Mission:002
デスクトップパソコンでりぶ様の『気まぐれスターダム』を聴きながら、徒然に書き殴る今日この頃でありまする。
「……ふぅ」
やっと2時限目の授業が終わり、力いっぱいに伸びをする。
2時限目は魔法機械学だったが、軍でやった初歩の初歩だったのでほぼ聞き流して窓の外をずっと眺めていた。
「ねえ、影森くん。影森くんってどこから来たの?」
ほら、また始まった。さっき1時限目終わった後もこうだったんだよな。
ただ、一応それなりに人と接するやり方は習得していたので、無視せずに笑顔を振りまいておく。
「えっと、前は埼玉の私立高校だったよ。そこそこ勉強してたし」
「へえ~、影森くんって頭いいんだ~」
「まあね。そこそこ、だけど」
「謙遜しちゃって~」
あはは、と顔に笑顔を張り付ける。無駄なことではあるのだが、これも諜報活動の一環だ、とどこぞのツンデレ少佐が言っていたの……ってこの背中を襲う強烈な寒気は何だろう?
ちら、と今回の保護対象である花崎雛乃の方を目だけで見る。どうやら、彼女もこちらのことを見ていたようで、パッと目を逸らされる。
俺何かしたかな?と自分の行動を顧みていると、彼女はスッと席を立ってつかつかと教室を出て行ってしまった。
彼女の姿を見失う訳にもいかないので、少し休憩してくる、と取り巻きに言って席を立ち、教室の入り口をくぐる。
不意に、声をかけられる。
「きみ、どこかで見たことある」
淡々としたその声。声の主の方に目を向けると、意外にも花崎雛乃、本人だった。
「きみ、誰?もしかして、軍から来たの?」
「鋭いですね、お嬢様」
「お、お嬢様って……」
「失礼いたしました。私は、此度雛乃お嬢様の護衛として派遣されました、影森悠真と申します」
「そ、そんな、頭を……って、え、悠真くん!?」
「……え?」
「まさか、名前が同じだったけど、ヒナちゃんだとは思わなかったよ」
「私もよ。まさか悠真くんが軍に入ってたなんて」
何を隠そう―とはいえ只今判明したばかりのことだが―、彼女はなんと昔よく遊んでいた、幼馴染なのだ。
「……にしても、ヒナちゃんって結構なお嬢様だったんだね……」
「そ、そうでもないよ!ただ単にお父様が権力持ってただけで、その、……」
「……あ、そ、その、……ごめん」
どうやらこの事実は彼女にとって地雷だったようだ。しまった、と後悔しつつ、謝る。
「しっかし、こうやって二人で話してると昔のことを思い出すね」
「そうね。こうやって肩を寄せて」
……ん?何か腕に柔らかい感触がある気が……しないでもないのは何故だろうか?
「……ってそれ肩寄せてねぇじゃねぇか!」
うふふ、と彼女は小悪魔めいた笑顔を浮かべる。
「それで、さっき“護衛”って言ってたけど、どういうことなの?」
「……」
「ここじゃ、話しづらい?」
黙って、首肯する。それだけで、伝わると分かっているから。それほどの関係だと、自負しているから。
「……そう。じゃあ、授業始まっちゃうからまた後でね」
「ごめん」
「謝らなくていいのよ。人それぞれ秘密だってあるんだから。……私にも、ね」
「……ヒナちゃんは、その、何ていうか、……変わらないね」
「そうかしら?私、こう見えて結構変わったわよ?」
「そうかもね」
そんな他愛も無い昔話をしていると、着席のチャイムが鳴った。
「じゃ、また後でね」
「そうね。とりあえず、教室に入りましょうか」