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才色兼備のナナ姫は、恋の作法がわからない!  作者: 日々一陽
第3章 オタクロード一直線
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第3章 第4話

「ああ、買った買った! じゃんけんにも勝って特装本も手に入れたし百点満点だわ。これで当面アニメが私を寝かさないわねっ!」


 両手いっぱいにマンガやDVDやグッズを持ち満足そうなオリエ。


「でも疲れたわ~! ちょっと休んでいきましょうか!」


 オリエの提案にみんなうんうんと肯く。もう5時間ほど経っているのに途中カレーを食べた以外、ずっと買いまくりで立ちっぱなし。さすがにちょっと疲れた。

 僕らは通りに面したカフェに入る。


「お帰りなさいませ~っ、ご主人さま、お嬢さまっ!」


 目を輝かせオリエが入っていったのは萌えイラストが看板のメイド喫茶だった。


「わあっ、お嬢さまって言われたっ!」


 無邪気に喜ぶ月子。


「へえ~っ、ここのお店の制服は可愛いですね。それに「いらっしゃいませ」じゃないんですね」

「ああ、メイド喫茶だからな」


 何も知らないナナに教える僕も実際に入るのは初めてだ。

 席に案内されるとめいめい好きなものを注文して。


「わたしもたくさん買っちゃいましたあ」


 ナナとオリエが戦利品を広げ満足そうに目尻を下げる。

 さすがは星の王女さまたち、僕なんか比べものにならないくらい金持ちだった。


「ねえっ、このストラップ可愛いでしょっ!」


 月子もナナにグッズを買って貰ってご満悦。

 何も買ってないのは僕だけだ。


「陽太さんは欲しいものなかったんですか?」

「ああ、今日はね」


 ホントは金がないからだけど。

 と言って、月子みたいにナナに買って貰う、なんてことはイヤだし。


「お待たせしました~っ メイドさんオムライスですっ!」

「おいオリエ、昼にカツカレー大盛り喰ってまだ喰うのか?」

「当然でしょ、メイド喫茶のお絵かきオムライスは地球の名物なのよ。地球ミシュランでも三つ星評価なのよっ!」


 地球ミシュランって、いつの間に観光地化したんだ、地球!


「こちらバナナパフェですっ!」


 一方ナナはバナナ料理の研究らしい。


「月子はバナナジュースだよっ!」


 これはきっと月子なりのナナへの気配りだ。


「どう月子ちゃん、美味しい?」

「うんっ。バナナとミルクと、あと他にもフルーツ入ってるみたい」

「そうなんだ。えっと、バナナパフェは…… これって主役はアイスクリームですね。バナナは単なる飾り付けみたい……」


 不満げなナナ。


「ナナねえ、あのね、お家の近くのフルーツパーラーだったらもっと色々あるよ。今度行こうよ!」

「そうなの! 教えてくれてありがとう月子ちゃん!」


 月子はナナによく懐いてる。だけどオリエとは会話がない。オリエの方もお腹にバナナを描かれたトラウマか、月子が苦手みたいだ。月子は明るくっていい子なんだけどな。


 僕は何の変哲もないコーヒーを啜りながら彼女たち三人の様子をじっと観察する。

 あんな事があったのに、ナナとオリエは仲が良さそうだった。


 やがて。

 店を出る頃には夕方近くになっていた。

 僕らはこの街のメインストリートを並んで歩く。


「陽太さん、今日はホントに楽しかったわ」

「それは良かった。オリエも満足そうだしな」

「月子もっ!」


 じゃれてくる月子の頭を右手でポンポンと撫でてやる。

 と、僕の左手に柔らかい感触が。


 これって!


「お、おいナナ!」

「いいじゃないですか、手を繋ぐくらい……」

「だけど」


 なんだか顔が熱くなる。すべすべとして柔らかな彼女の手は思うよりずっと小さくて。


「手を繋ぐくらいじゃ妊娠しません。でも、陽太さんがお望みならそう言うことも…… ポッ!」

「ポッ、じゃねえだろ! 手を繋いだら、その…… お前の怪力で骨が折れるだろ!」

「やって欲しいんですか? 骨が折れるじゃ済みませんよ。手がジュースになりますよ?」

「んなっ!」


 一瞬引きかけた僕の手をナナの手がぎゅっと……


「ウソですよ。そんなこと出来ません! 地球の人は自分の可愛い赤ちゃんの手を握りつぶしたりしますか? ねっ、不可能なんです。陽太さんはわたしの命の恩人で、そして大切なフィアンセなのですから!」


 僕の手をぎゅっと握りしめた彼女の手はあくまでか弱く優しくて。


「ナナ……」

「陽太さん、大好きですっ!」


 どんっ!


「イタタ…… 何するのよオリエ、荷物ぶつけないでよっ!」

「イチャイチャし過ぎよ、腹立がつわ!」


 しかし、ナナは、これ見よがしに僕の肩に頭を寄せて。


「うふっ! だってふたりは夫婦@仮免許で暴走中、ですから」

「ムカッ! と来るわね、ったく。帰ったら腹いせにあの特装本のDVDを見まくってやるんだからっ!」


 と。


「残念だがそうはさせない!」


 どこからか声がしたかと思うと突然周囲が薄暗くなり不気味な静寂せいじゃくに包まれた。


「こ、これは亜次元空間!」


 オリエが言うが早いか周りにいた人々の姿が消える。

 人混みの中からひとり残ったのはグレーのスーツに黒縁眼鏡、見覚えがある七三分のおっさん。


「おっ、お前はさっきの!」

「はははっ、俺は諦めが悪いタイプでね」


 彼がそう言うと、辺りを強烈な突風が襲った。


「月子大丈夫か~っ!」


 吹き飛ばされそうな月子の手を必死でつなぎ止めその場にうずくまる。

 やがて突風が止み顔を上げると巨大な円盤が道の真ん中に鎮座していた。その開いた扉からはグレーのスーツに赤いマントを羽織はおった頑強な男たちがぞろぞろと降りてきていて……


って、何だその赤マント。

スーツにそれはないだろ。お前らアタマ大丈夫か?


「きゃあ~っ!」


 って、余計なことを考えてる場合じゃなかった。

 ナナが五,六人の赤マントたちに銃を向けられ、体を銀色の鎖でグルグル巻きにされていた。


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