Mission:001
「―と、いうわけで、一年間よろしくお願いします」
今立っているのは、ダークブルーの表示板の前。
ここは、今回の派遣地、国立魔戦士養成学校。俺のような一流の魔戦士が育成される学校である。
―魔戦士。
世界にある“先進国”と呼ばれる国の軍には必ず配備されている、今や軍の戦略級兵器としては名の通った近代兵器である。
体に現れる紋章から手首や足首にまで広がる魔力導線が、対象者の魔力を吸い上げて非人間的な力で動き回れるような体に作り変えている。当然、人間には魔力の限界というものがあるわけであり、個人差もあるが、その効果が持続するのはだいたい300秒程度とされている。
ここでは、そんな魔戦士の卵である年頃の少年少女を集めて、将来のために教育する施設である。
気付くと、もう拍手も止んでいた。
「では、影森くんはあそこの席に座って」
担任なのだろうか、少佐と同じくらいの身長の女性が、窓際とも廊下側ともいえない目の前の列の一番後ろの席を指さした。俺はそこに座って授業を受けろ、というのだろうか。
「は、はい」
少し慌てながら、足元に置かれている自分の荷物を持つ。
足を指示された席の方に向けつつ、教室の中をぐるりと見渡す。
首を1時の角度に回したとき、今回の保護対象を見つけて足を止める。
花崎雛乃。
俺の所属である軍の最高司令官である、花崎大佐の令嬢だ。
彼女の顔を見て、昔どこかであったかのような感覚に襲われたが、彼女に睨まれたので足を元に戻す。
不意に、頬を爽やかな春風が優しく撫でる。4月らしい気温で、全く鬱陶しくない。
これからどうなっていくのだろう、などと分かりもしないことを考えながら、自分の席に座った。