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ハズレ奇術師の英雄譚  作者: 雨宮和希
第二章 呪われし運命に救いの手を
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第29話 「天魔刀と儀式場」

 ローレン大迷宮の第三十層。その最奥にある大部屋は、神聖さと厳粛さを兼ね備えた祭壇が設立されていた。

 祭壇の中央に置かれている豪奢なテーブルには、一本の曲刀が立てかけられている。それは無骨な黒鞘に包まれている長刀だった。

 士道は周囲を警戒しながら、場違いな刀に興味を惹かれて祭壇へと向かう。

 その過程で階段に足をかけた瞬間、ふわりと穏やかな魔力に包まれた。

 驚愕から距離を取ろうとしたが、己の傷がみるみるうちに修復されていく様子を見て、安堵したように息をつく。

 満身創痍だった傷が全快したときには副次効果なのか、体内の魔力までもが完全に回復していた。

 流石に精神的な疲労にまで効果は及んでいないが、これだけでも常軌を逸した治癒力である。迷宮踏破者に対する褒美といったところか。


「……」


 ともあれ、士道は威圧感を以って君臨している長刀に『鑑定』をかける。

 説明の詳細に目を通すと、百年前の戦争によって失われた古代技術で製造された過去の遺産だった。

 この世界に現存する古代の剣はたった三本であり、そのうちの一本だ。


 ――『天魔刀』。

 

 その鞘を持ち上げて、柄から剣を引き抜く。透き通るかのような銀色の刀身が顕になる。剣に魔力を流すと、紅の刃紋が浮かび上がった。

 言葉もない。士道は感嘆した。  

 『鑑定』によると、この刀は『魔剣』の一種だ。すなわち古代技術によって特殊なスキルが宿っている。

 現代ではスキルを物質に付加させる技術は実用化されていないのだが、古代文明では違ったようである。

 この刀宿っているスキルは二つだ。

 まず『重量操作』。

 刀に流す魔力の量によって重量を変えることができる。

 次に『伸縮自在』。

 同様の理屈で刀身の長さも変化できる。伸びるも縮むも自由自在だ。

 どこか如意棒を想起させる力だ。


(……凄まじいな)


 士道は『天魔刀』を好みの状態に変える。銀色の刀身が僅かに伸長して、重量は比較的に軽めに設定した。

 試しに素振りをして微調整すると、この上なく手に馴染んだ。

 今までの愛刀だった玄海の形見――『夜影』と入れ替えるように腰に吊る。

 玄海から授かった『夜影』も業物だったが、それはあくまで日本の基準だ。

 日本にはない魔力伝導率という点で、『天魔刀』の方が遥かに上回っている。


(……さて)


 気を取り直して祭壇の奥へ進む。厳かな扉を開くと、きらびやかに輝く魔石で埋め尽くされた部屋があった。

 豪華絢爛という単語がふさわしい稀少な魔石の数々。一生分の財産になるかもしれない。

 士道は僅かに目を瞠るが、金には困っていないので反応は薄かった。

 とはいえ、ここに置いておく理由もない。当然魔法袋にすべて回収すると、さらに奥で仄かに発光している魔法陣へと足を進める。

 念のため『鑑定』すると、やはり転移魔法陣であるようだ。

 ようやく地上に戻れる。そう思った途端、後方から足音が聴こえた。

 士道は硬直する。


「――なっ」


 鋭く息を呑んだ。この階層には、士道とウルフェン以外の生命体は存在していないはずである。士道は今度こそ、目を瞠りながら振り返る。

 そこに立っていたのは――。


「お前……」

 

 白銀の毛並みに炯々とした瞳を瞬かせる、雄大で気高い白狼の王。

 先ほど殺した筈のウルフェンはひどく冷静な目で士道の姿を静かに見据えると――ゆったりとした仕草で、(こうべ)を垂れた。

 士道は『鑑定』を行使する。


(なるほど……そういうことか)


 士道は笑みを浮かべた。

 『鑑定』の詳細を目を通すと、迷宮の守護者だった白狼王ウルフェンは、迷宮を踏破した士道の守護者になるようだ。

 隷属状態という項目はそのままの意味なのだろう。

 ウルフェンの瞳に先ほどのような敵意はない。逆に、士道を守ろうとする気概が窺えた。

 士道は適当に指示を出してウルフェンが従うことを確認すると、ひとまず迷宮から脱出するために出口の転移魔法陣へと向かう。

 祭壇の回復効果によって体調は万全。

 迷宮の守護者の討伐によってレベルも格段に上がっている。

 それに加えて『天魔刀』を入手して、白狼王を隷属させた。

 明らかに戦力が上がっている。

 勇者やエルフ族を退けて、リリスを取り戻す光明が差し込んできた。

 随分と士道にとって都合が良すぎるような気はするが、迷宮の未踏破層で細工ができる人物がいるとも考えにくい。

 士道はそこで考えを打ち切って、魔法陣に足を乗せる。

 地上へと、転移した。



 ◆◆◆




 昔から、生き残ることだけは定評がある。

 草薙竜吾はそんなことを考えながら迷宮都市ローレンの路地裏に座り込み、荒い息を繰り返した。その身体には火傷の跡が色濃い。

 

「クソ……流石に死ぬかと思ったぜ」


 スイメルが張った結界は、古代魔法を発動しようとした草薙の魔力を利用して、結界を膨張。凄まじい爆発を引き起こした。その後、草薙は熱に身を焦がしながらも、集中力を振り絞って"霊歩"の行使をやり遂げた。

 その結果、何とか転移に成功して路地裏に座り込んでいる。あと一歩遅ければ、死んでいたかもしれない。

 いくら一度、スイメルの目の前で"霊歩"を使ったとはいえ、たかが二度目の行使で分析されて術式に介入するなど人間業ではない。

 エルフ族は魔力の繊細な操作に長けているという話は知っているが、ここまで巧い者がいるとは思わなかった。

 ただでさえ重傷による発熱で意識が朦朧としているのだ。火傷による激痛が加わった現状では走ることはおろか、戦闘など間違っても不可能だろう。


「……厄日だ」


 適当に言いながら、草薙は壁に手をついて立ち上がる。そのままヨロヨロとした動作で前へと進み始めた。落ちているゴミや木箱を避けるのも一苦労である。


(……さて、ララはどこだ?)


 草薙が、リリスが逃げた方角とは真逆のローレンに転移したことには、当然のことながら理由がある。

 ミレーユとの戦闘中、魔王軍の仲間である治癒術師からの合図が打ち上がっているのを目撃したからだ。

 おそらく霧崎翔あたりの命令で来ていたのだろう。相変わらず優秀な男だ。

 ララは中級悪魔だが、治癒術師の分野に限り他の追随を許さない。

 悪魔きっての天才である彼女なら、どんな怪我だとしても戦える程度には回復できるはずだ。

 ともあれ、ララの居場所まで向かわなければならない。草薙は己の身体を叱咤して、歩みを進めた。





 ◆◆◆





 リリス・カートレットは、森林の中を逃げ続けていた。

 魔力による身体強化を全力で使用して凄まじい速度で走っているが、追尾してくるアルドック達に焦る様子はない。

 だが、リリスはギリギリだった。そもそも走っている場所は森林である。少しでも気を抜けば、その瞬間に木にぶち当たることになるだろう。

 リリスは魔術師だ。こういう肉体労働は不得手な領域である。故に、その動きはアルドック達と比べて危なっかしい。

 その上、限界が見え隠れしていた。

 吐く息は盛大に荒れて、足は疲労によって震えている。身体強化は筋肉を疲れさせるのも速めるのだ。

 加えて、表情を変えずに淡々と距離を詰めるアルドック達に、リリスは精神的に追い込まれていた。


「はぁっ……っ はぁっ……っ!!」

「…………」


 余裕を持って木々を回避して走り続けるアルドック達は息も乱れていない。

 まだ余力を残しているのか。そう仮定すると、一気に距離を詰めない理由が不明だ。単にリリスの限界を待っているのだろうか。

 じわじわと死神の足音が忍び寄る。

 そこへ、


「リリス! 方向を変えるんだ!」

「ブルース……!?」

 

 リリスは驚嘆の叫びを上げた。

 魔法塾の同級生であるブルースがどうしてこんな森の中にいるのか。

 昼間ならともかく今は夜中だ。森に入る理由がない。

 脳内に空白が生じる。

 ブルースはそんなリリスに構わず、アルドック達に渾身の水魔法を叩き込んだ。アルドックは舌打ちして水弾を回避する。ブルースは続けざまに魔法を連発した。どうやらあらかじめ発動の準備をしていたらしい。一気呵成の攻撃に、アルドックは一瞬だが、後退せざるを得なくなる。

 ブルースは視線でリリスを誘導し、今までとは違う方角に再度逃げ出した。


「ブルース! アンタ、どうして……」

「悪いが、事情なんて大して分かっていないさ。街が大騒ぎになってて、嫌な予感がしたらリリスがいなくなっていた。探しに来たらこの始末だ」

「どうやってあたしを見つけたのよ?」

「第一級冒険者クラン"一つ目狐"。あの連中が妙な動きをしていたから、こっそりつけてみたのさ。……奴ら、リリスを待ち伏せしていたよ。どうも勇者から依頼されたらしい。あのまま向こうに逃げていたら、あの騎士達と"一つ目狐"の挟み撃ちにあって死んでいた」


 思い返してみれば、確かに逃げる方向を誘導されていたような気がする。

 アルドック達は、ただリリスの消耗を待っていたわけではないのだ。


「……勇者の差し金、か。どうしてそこまであたしを狙うのよ……」

  

 震えるような声だった。ぽろりと零れ落ちた本音。ブルースはそれに何か言葉を返そうとしたようだが、そんな暇はないようだった。後方から、追撃の魔法が飛んでくる。

 リリスだけで逃げているときは魔法による攻撃はなかったのだが、方針を切り替えたようだ。

 肉薄する水弾をひらりと躱しながら、リリスは後方をちらりと眺める。

 そこには騎士達だけではなく冒険者の集団までが迫っていた。リリス達を包囲するように段々広がっている。

 捕まるのは時間の問題だった。


「ハーフエルフごときが、手間かけさせやがる……」


 冒険者達は皆一様に面倒くさそうな顔をしていた。何回か、フードを被って種族を隠していたときは関わったことのある"一つ目狐"の構成員達が、人以下のゴミを見るかのような目でリリスを見やる。恐怖が背中から這い登った。

 死の足音が凛烈に響く。

 リリスは潮時を悟った。

 もう、自分が死ぬしかないのだ、と。


「……ブルース、お願い。逃げて」

「……は?」

「このままだと、アンタも殺されちゃうかもしれない。それだけは嫌なの。アタシの事情に巻き込みたくないのよ」

「……」

「助けに来てくれたことはホント感謝してる。だから、お願い。アタシは友達を失いたくないのよ」 

「…フン。そんなもの、僕だって同じだ。君がハーフエルフだとかどうだとか、そんなもの知ったことじゃない。友達のために動くことの何が悪い」

 

 ブルースは後方の追手を憎々しげに睨みながら、鋭く告げる。


「――僕は、逃げないぞ。大切な友達を見捨てて逃げ出すくらいだったら、死んだ方がマシだ」


 逃走劇は続く。

 刻一刻と終幕は近づいていた。




 ◆◆◆




 僅か数秒の出来事だった。

 ミレーユ・マーシャルは決死の覚悟で、一世一代の賭けに出た。


「"支配領域"」


 言葉と共にミレーユの魔力が散布される。それが広がる暇も許さずに、魔法の行使に対して即座に反応した勇者の分身体が大剣を振り下ろす。

 無謀ともいえるミレーユの行動に対して動いたのは三人。残りの二人は僅かに距離を取ってミレーユの動向を見据えている。どこまでも冷静な勇者だ。ミレーユは僅かに顔を歪めながら『高速演算』の効果を存分に発揮して、魔法を迅速に練り上げる。扱う魔法は発動が速いもの。つまり簡単かつ相手の動きを封じられる術式。ミレーユは即座に術式を弾き出すと、魔法陣を展開した。


「――"泥化"」

「ぬっ……っ!?」


 二人の周囲の地面が、ミレーユを起点としてどろどろの汚泥と化していく。

 迅が泥に足を取られて大剣を振るう腕が鈍った。とはいえ、迅は勇者だ。並大抵の実力ではない。

 一人は転んだが、二人の迅は態勢を崩しながらも腕力だけで剣を振り回す。

 ミレーユの機転に引っかかってなお十分な破壊力を持った一撃が暴虐を撒き散らした。ミレーユは一人目の迅の大剣を体さばきで躱し、二人目は"泥化"の効果範囲を狭めて転ばせ、三人目の斬撃には反応し切れず、肩口に深く炸裂した。


「ごはっ……!?」


 血飛沫が舞う。濁流のように血の洪水が溢れ出した。脳内に空白が生じる。  痛い。そんな考えすら許されなかった。ただただ激痛に叫びを上げる。

 だが、こんなところで倒れるわけにはいかない。絶叫を上げて少しでも痛みを軽減しながら、ダン!! と、強引に地面を踏み締めてミレーユは耐え忍んだ。

 その間も決して途切れさせずに構築していた術式が、魔法の形をなしてと迅へと炸裂する。迅は僅かに驚いた様子でミレーユを見ていた。


「……お前――」

「――"焦熱地獄"ッ!!」


 熱が、膨張する。

 灼熱の火炎が舞い上がり周囲一帯を焦土と化した。殺すことはできないまでも、距離を取らせることはできたはずだ。ミレーユはそう考えた。

 だが、この場にいる迅は所詮『分身』に過ぎない。ミレーユは読み間違えた。迅は何の躊躇もなく、すべてを灰燼に返すかのような炎に腕を突っ込み、ミレーユの肩口を掴んで地面に叩きつけた。

 「ごはっ!?」と冗談抜きに呼吸が一瞬止まる。咳き込んでいる場合ではない。炎が自身の身体を焼く。咄嗟にミレーユは自分周辺だけ火力を弱めた。

 そうこうしている間にも、迅の分身体は炎に構わずに大剣を振りかぶり、ミレーユにとどめを刺そうとしている。

 見誤った、とミレーユは思った。

 どういうスキルなのかは知らないが、この場にいる迅があくまで数ある分身の一体に過ぎないことぐらいはミレーユも推察している。

 窮地となれば、捨て身の攻撃を躊躇しないと覚悟しておくべきだった。

 形勢は再度逆転する。だが、ミレーユはまだ終われない。"支配領域"はいまだ展開されているのだ。

 で、あるならば。

 この戦場は、ミレーユの領域だ。

 

「"魔力障壁"――"風嵐"ッ!!」

 

 脳を焼き切るかのような演算速度で術式を構成すると、迫りくる迅の大剣を障壁で防いだ。急造のため構成が甘かったのか、障壁にビキビキと亀裂が入る。

 ミレーユはその隙に地面を転がって大剣の殺傷範囲から逃れた。直後、障壁が破壊されて地面に大剣が突き刺さる。

 ぶわり、とミレーユの髪が揺れた。紙一重の回避。後一秒遅ければ間違いなく物言わぬ骸となっていただろう。

 短く息を吐いて死の恐怖を制御しながら、展開していた"風嵐"で迅の分身体を強引に吹き飛ばす。

 轟、と風が唸りを上げた。迅は足を踏ん張ったが、耐えきれずに後方へと跳躍する。ミレーユは肩を裂かれた激痛に耐えながら、何とか立ち上がる。

 距離を取らざるを得なかった五人の迅の分身体は僅かに目を細めた。

 少し離れた地点では、四人のエルフ族の戦士が苦虫を噛み潰したような表情でミレーユを眺めている。

 彼らが構えている得物は弓だ。放たれる矢は魔力で強化されているだろうが、流石に"風嵐"を受けて方向を変えないほど強力ではない。

 このタイミングで範囲型風属性魔法を使用した意味は、迅に距離を取らせるだけでなく、隙を狙っているエルフ族を一時的に封殺することにあった。

 これこそが戦術の妙。

 経験に勝る超級冒険者のなせる技。

 

「まだ……なの、です。私はリリスちゃんを見捨てるわけにはいかない……!」


 ミレーユは気力を振り絞って立ち上がる。苦手な分野である治癒魔法を駆使して流れる血だけは堰き止めておいた。

 これで、また仕切り直しだ。

 ほとんど詰みだった状態からの脱出に大分無理をしたせいか、かなりの魔力を消耗している。

 相対する迅の方も、三体の分身体が重い火傷を負っていた。

 迅は厳しい表情でミレーユを眺めながら、ぽつりと呟く。サングラスの奥の瞳から感情の色は覗えない。


「なぜ、そうまでしてアレに拘る?」


 焼け石に水の治癒魔法を使ったとはいえ、まだ満身創痍のミレーユは立っていること自体が苦行だった。

 そんな当たり前の質問に、わざわざ答えさせないでほしい。


「……私の生徒だからに、決まっているのですよ」


 脳裏に蘇るのは路地裏に倒れ込むハーフエルフの少女の姿だった。

 しばらく食事を取っていなかったのか、痩せ細り、その美しい顔をこの世に絶望したかのような表情に染めていた。

 この少女を助けたいと思った。

 こんな行為は、偽善に過ぎないと分かっていても。

 それから魔法塾に招き入れ、一緒に生活していくうちに少女には笑顔が増えていった。人生に希望を取り戻したのだ。

 それを、そんな少女がようやく手に入れた幸せな日々を。

 こんな男に、奪われてたまるか。


「――あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁっ!!」


 研ぎ澄まされた集中力は人智を超えた速度で超級魔法を構築する。

 残存魔力から考えても、これが最後の一撃だ。

 ミレーユの渾身の魔力が。

 勇者に向けて、牙を剥いた。

 

 


 ◆◆◆





「……完成だ」


 小さく呟いたのは、子供のような背丈の女だった。赤い瞳を僅かに細めて、眼前に展開されている『儀式場』を眺めている。

 不死魔王リーファ・ラルート。

 彼女はいつものような応答がないことに気づいて、「?」と小首を傾げながら振り返った。

 人間のくせに、当たり前のように傍に控えている飄々とした眼鏡の少年が見当たらない。

 そういえば自分で外に向かわせたのだと思い出したのは、それから少し後のことだった。

 すぐに思い出せないあたり、どうやら相当『儀式場』の作成に集中していたようだ。完成した『儀式場』を翔に見て欲しかったリーファは悄然と肩を落とす。


「む……。頭、撫でてもらえないか」


 リーファは寂しそうに目尻を下げると、少し唇を尖らせた。

 嘆息しながら、その場にちょこんと座り込む。

 草薙達は苦戦しているらしい。

 リーファも戦闘に協力したいところだが、先日の精霊王フィアとの戦いによって思わぬ手傷を負わされてしまった。

 別に大したものではないのだが、翔が「運動は禁止ね」と言っていたので仕方なく休んでいる。そう、仕方なくだ。

 

「キリサキ……。むぅ……」


 そんなわけで、リーファは魔王城で翔の帰りを待っていた。

 








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