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WHETHER ~俺と彼女の日常~  作者: 龍酸
第1章:始まりの唄
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Mission:006

良かった、投稿がヨンジュウナナ日後にならなくてホント良かったww


 俺が悪夢から覚めて目を開けると、そこは医務室のベッドの上だった。

 春の麗らかな風が、医務室内に吹き込んで、カーテンを(いたずら)に揺らす。外では、夕焼け空が学校がもう既に終わっていることを暗に告げている。

 嗅ぎ慣れた甘い香りに誘われて、俺はゆっくりと体を起こす。が、腕に力が入らず、ベッドのリクライニング補助を利用して、なんとか起き上がる。

 さっきからするこの甘い香りは何だろう、とふと重い右の太腿に目をやると、当然のことながら雛乃が眠っているのである――彼にとっては当然ではないが――。


 「ひ、ヒナちゃん!?」


 驚いて素っ頓狂な声をあげてしまう。しまった、と思ったが、雛乃が起きる気配はない。

 彼女が右手に持っている水色のハンカチを見つけると、俺の顔はつい緩んでしまう。


 「悠くん。……好きらよぉ……」


 寝ぼけているのか、呂律(ろれつ)の回っていない口調でごにょごにょと二言三言つぶやく。

 ……ってさらっとなんかすごいこと言ってなかったか!?

 彼女がなんと言ったのか俺の記憶の中ではあまり定かではないのだが、まあ、それはさて置いといて。

 雛乃が俺をここまで運んできてくれたんだな、と今頃になって気付いた俺は、後でお礼しなくちゃな、と彼女の前髪を優しく撫でた。



 「もう、悠くんったら!心配かけないでよ」

 「ごめんってば」

 「ごめんで済まされたら警察いらないよ?」

 「それ、いつの話だよ」


 彼女が目覚めてから、俺たちは二人寮への帰途についていた。

 起きてから彼女にいきなり抱きつかれたり、ぷんぷん、と言って彼女が前かがみになったりと、それはもう男のなんたるかを一度に肯定されたような、そんなハッピーなイベントが起きまくった。※全容はお教えできません。


 「悠くん、どうしたの?……私だけに、教えて?」

 「……。まあ、俺にも色々あるんだよ」

 「……。そう……」


 何この子誘っているんですか俺に襲ってほしいんですか一応これでも俺獣になりますよ!?

 でも、色仕掛け紛いのことをされても、雛乃に心配をかけたくはない。

 そんな気持ちを悟ってくれたのか、彼女も出かけた言葉を呑み込んで、これ以上それについて問いただそうとはしない。


 (やっぱ、優しいの変わってないじゃん)


 刹那、交差点のところで誰かが待ち伏せしているのに気づく。音がしたのではない。昔から鍛えられ続けた感覚の所為だ。


 「……」

 「……なにか珍しいものでもあったの?」

 「……いや、杞憂だといいんだが、そうもいかないみたいでさ」

 「……?」


 昔からかなりの頻度で使っている高度索敵術《S.E.》を一瞬で展開する。

 見慣れた右腕の魔法の紋章から、オーラのような魔力を吸い上げて、心で魔力を練り上げる。

 それを脳に送りこんで、視神経を通って眼へ。聞く話では、この索敵魔法を使うと、いつも眼が紫色になっているらしいが、その真偽を俺が知ることはない。ただ、あのツンデレ少佐の話によると、眼の色は使う魔法の属性によって変わるらしい。今回の場合なら闇属性上級魔法なので、眼は先ほど記したとおり紫。まあ、今これを長々と解説している暇はないのだが。

 ゆっくりと眼を瞑って、透明化魔法でも消すことのできない魔力の()が周囲にないか、捜す。

 案の定、俺がいるのでは、と予想を立てていた場所に、高位魔法を使っている誰かがいた。

 ただ、それが誰だかわかった俺は、すぐさま索敵術式を開放する。

 声をかけようかかけまいか、俺が逡巡していると、かの相手が先に口を開いた。


 「お久しぶり、影森少尉」

 「お前は、……いや、お前も。全く変わってないな。それとも狙ってやったのか?今の術式」

 「んー、まあね。だってそうでもしなきゃ少尉はわかってくんないじゃん」

 「厳密に言えばもう少尉じゃないんだけどな。……厳密に言わなくてもか」

 「え、そーなの?てっきりまだ少尉か降格されたのかどっちかだと思ってたよ」

 「うるせえな、放っておけよ。そうですよ、俺はお前より苦労して這い上がってきたからな。ちょっと不祥事を起こせば即降格だよ」

 「あ、あはは……」


 こうやって話をしていると、彼女は二年前と全く変わっていないどころか背丈くらいしか成長していないまである。主に、胸が。


 「なんか変なこと考えてない?」

 「いや、考えてねえよ。背丈くらいしか成長してねえなあ、と思っただけだ」

 「なにそれ皮肉?そこのお嬢様と比べt……く、くぅ」


 雛乃の方を見た渚が、自分のそんな成長もしていn……(咳払い)胸と比べて、自爆していた。


 「渚」

 「な、なによ。そんなに私をおちょくりたいならそうすればいいじゃない!」

 「そうじゃねえよ。雛乃と比べるのはやめろ、って言ってるんだ」

 「……?」


 渚がなにも分かっていないようなので、小声になって耳元で囁く。


 「育ちが違うんだよ、育ちが」

 「なんで?」

 「いや、だってあの子長官のお嬢様だもん」

 「……」

 「……」


 渚の顔が見る見るうちに蒼くなっていくのが手に取るようにわかる。

 そして、バッ、と振り返ると、頭が地面にぶつからんばかりの勢いで頭を下げた。


 「も、申し訳ありませんお嬢!こんなわたくしめが『そこの』とか言ってしまったことお詫び申し上げます」

 「い、いや、そんな……」


 サラリーマン顔負けの猛烈な勢いでペコペコと頭を下げられた雛乃が、対応に苦慮して救助を求めるが、俺はがんばれ、と手を振った。

 それでもここに長居する訳にも行かないので、二人の横を通って軽く告げる。


 「じゃ、俺は先帰るから」


 後ろから、待って、とか先行ってんじゃないわよ、とか声が聞こえるが、とりあえず無視する。

 そういえばさっき、渚と普通に話せたし、少しはこれからに明るい兆しが見えたかな、と柄にもないことを考えてみたり。

 それでも、暖かい春風は、夕暮れの中無言を貫き通す針葉樹にも、喧騒に包みこまれる街にも、悩み悶える俺にも、無差別に吹き付けていた。

♪雷鳴~、共鳴~、静寂しじまを切り裂いて~♪


投稿し終わったので、りぶ様の『月陽-ツキアカリ-』を深夜中聞き続けようかなww








……著作権、大丈夫かなあ……

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