「うぐっ……」


 狙っていた条件を閉ざされたのか、ナナが口をつぐんだ。


「どうする陽太とやら。ナナ姫さまに頼らなければ何も出来ないのかな?」

「……わかった。じゃあ、そこにいる僕の妹、月子とふたりで勝負だ」

「えっ、お兄ちゃん?」

「はっはっは。大丈夫ですか? こんな小さなお子様を指名して。妹さん、急に青ざめましたよ」

「後悔するのはどっちですかね」


「よし、じゃあ勝負だ。負けた方は潔くナナ姫さまから手を引く。いいなっ!」


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