無趣味が嵌ると際限無い。
女性服しか無いって・・・。
よく考えてみれば、ポーチの中は自分がゲームで使っていた武器や装備だった。
そうゲーム中で使っていたキャラは女性だった。
《趣味は何ですか?》
2年程前の春だった、大学入学後のサークル募集で可愛い先輩が自分を勧誘の為に誘ったときに言われた言葉だった。
自分はその言葉を聴いて少し足を止めてしまった、そういえば考えたことが無かった趣味ってあったけ?
周りの同級生が部活や色恋沙汰に明け暮れている頃に自分は目もくれず、ひたすら勉強に費やしていた。
その結果、良いとこの大学には入学出来たが、ふっと立ち止まってみるとそんだけの結果でしなかった。
『それで~!うちのサークルの良い所なんですけど。』
『あっ、すいません興味無いので。』
少し彼女には悪いことをしたが、彼女が語るサークルには頭半分で聞いていたが興味はまったく湧かなかった。
やれ合コンを近いうちにだとか、夏合宿でBBQをやるとか言っていた気がするが興味は湧かない。
寧ろスポーツ系のサークルなのにそれを頑張るのは内心どうかを思った。
そして、その日の夕方だった、バイト先の書店でレジをしている際に客も疎らだったので、同僚との雑談で趣味を聞いた。
『なぁ、趣味ってなんかもってるか?』
『う~ん、一概にどれかと決められませんけどゲームやアニメ、読書とかが私は趣味ですけど?』
『そうか・・・。なんかお勧めの趣味ってあるか?』
『えっ?翔平さん無趣味なんですか?』
そう言うと彼女は、驚いたように手に口を当て眼を開いた。
そこまで驚く必要があるだろうか?自分は少しイラついたがそれを察したのか彼女は直ぐにフォローした。
『あっ、ごめんなさい。』
『良いよ、別に。』
『漫画やドラマの中でしか無趣味な人って見たこと無かったので、少し驚きました。』
『まぁ、確かに自分でもこんなに無趣味なのは変だと思った、だからなんかお勧めの趣味ってないか?』
それを聞くと、彼女は少し考える仕草なのか顎の下に手を当てながら少し上の方を見ながら小さく独り言を言っていた。
《う~ん、さすがに初心者にあのアニメは不味いわよね、けどあの最後のどんでん返しをぜひ味わって欲しいし・・・。
けど、そうなると難しいのよねさすがにタイラビを進めるわけにも行けないし?黒紳士を進めるのはどうかと思うけど腐男子を作る機会には絶好だけど。》
『なぁ、まさかとは思うが腐向けのジャンルは良いからな。』
『えっ、何でそれを!?』
『小声が聞こえているのと、あと慧ちゃんの注文しての取り置きを見ているとバレバレだろう・・。』
『あっ、それは創作の一環と言いますか友達に頼まれて・・・。』
たしかに、彼女こと穂田 慧はクリエイター系の専門学生だが、その為の資料とは思えないし買い方にしても、新作の腐向けと思われる書籍に給料の半分から3分の1を使う程の買い方はどうかと思うが。
『あの・・・、内密にお願いします。』
『ああっ、解った。』
まぁ、仮にばれたとしてもこの職業柄(書店)は腐に対してはえらく寛容な所があるから、特には問題無いだろう。
それに実はこの書店のパート連中は腐向きが好きな人も多いし、その人達の読書会に彼女を呼ぼうとしていたのを聞いたのは言わないほうが良いだろう。
『それで、話を戻すけど何か面白いものは無い?』
『う~ん、それじゃぁ』
彼女はそう言うと、店内を見渡してたぶん趣味になりそうなものを探した。
すると何かを発見したのか、見ていた先のコーナーに向かっていき何かの本を持ってきた。
『これなんかどうです?』
そう言って差し出したのは、ゲームコーナーに置いてあったあるゲームの紹介雑誌だった。
雑誌にはたぶん龍と思われるモンスターが載っており、更にその周りには最強だとか速攻だとかの文字がでかでかと印刷されていた。
『モンスター戦線?』
『最近、流行っているゲームなんですけど、出てくるサポートキャラの女の子が凄く可愛いし、初心者でも熟練者とパーティが組みやすいので良いですよ。』
『?』
自分が良く解らないと反応していると、彼女は解り易く且つ面白そうに語った・・・。
お客があんまり来ないとはいえ、一時間ぶっ続けで・・・。
『~~~~って言うことなんですよ!』
『あっ、うん解った。』
『じゃあ、バイトが終わったらやりましょうね!』
いつの間にやら、やる方向で話は進み自分はいつの間にかさっきの本を買うことになっていた。