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第三戦:記憶と訓練

今週休載とか言いつつ思いついちゃったので思い切って掲載。次週こそ、おやすみします。

前回までの物語

遂にデルディア騎士団に入団した忍。

訓練生顔合わせでルームメイト佐伯とそのサポーターである眞鍋大尉、司令室にて出会った幸村大佐達含む個性豊かな仲間と出会う。

 司令室で幸村から告げられたのは「6日後の実技竜討伐試験」について。そして、「軍の種別」だった。


――「蒼空ー!! 」

「お帰り新太!今日も悪いやつやっつけてきた? 」

「ああ! 今日も俺が仕留めてやったから、蒼空は安心して眠れるぞ。」

新太の暖かく優しい手の温もりが置かれた頭の上から僕の体全体に伝わる。

 「新太、今日も行くの? 」

「ごめんな、一緒にいてやれなくて。でも必ず戻ってくるから。安心して待っとけよ。」

嘘だ。哀しそうな目。心配するな、と笑う口元。新太は今日の戦争で遠くに行っちゃって、それきり戻ってこないんだ。また僕は独りになってしまうの? 嫌だよ、置いて行かないで…。


――デルディア騎士団本部

 「…これが、我々デルディア竜騎士と悪魔(デーモン)の最後になるだろう。だが、この戦争には勝たなければならない。愛する人、このデルディアという名の国、名誉をかけて。自分の命にかえても守りぬくぞ!! 」

『オオオー!!! 』


…蒼空…きっとお前は今日の戦いが俺達にとってどういう意味なのかわかっているから、きっと俺のもとに来て止めようとするだろう。俺は、お前を守る為に、国と名誉を守る為に戦う。だから、ごめんな。そう思いながら俺は、柊木新太は戦場へと馬を走らせる。黒い空。雨雲ではない。すべて、奴等(デーモン)だ。本当にこの日が来てしまったんだな。

――「新太……新太、新太どこにいるの? 怖いよ、寂しいよ、苦しいよ。」

目の前に大きな影。ひと? 騎士団の人? この人なら新太の居場所を知っているかもしれない。そんな期待をしながら僕は顔を上げた。

「あの、新太…柊木新太はどこにいますか? 」

と、同時に僕は動けなくなった。

「……………悪魔(デーモン)? 」

間違いない。背中から生える不気味な黒い羽。頭の片方には闘牛のような大きな角。そして長く鋭い牙……。言葉を失う。誰か、誰か…

「おや、人間…しかも子どもとは。食べてくださいと言わんばかりではないですか。どれ、私がいただきましょうかねぇ…? 」

怖い。怖いよ。誰か助けて。新太……僕、喰われちゃうの? こんな事なら言うことを聞いていればよかった。涙が溢れた。もう助からない。そう思った時だった。


「…琥珀、行くぞ。」


どこかで声が聞こえた。悪魔(デーモン)もその存在を感じ取ったのか戦闘態勢に入った。

――キィィイイインッッ!! 

悪魔(デーモン)の羽が甲羅のように硬くなり攻撃を防ぐ。攻撃を仕掛けたのは…

「あら…た? 」

「やっぱりもっと重い鍵をかけとかなきゃいけなかったな。大丈夫か? 蒼空。」

新太だ。琥珀と呼ばれているらしい太刀を無駄な動きをひとつも見せず、悪魔(デーモン)に振りかぶる。すかさず悪魔(デーモン)も対抗する。

「んんー。威力もスピードも高い能力値。

君が人間の中で最強に等しいと言われていた柊木新太ですか。いやあ、見事見事。本当に見事だ。」

不敵な笑みを浮かべた、その時だった。

悪魔がどこからか剣を抜き出した。そして目にも見えぬ速さで新太を切りつける。


「………なっっ!! どこから……」

新太は裂けた部分から大量の血を流す。

「君もなかなか美味しそうだねぇ。でもまずはそこの少年を頂こうかな? 君は今まで出会ってきた人間の中でダントツ、美味しいそうな感じがするよ。」

じりじりと悪魔(デーモン)が僕に近づく。

嫌だ、まだ死にたくない。嫌だ!

悪魔が召喚した剣をこちらに向け振り下ろした。死を覚悟して僕は目を瞑った。

――ドスッ

剣が刺さった。

……でも痛くない、なんで? ふと顔を上げる。

「………あ…ら…た………?? 」

「ちゃんと…守れてよかった…。」

先程とは比べ物にならない量の血が地面に落ち、僕の顔に散った。新太が貫かれていた。

同時に嗚咽が走る。


「新太………………」

「おや…小さい命を守り自ら犠牲になるとは流石人間界のヒーロー、と言ったところですかねぇ。さて、そこの僕もいただきましょうか…」

突き刺していた剣を抜き出し、僕の方へ向ける。

――悪魔(デーモン)の体に太刀が刺さる。黄金色に光る剣が紫に染まる。悪魔(デーモン)の血だ。

「まだ生きていたのですか。しつこいヒーローですねぇ。」

「………蒼空……逃げろ、できるだけとおくに…早く…」

「やだ、おいていけない。新太も一緒に…! 」

「行けって言ってんだろ!!!! 早く!! 」

ビクッと体が反応する。僕は言われた通りにその場から抜け出し、走った。遠くへ、遠くへ。

「家族? あれ。美味しそうだったのにな。それにしても君はあの子どもがとても大事みたいだね。まあ、もうすぐ君は会えなくなるけど。僕に喰われちゃうからね……なにか言い残すことは? 」

「…………必ず…何年かかろうが必ずあいつが…蒼空がお前等を殺しに行く。お前等はいったい残らず蒼空達によって…殲滅されることになる…!! 」

「何を根拠に言えたものだか。まあ、できるものならやってみろって話ですね。それでは最後にもう一刺し。」

僕が振り返った時に見た光景。

もう一度新太はあいつに刺され、頭から喰われていた。


――「うわああああ!!!!!! 」

夢…ここは…そうか、俺、デルディア騎士団に…。

「酷くうなされてたけど大丈夫なの?

蒼空君。」

「あ、ああ…佐伯か。いや、ごめん、何でもないんだ…。大丈夫。」

――コンコン ガチャリ

「? 」

「牧谷です。おはようございます。

お二人とも。今日は私と眞鍋さん二人がかりで試験に向けての特訓を受けてもらいますので、朝食が済んだら装備したのち訓練所4区まできてください。」

「わかりました。」

「……………」

「あの、忍さん? 」

!! だめだ。またあの日のことを…

「あ、えっと…3区ですよね。」

「…………4区です。」

「すみません。」

――朝食を済ませた俺達は指定された4区へと向かった。

「おはよう。佐伯、忍。…うん、ちゃんとご飯食べたみたいだし、始めようか。」

『はい。』

「取り敢えず佐伯さんはランス、忍さんは太刀をお取り下さい。どれも同じ性能なので適当にとっちゃってくださいね。」


言われるまま武器を手に取る。

「では、忍さんは私と、佐伯さんは眞鍋さんとで戦術の基礎を身につけてもらいますね。それでは、始めましょうか。」

――キィインッ

重い…! これが、(ドラゴン)を宿した剣……新太もこれを…あの時もこの剣を…

「…忍さん集中して下さい。本番では無駄なことを考えている暇なんてありませんからね。」

次々と繰り出される突きに圧倒された俺はバランスを崩す。

「いってぇ…」

「痛いだの何だのほざいている暇はないです。何度言わせるのです。本番では無駄なことを考えている暇なんてありません。」

「わかってるよ…」

途端に皐月の動きが止まる。

「…どうしたんだ? 」

眉間にシワを寄せ近づいてくる。

――スッ

剣が俺の喉に少し当たる。

「いい加減にしてください。わかっていないから言っているのです。忍さん、貴方、ここに何しに来てるんですか? 」

「…は? だから試験に向けて特訓を…」


「ですよね? それで試験で竜に認められる為に集中して訓練に取り組んで頂いてるはずです、それなのに貴方は他のことを考えながら訓練を受けている。

どうせ、柊木新太さんの事でしょう?

 復讐すべく、立派な団員になるのに、過去を思い返しては動きが鈍るようでは、到底悪魔(デーモン)には敵いませんよ? まぁ、復讐を諦めたのならどうぞ出て行ってください。別に、止めないので。」

何なんだよ…こっちの気も知らねぇ癖に偉そうに…

「………だよ」

「はい? 」

「お前に何がわかるんだよ! 家族がいなかった俺にとって唯一兄同然だった新太を、あんなカタチで…あんなクズみたいな奴等に殺されたんだぞ! 

お前にはどうせ人を失ったやつが何年経ってもいつになっても何度も何度も夢に出てその度に苦しめられる気持ちがわからないんだろ!? だからそんなこと言えんだよ! 」

訓練所が一気に静かになる。みんなこちらを見ている。

「………だって…」

皐月が口を開く。

「私だって あなたと同じ様な思いをしてきました! 唯一家族だった妹を悪魔(デーモン)の手によって殺された。 妹の復讐をする為に|デルディア騎士団(この軍)に入った…。あなたの気持ちは痛い程わかります。」

「じゃあなんで…」

「奴等に復讐する為に入ったのなら、どんな悪夢を見ようと、ひとつの目的の為に。

 復讐の為に集中して訓練を受けないと…必ずいつか挫折し、そこから更に立ち上がる事もままならず、結果目的は果たせません。忍さん…悲しいのはわかります。

だから、その気持ちを強さに…復讐を遂げる意志に切り替えて下さい。前にも申しましたが…私は貴方を全力でサポートします。貴方の納得行く訓練ができるように努力します。だから………」

こいつ…皐月、俺のことを思って…? しかも俺と同じ思いでこの騎士団に…? 


「ごめん、皐月。俺、間違ってた。」

「……え? 」

「復讐を誓ったのに、復讐以前に騎士として一人前にならなきゃいけねーのに…皐月が俺なんかの為に一生懸命やってくれている事、無駄にしかけていたんだな。

 本当に…すみませんでした。俺にもう一度チャンスをください。」

………幸村大佐、やはり、このこは…

「わかりました。言ったからには最後まで全力で、励んでもらいますよ。もし、貴方がまた訓練を少しでも怠るような事があれば許しません。私に、ついてきてくださいね? 」

「……ありがとう……ございます。」

「ふふっ。では再開しましょうか。皆さん、お騒がせして申し訳ありませんでした。どうぞ、訓練を続けてください。」

「いやー、ひやひやしましたね…眞鍋さん。」

「お前は取り敢えずランスを他所にぶつけるのはやめようか。ていうかそんなんじゃ|悪魔

(デーモン)に殺されかねないぞ? 」

「す、すみません…」

「行きますよ、忍さん! 」

「かかってこいよ! 」

閲覧ありがとうございました。

最初は、1話の初めに描いていた新太と蒼空の話を夢に出し、深く書いてみました。

そしてその夢により再び挫折する蒼空。

それに活を入れたのがサポーターである皐月。実は、彼女にも過去に悪魔に家族を殺されたということから復讐心を抱いていたんですね~。

試験まであと5日。二人は無事竜に認められるのか? そして2話にでてきた女の人は一体誰だったのか?

そこは次回までのお楽しみです。


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