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出口と逃げ道

作者: 零雄二
掲載日:2014/05/17

短編なのですぐ読めるかと思います。

読んでらっしゃいませ。

私は階段を登っていた……

気持ちは階段を降りていくようではあったが。

私は自分の命にけじめをつける為に階段を登っていく。

不思議なもので私の心に死への恐怖は無かった。

まるで風の吹いていないような。そんなに静けさがそこにはあった。

冷静に自分の命と向き合って自分の命の軽さを改めて実感出来たような気がした。

私の命とは自分にとってこんなにもとるに足らないものだったのだ。

あれこれ考えるうちにビルの屋上に着いた。

ようやく死ねる。

屋外へと通じるドアのすぐそばにある小窓から明るい日差しが差し込んでいる。

私は屋上のドアは外鍵なのはわかっていたが一応、とノブを回し引っ張る。

開かない。

やっぱりか。

想定の範囲内のことだったのですぐに横の小窓をあけた。

小窓はちょうど肩の位置に下枠がある高さだった。

下枠に手をつけて思い切り跳ねる。

上半身を上手く窓の外に出すことが出来た。

よし。

と思った次の瞬間、私はその勢いで手を滑らせバランスを崩し小窓の外へと落下した。

痛い……

幸いにも頭から落下することは避けられたが背中に激痛がはしる。

しかし当然のことながらここはビルの屋上だ。小窓の下は一面のコンクリートだ。

痛くて動けない。

きっと骨をやられたのだろう。

私は仰向けになってじっと痛みが引くのを待った。

幸い回りに人の気配はしなかった。

聴こえるのは鳥の鳴き声、自分の鼓動くらいだった。

見えるのは空。一面の青。

私はなんだか気持ちがわるくて目をつむった。

コンクリートがひんやりする。

何故私はこんなに苦しまなければならない?

何故私はここにあるのだ?

そんな疑問が解答を得るまもなく次々とわきだした。

うっ……

ズキンと背中が痛んだ。

考えに夢中になっているうちに体を少し動かしてしまったのだろうか。

なんなんだ。

私は無性に腹が立ってきた。

その怒りはその痛みに対してでも自分に対してのものでもなかった。

そして私をここにまで追い詰めた奴らに対してでもなかった。

それはこの社会全てに対してのものであった。

痛みを生んだ不甲斐ない自分。

こんな自分を生んだ私を取り囲む全て、大気。

そしてその大気を取り囲む大気。

全ては繋がっていて、全てに責任がある。

何故今まで気が付かなかったんだ。

私は目を開けた。

空には雲が出てきていた。

私は痛みをこらえながらやっとの思いで体をおこしドアへと向かった。

私に迷いは無かった。

くるりと鍵を外しドアを開け、階段を下っていった。



ふふふ……

私は今朝の新聞を取ると思わず笑みを浮かべた。

私はリビングのソファへと腰掛け、すぐに新聞を読み始めた。

『毒物混入51人死亡。犯人未だ掴めず』

新聞の大見出しには私の犯したことの報告がなされていた。

成功だ。

私は記事の小見出しひとつ、ひとつを成功を噛み締めながらじっくりと読んだ。

心臓が高鳴っている。興奮している。

落ち着け。

私は深呼吸した。

こうも浮かれているだけではいけない。

私は次は他に新しいことをやろうか、それとも規模を大きくして同じことをしようかというようなことを考えだした。

すると急にこの報復行為にふわふわと宙に浮いたようなものを感じた。

社会にメッセージを伝えたい。

この行為の根源はそんな偽善的な考えではなかった。

私はただ憂さ晴らしをしているのだ。

私を生んだ大気へのささやかな復仇。

痛みが生んだ痛み。とでも呼べばいいだろうか。

『どうしてなにもしていない彼女が死ななければならなかったのか。』

こんな遺族の言葉が新聞には載っていた。

全ては繋がっていて、全てに責任がある。

空気を吸って吐かねばならないこの社会でなにもしていないなんてことはあり得ない。

極端に言えば、全ての物事は他人事では済まされないのだ。

他人事……

ふと私自身が自分を、自分の行為を他人事程度にしか見ていないことに気が付いた。

すると急になんとも落ち着かない、不安と呼ぶにふさわしいものが私を襲った。

この報復行為もいつかは終わる。

ではそれはいつなのだろうか。どう終わるのだろうか。

ピンポーン

私は不意をついた訪問に驚いた。

心臓が高鳴っている。さっきとは違う。鼓動が冷めている。

出てはいけない。

私は直感的にそう思った。

しかし出ない訳にもいかない。

そんな義務感が少し勝った。

私はチャイムがなってから随分とたっていたので慌てて玄関へ向かった。

鍵を外しドアを開ける。

するとそこには二人の男が立っていた。

異様な雰囲気。

片方の男の手には警察手帳があった。

私は頭が真っ白になった。

これはまずい。まずい。

逃げなくては。

私は窓へ向かおうと足を後ろに……

動かない。

目の前の二人の男は少しづつ私に近づいていた。

来るな……嫌だ。

何度も脳は命令を出す。

しかし体は恐怖で言うことを聞かない。

もう駄目だ。

私は恐怖のあまりに目を閉じた。



目を開けると一面が青だった。

なにが起きたんだ……

私は今まで起きたことを思い出しながら体をおこそうとした。

痛っ……

背中に激痛。

私は混乱していた。

確か窓から落ちて……

そして私は一つの結論に達した。

あれは夢だったのだと。

それもそうだ。

犯罪は私にまったく似合わないと自分で思う。

報復行為を自分がするなんて想像も出来ない。

なんだか笑えてきた。

ふふっ

笑うと背中に痛みが走ったがそれでも笑った。

空が青い。

私は痛みに悶絶しながらも立ち上がり出口へと向かった。


完。

零雄二の一作目です。

『私』の心情を想像出来たでしょうか…

最後、『私』はどこへ向かったのか。


不備とか辛口意見大歓迎します。

感想批評酷評頂きたいです。待ってます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 犯罪は夢にしなくても良いんじゃないかな 夢にしちゃうとなんか逃げているというより自己を守っている感じがしちゃう もっとさらけ出しても良いんだよってなんか偉そうだな自分
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