Mission:003
DMMGAMESさんの『艦これ』やってたらハマってしもうて気付いたら2週間くらい投稿してなかった。
あかんこれ。
※白けた空気になってしまったことをお詫び申し上げます。
「……むぅ」
今日2度目の伸びをして、周りを見渡す。
ここは食堂の横に併設された、高台にあるこの学園の北側を一望できる中庭だ。
この時間だと、少し西の空に傾き始めた太陽と、学園の南にあるなだらかな山地に向かって吹く涼しい北風が、俺の奥底に眠る睡魔を強烈に呼び寄せる。
このまま眠ってしまおうか、と座っているベンチに横になろうとしたら、誰かが俺に声を掛けてきた。
「悠真くん」
「なんだ、ヒナちゃんか」
「なんだ、って何よ」
頬をぷう、と膨らませてこっちを見てくる雛乃は、何とも画になっていてとても可愛い。というか、可愛さの破壊力が超高校生級だ。特に、胸のあたりが。
「悠真くん、今変なこと考えてたでしょ」
「か、考えてないよ」
「ん、怪しいなあ。本当の本当の本当に?」
「あ、ああ。神に誓って、だ。あのツンデレ少……」
ゾクゾクッ。
なんだよこれぇ!?何、見てんのあの人!?本当に怖いって!
「どうしたの、悠真くん?」
「い、いや、何でも……」
無くは、ない。主に、目の前で強烈に主張している胸が。
「悠真くん、また変なこと考えたでしょ」
「だ、だから考えてないって!」
なんかおかしいなあ。無限ループの様相を呈しているような気が……。まあ悪いのはあのツンデレ(以下略)。
「ま、いいよ。それで、悠真くん、お昼ご飯どうするの?」
「あ、ああ、そうだったな。買ってきてないし、今から購買にでも行ってくるよ」
「あ、待って!今日ね、その、……多めに、作ってきちゃったんだ。た、食べてくれない?」
ドキッ。
やばい。可愛い。これはおかしい。反則だよこれは。殊に胸が。その胸の破壊力のせいで俺の理性が破滅にまた一歩近づいたよ。
「だ、大丈夫?顔、真っ赤だよ?」
「大丈夫大丈夫大丈夫。なんもないよ!アンモナイト!」
「……」
「……」
すいませんふざけました。まさかこんなタイミングでギャグが思いつくとは思わなかったんですよ許してくださいマジでごめん。これを読んでいただいているあなたに、深くお詫び申し上げます。
そんな風に心の中で猛烈に懺悔した後、この凍った空気をどうしようか、と考えた。そして、悩みに悩んで悩みぬいた末に、俺はこの場所からの離脱を決断した。どんだけ悩んでんだよ。
「あ、待ってよ!待ってってば!面白かったよ!」
去ろうとする俺の背中に、雛乃が必死にフォローをする。だが、笑みが顔に張り付いている彼女の顔を見てしまうと、全くフォローになっていない気がする。
「ヒナちゃん、慰めないでよ……。余計惨めになるから……」
「じゃ、じゃあ、……コホン」
次に続く言葉にかなり勇気が必要なのか、雛乃は少し咳払いをして、ゆっくり息を吸うと、こう言った。
「……私のお弁当食べて元気出して、ね?」
……。
だからやめて!ホントにやめて!俺が壊れちゃう!
なんかもう、口の中に鼻血が流れ込んできてるよ!?
ついでに言うと胸とのダブルパンチに俺はもうKO寸前だよ!
「あ、だ、大丈夫?鼻血がすごいよ!?……ほら、ティッシュ」
「あ、ありがとう」
俺の鼻血が落ち着くまで、しばしの間。
時計を見ると、もう既に昼休みが終わりを迎えつつあった。
脳が空腹を訴えたので、俺は逸れに逸れて逸れすぎた話題を元に戻した。……よく考えたけど、そんなに逸れてないね。うん。
「もう時間無くなっちゃってるし、ヒナちゃんの弁当、少し貰っていいかな?」
「いいよ。今日のはおいしく出来たんだよ」
「やった、ありがとう!じゃ、早速、いただきます」
「召し上がれ~」
本人の言う通り、かなりおいしくに出来上がっている。唐揚げはサックサクだし、ミートスパゲッティもソースとよく絡んでるし、サラダも彩り豊かだ。
「ヒナちゃんって、料理上手だったんだね」
「あはは、そうでもないよ?ただちょっと昔からよく料理してただけだよ。……それに、食べさせたい人もいるし」
「ん、最後なんて?よく聞こえなかった」
「何でもない。ほら、食べちゃいなよ。授業始まっちゃうよ?」
「……」
「何でも、……何でも、ない、よ……」
語尾になるにつれてしぼんでいく彼女の声は、やがて聞こえなくなった。顔も、徐々にうつむいていく。
終いにはうなだれるような格好になってしまった彼女に、俺は慰めの一言も掛けてやれなかった。否、掛けられなかったのである。
あまりの自分の無力さに、俺は思わず舌打ちをしてしまった。そこに含まれていたのは焦燥感なのか、それとも自らに対する失望なのか。
(俺は、いつの間にこんなに弱くなっていたんだろうか……)
一人、心の中で愚痴る。何の解決にもなっていない、と分かっているのに。
それでも俺は、最後に彼女が少しだけ見せた、憂いを含んだ、自嘲気味な笑顔が、脳裏に焼き付いて離れなかった。