第二戦:新たな仲間
デルディア竜騎士と悪魔のいる街第二戦目。
今回は戦闘描写やグロ描写は一切ありません。どちらかというと学園モノっぽいです。
「幸村大佐、失礼します。」
重い扉の向こうには牧谷さんのいう、幸村大佐と思われる人が椅子に腰掛けていた。
「あの、牧谷さんこの人が…」
「この方が先程説明した、デルディア騎士団の大佐、兼SDEC部隊の指揮官、幸村奏弍大佐。」
「やあ、忍蒼空君。デルディア騎士団にようこそ。皐月には君が訓練生として生活する6ヶ月、君をサポートして貰うからわからないことがあれば彼女に聞いてみて。これでも彼女、少佐でありSDEC部隊の一員だから。」
「は、はい…! 」
じゃあこれから頑張ってね、幸村大佐にそう告げられた俺は訓練生バッジと武具、制服を受け取るとその場を後にした。
「取り敢えず今日は同じ訓練生達と対面してその後は自分の番号の部屋でゆっくり休んでください。明日からは訓練生として基礎学習が始まります。」
牧谷さんは必要事項以外はあまり話してくれない。まあ、出会って数時間しか経ってない訳だしそれが普通なんだろうけど。俺は牧谷さんに一言、今日の御礼とお世話になります、ということを告げた。
「それは、いいのですが…その“さん”呼びやめてください。」
「あっ…す、すみません。えっと…」
俺がなんて呼べばいいのか、俺の様子を見た牧谷さんは呆れた様子で
「牧谷でも皐月でも何でもいいから…。その生意気そうな身長・髪型・目つき・声…全てにおいて蒼空、あなたはギャップというものがありすぎです。その見た目も含め森での敵の察知、反射神経はバッチリなのに極端に臆病だしすぐ諦める。新太さんを貫いた悪魔に復讐するのでしょう? 6ヶ月…
いや、1日でも早く、できれば6日後に行われる実技試験までにはそれ、克服してください。森でも言いましたが臆病さが邪魔です。」
ここまで言われると何も言い返せない。その通りなんだ。俺は昔から臆病で、泣き虫で、いつも新太に助けてもらってばかりだった。あの時もその臆病と無力さを言い訳に……。
「皐月、俺、絶対にSDEC部隊に入るよ。入って、絶対に新太を殺したあいつを…悪魔を一体残らず殲滅してみせる。だから…」
「訓練生での実技の結果によってはSDECに入るのもそう遅くならないかもしれないですね。基本6ヶ月というのは最低でもそこまでには訓練生を卒業して各軍、また軍それぞれにある部隊に配属が決定しなければならない、という目安ですから。だから、私はあなたのサポート役として全力で特訓に取り組んで貰えるよう努力します。」
俺が言い切る前に皐月が言った。
「あ、そうだ、訓練生の顔合わせが終わったら幸村大佐の司令室に戻ってきてください。休めと言っといてあれですが。まだ説明しきれていない事もありますし。」
そう言うと皐月は去っていった。言われた通り俺は訓練生の顔合わせに第一訓練所へと足を運んだ。
――「うわ、すげー人集りだな…っても12人程度だけど。」
「お前ら、取り敢えず輪になって。んで自己紹介して解散ねー。」
幸村大佐、適当に見えるけど戦いになったらすげーんだろうな…。
中には勿論皐月同様に女もいた。
…俺のような復讐のためだけに来ている奴もいるのだろうか…みんななんの為に死ぬかもしれないような場所をあえて選んだんだろう。かっこいいから? 制服がお洒落だから? みんなを守りたいから?それともやっぱり――
「……の………あの! 」
…誰だろう。紹介し終わってから意識が飛んでいた俺は今目の前で声をかけていた男に全く気づいていなかった。
「あ、すみません。なんですか? 」
「そのルームメイトの佐伯峻です。って紹介のときもいったんだけど…。」
「あー…ごめん、ちょっと考え事してて。改めて、忍蒼空です。よろしく。」
「うん、よろしく! 部屋戻らないの? 」
あ、思い出した。俺また幸村大佐の所行かないといけないんだ。
「ああ、うん。皐月に幸村大佐のところに後でこいって言われてて…」
「ええっ!蒼空君、サポーター牧谷少佐なの? 」
羨ましそうに、目を真ん丸にして驚いている…
「何、そんなにすごいの? あの人。」
「凄いも何もSDEC部隊でしかも少佐、容姿も綺麗だし何より…すごく強いんだよ! SDEC内でも幸村大佐の右腕って言われるくらいに! 」
こいつ…なんでこんなに燃えてるんだ。目がギラギラしてる。さっきとギャップありすぎ…
「そ、そうなんだ…確かに森で助けられた時はやべー…って思ってたけど。」
「僕も牧谷少佐が良かったなあー…僕のサポーターの人は…ううん…。」
こいつスルーしてるな。しかもなんか凹んでるけど…いや、何も悪気はないんだろうけど…。
「誰が不満なのかな? 佐・伯・君(怒)。」
「わ!!! 眞鍋さん!! な、何でここに…」
「それより誰が不満だって? 佐伯君? 」
「あっいやそれはそのえっと…ですね……」
俺はその光景ただひたすら笑いたくて仕方がなかった。だけど笑ったら俺まで被害が及ぶ予感がした…
「…?そっちのは…確か忍蒼空君…で、合ってるかな? 」
「え! あ、はい、そうです。あの、貴方は…」
「ああ、自己紹介してなかったね。私は眞鍋徹。君のサポートに付いている牧谷と同じSDEC部隊に所属している。そして、大尉でもあるんだ。まあ、彼女より下ではあるけどね…。」
「(この人もSDEC部隊なんだ…)そうなんですか……俺、絶対に眞鍋さん達のSDEC部隊に入ります! 」
「良い意気込みだなあ。次の実技試験、たのしみにしてるよ。二人共頑張ってね。じゃ…あー、佐伯、君は後で私の部屋に来てくださいね。」
「え………」
「えってなんだえって…別に説教とかではないから竜について少し話すだけですから。」
佐伯、苦手なんだなーきっと…皐月も竜に認められるのがどーのっていってたけど…まさか、な。嫌な予感はするが、取り敢えず俺は幸村大佐達の待つ司令室へ向かった。
――「幸村大佐、失礼します。」
やっぱりここの扉重すぎじゃないか…緊急時どうすんだよ…
「遅かったねー。そこ座って。」
取り敢えず俺は指示された通り来客用の席に座る。
「幸村大佐、それでご用件は…」
「あー、そうそう、今度の実技試験について何だけどね……」
あぁ、やっぱりか。
「君に説明し忘れてて。わざわざ呼んでしまってすまない。」
「いえ、全然大丈夫です。それで、実技試験についてって…もしかして皐月の言ってた竜と何か関係があるんですか? 」
幸村大佐は感が鋭いやつだ、と言うような笑顔を振る舞いながら
「じゃあ少しは聞いてたんだね。それなら話は早いや。」
と言う。いや、まだ竜って名称しか聞いてないんだけど…。
「そこまで知ってるならもうわかると思うけど、君たち訓練生には6日後に行われる実技試験にて、竜に認められなければならない。当たり前だけどみんな種類は違うよ。こちら側も同じ。魔法や守備、回復、射撃型(弓・ボウガン他)から前線に出る突撃型、斬撃型(太刀・大剣他)と様々な|グループ(軍)に分かれる。まあ君はー…斬撃型っぽいけど。その辺は6日間の演習で自分の意志で決めてもらおうと思ってる。軍に分かれたら次はその中でも所属部隊を決める。その辺はこちらに任せてもらうよ。」
皐月が俺に言いかけてたのはこの事だったのか…なんだか、話を聞いていたらワクワクしてきた。
実技試験の説明を聞き終わり、俺は幸村大佐に
「ありがとうございました。」
とだけ伝えて自分の部屋に戻る。
――ドンッ!!!
『痛ーっ』
「す、すみません!ぼーっとしてて…」
「いや、俺こそごめん。怪我ない? 」
「だ、大丈夫です! 」
誰だろ。訓練生なのは確かだけど…名札。
「柊木琴音……」
「えっあ、そ、そうです! あの、忍蒼空、さん…その…こ、これからよろしくお願いします! 」
「あ、うん…“さん”つけなくてもいいよ。同い年だし。それより顔赤いけど大丈夫? 」
「え!! …あ、大丈夫です!し、失礼しました!! 」
なんか、慌ただしいのやらなんのやら…ここっていろんな人がいるもんだなー。顔赤かったけど本当にあの子大丈夫かな…。」
取り敢えず部屋に戻るか。佐伯ももう戻ってるだろうし。
「あ! おかえり、蒼空君遅かったね~。僕はもう寝るけど、蒼空君は先にお風呂入ってからにする? 」
「あー、うん、そうする。」
家族がいたら…こんな感じだったのかな…
毎日……いつも誰かが“おかえり”って言ってくれて、くだらない話したりして…
『…蒼空、逃げろ! 』
駄目だ。あの日のことを思い出す。
もう、俺は逃げない。何の為にここにきたんだ。俺は…奴等に復讐するんだ。絶対殲滅してやる。この手で。
第二戦:新たな仲間
ご堪能いただけましたでしょうか…!
初日の訓練生顔合わせなどで知り合いが増えた蒼空ですが、幸せながらも孤独を思い出し、寂しい思いをする蒼空。
次回からは6日後の実技試験である竜ソロ討伐に向けてのサポーター皐月と蒼空の訓練開始です。今回は学園モノ寄りになってしまい、バトルは?と思った方々もたくさんいらっしゃると思います…。
次回は2~4日頃更新予定です。
よろしくお願いします。