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WHETHER ~俺と彼女の日常~  作者: 龍酸
第1章:始まりの唄
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Mission:005

いや、時が経つのは早い、早い。

言い訳をさせてください。

今回はずっと甘党さんの『恋愛裁判』をずっと聞いてたんです~(汗)

そんな俺は、ギルティーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!

 「……織下(おりもと)(なぎさ)……」


 彼女は、俺が二年前殺めてしまったはずの、元同僚、だった。

 ―何故、こんなところに。

 ―どうして、こんなところで。

 行き場のないそんな焦りのような、遠い、いや、俺が記憶の彼方に忘却していたはずの過去が、俺を疑心暗鬼にさせる。



 果たして何秒間目を見開いていたのだろうか。

 記憶の海へ舟を漕ぎだしそうになっていた俺を正気に戻させたのは、あのときと全く変わらない、その見た目とは全く相反する、幼い渚の声だった。


 「えー、今日からこの学校に転入することになった、織下渚でーすっ!よろしくね☆」


 うおー、とクラス中から歓声が上がる。

 未だ顔を上げられずにいた俺は、全員の歓声から出遅れる。

 噛み合わせた歯はガチガチと呻き、両肩は小刻みに振動していた。



 いち早く彼の異変に気がついたのは、当然のことながら雛乃だった。

 優しい雛乃は、周りに悟られぬよう小声で問う。


 「悠くん、どうしたの?……顔、蒼いよ?」


 やはり当然のことながら反応はない。

 それを見越していた雛乃は、彼の体を優しく支えて、再び周りに悟られぬように、ゆっくりと廊下へと移動した。

 言い訳ならいくらでも言えるわ、と思いながら雛乃は悠真の額に浮かんだ脂汗を拭う。

 すると、やっと彼は落ち着いたのか、肩からふっ、と脱力するようにして雛乃に寄りかかって、……気を失った。



 気がつくと俺は、辺りがホログラム装置のあるような場所にいた。

 首から上は、動かない。

 ホログラムはどす黒いオーラを漂わせながら、どこか見覚えのある風景を映し出していたが、それが一体何なのか、彼はわからない。

 その中の俺は、今は使わなくなった、俺が世界の救世主であるとされる“新世紀十二神”の一柱である“冥神(ハーデース)”と呼ばれる所以となった古代ギリシア語の埋め込まれた、闇の魔剣、通称――Κλυμένος(クリュメノス)――を握っていた。

 そこで彼は気がつく。

 ここは、俺の記憶の中だ、と。

 あの、忌まわしき、俺の一番の闇。

 あの日からずっと、目をそらし続けてきた闇。

 償いのできない、深い、深い、贖罪の闇。

 大事な同僚であり、愛弟子だった、渚を失った、あの時の。



 気を失った彼を医務室まで運んだ後、そばでうたた寝をしていた雛乃は、彼の身に起こった異変にやっと気が付く。

 噴き出す脂汗。荒い呼吸。時々漏れる、うなされているかのような、苦しい呻き声。

 ……二年前と、全く同じだった。



 ホログラムの中の俺は、無駄な動きばかりで、今見ているとホログラムを打ち破って中に入って行ってしまいそうだ。その頃は、まだ、愛弟子がたった一人だった。



 AA級危険種である魔蟲ヘラクレスが迫ってきているというのに、目の前のC級危険種の名前も無い魔鳥に手を焼いている。

 このころは、魔力量を表す手の甲の紋章はまだ、手首と肘のちょうど中間あたりまでしか無い――とはいえ、十分すぎる量ではあるのだが――。

 魔剣の性能は超が付くほど高スペックなのだが、何せ怪我をしている渚を庇いながらの先頭だから、仕方ないといえば仕方ない。

 それでも、効率よく魔剣にためた自らの魔力を駆使して、そこかしこから湧いてくる魔鳥の群れを数百匹毎にまとめて狩っていく。

 それでも、湧くのは止まらない。

 膠着しつつある状況に舌打ちしつつ、戦況を変えるべく敵の司令塔を殺しにかかる。

 その前に、ふと洞窟に隠れて、渚を壁にもたれかからせる。彼女に告げなければならないことがあったからだ。


 「渚」


 急に俺に呼ばれた渚は、少しビクッ、として、俺の呼び掛けに答える。


 「……は、はい、何でしょうか」

 「何そんなに肩に力入ってんだよ。リラックスだろ、リラックス」

 「そ、そうでした。……スーハー、スーハー」


 彼女はゆっくりと深呼吸をして、改めて俺に問う。


 「それで、教官。何の御用でしょうか」

 「ああ。ちょっと敵の数が多くてムカつくから、指令出してる奴を堕としてくる」

 「そ、そんな……!無茶ですよ!ただでさえ周りは魔鳥ばかりですよ!?」

 「わかってる。でも、お前を守るためにもしなくちゃならないんだ」

 「な、なら……!」

 「お前なら、わかってくれるよな」


 一息に告げた俺は、思わず胸が苦しくなった。

 彼女も、何かを血の滲んだ唇を必死に動かして言葉にしようとするが、それは叶わなかった。

 彼女は俯いたまま、拗ねたように、


 「……絶対、絶対に無傷で戻ってきてくださいよ?」


 目に涙を溜めながら笑顔を作って見せた。



 それからの記憶は、あまりない。

 覚えているとするなら、AA級の魔蟲を二回の剣戟で斬り捨てたことと、……彼女の姿を二度と見なかったこと、くらいだ。

 敵を倒したあと、彼女のいるはずの洞窟は、もぬけの殻だった――正確には、彼女の大事にしていたペンダントが落ちていたが――。



 俺の判断が間違っていたのか。否、間違っていなかったはずだ。

 そんな俺の自責の念が、俺の心のすべてを、覆い隠していく。

 洞窟には、俺の喚くような号哭が、響き渡っていた――。

いやー、やっと魔法色を出しましたよww

じゃあ今までのは何だったのか。そう、プロローグです。だから、やっと始まったんだと思っていただければ幸いです。

次回は、ヨンジュウナナ(日後)にならないように気をつけます(フラグ)

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