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腐女子な彼女2

作者: 有機ぱん

俺の彼女伊集院しずかはとても可愛い。

それは贔屓目なんかじゃなく本当のことだ。

顔も良し、性格も良し、頭も良しととても完璧な彼女は2年生になった今でも生徒会長をやり続けている。

当たり前の事だが、ファンクラブまでもある。


でもしずかには誰にも言えない秘密があるのだ。

それは彼女が、末期すぎる腐女子だと言うことだ。


しずかは俺が友達と話しているだけで「工藤くん彼氏ができたんだね、おめでとう」と言い、しずかのファンクラブの男子に呼び出しを受ければ「やっぱり工藤くんはモテモテだね」と涼しい笑顔を見せながら言ってくるのだ。

そのたびにしずかが一番と言うが話を聞いてくれない。

しずか曰わく

「工藤くんは男子にもてるんだよ(と言うか男達にヤられちゃえ♪)」


そう言われたときは何のことだか分かりたくもなかったが、あのときしずかが言った言葉の意味が分かった気がする。

なんと俺は今、ストーカー被害に遭っているのだ!

残念な事に相手はれっきとした男子……。


ある日の晩のこと、俺はお菓子を買いにコンビニに出向いていた。

もう少しで補導される時間帯のせいもあり帰りは人通りの少ない裏路地を通ることにした。

それが俺とストーカくんとの出会いとなってしまったのだ!


「おい金出せよ!今日もってんだろ」

「早くださねえとボコるぞ!」


そんな声聞こえてきたのだ。

いつもの俺だったら巻き込まれたくない気持で素通りするのだが、あいにく俺の通る道のど真ん中でそれは行われていた。

仕方なく携帯を取り出し、わざと大きい声で「警察ですか?不審な人がいます」と言うと、案の定そいつらは小さな舌打ちと共に少年を置いて逃げていった。

携帯をポケットにしまい俺は取り残された少年に近づいた。

「大丈夫か?」

そう言葉をかけるとこちらを向き深々と礼をしてからすぐに立ち去ってしまった。

それで終われば良かったんだが、終わらなかったのだ…。


次の日、しずかに呼ばれ近くのカフェに行くと笑顔でこう言われたのだ、

「男を惚れさせるなんてさすがだね工藤くん!」

「…はい?」

静かは嬉しそうに笑い俺の両手をぎゅっと握ってくる。

そして真剣な顔で俺を見てきた。

そんな顔にキュンッとしてしまった俺だが、出来るだけ顔にはださにようにした。

「昨晩瑞希くんを助けたんでしょ?」

「誰それ?」

そう聞き返すと少し頬を膨らませて「覚えてないの?」と怒りぎみで言ってきた。

まあ、可愛いんですけどね、その顔。

俺は知らないよという風に首をかしげると、しずかは俺の両手を放しテーブルに出ていたメロンソーダを飲んだ。

俺はいずかが飲み終わるのをまってから口を開いた。

「で、その瑞希くんってだれなんだ?」

名前で呼ぶほどだから仲が良いんだろうけど、話の内容的に相手はれっきとした男だ。

俺だって名前で呼ばれたこと無いのに…

絶対俺の方がしずかと長くいるのに…

そんなささやかな嫉妬心を燃やしながらしずかの方をじっと見る。

「瑞希くんは生徒会の後輩だよ。見た目が可愛いから受けかなぁって思ってたら、なんと性格がドSなの!やっぱり性格を考慮したら年下攻めも美味しいなって、でも『さわんじゃねぇ』って言いながら実はもっとやって欲しいツンデレとか、『俺のこと欲しいんだろ?』って感じの誘い受けっていうのもあるから、実際彼が受けなのか攻めなのかは分からないなぁ。まあ私的には可愛い顔の子は全て受けだけどね、工藤くんも含めて」

一気に言い終えた相手を見ると、少し息切れしているのが分かる。

その顔はきらきらと輝いていてとっても可愛いが、内容だけ聞いていると実際の彼がよく分からなくなった。

しずかの妄想が入りすぎて彼に少し同情する気持も芽生えてきそう…。

「…で、その瑞希くんが何?」

「ちゃんと聞いてた?

だから、昨晩瑞希くんが恐喝されたんだって。でも工藤くんが現れて格好良く助けてもらったんだって。工藤くん受けのくせにやるね~。普通だったら攻めの子が受け男子を助けるのがベタなんだけど、美味しいからアリにしたの。でも一番良いのは、恐喝してきた男子が『ちっ金ねえのかよ、』って言ってそのままプレイに入って…」

…やばい、どんどん話が見えなくなっていく。

つまりアレだろ、俺が昨晩助けた男子は生徒会の後輩だったってだけだろ?

なのに何でしずかはこんなにテンションが高いんだ?

「…それでどんどん恐喝された相手に調教されていくの。で、そこに愛がないのかって言ったらそうでもなくて、してるほうもされてるほうも実は相手が大好きで、この関係が崩れていくのが嫌だからわざと本音を聞かないように…って工藤くん聞いてる?」

しずかが少し頬をぷくっと膨らましてこっちを睨んでくる。でも可愛いせいでその効果は半減、いやそれ以下になっている。

「だから、瑞樹くんがどうしたんだ?」

そう聞くとなぜか知らない(分かりたくもない)けど嬉しそうにパアァっと顔を輝かせてきた。それ程嬉しいのか、彼氏が男に興味を持つのが…。

「だからね、瑞樹くんが工藤くんのストーカーになったの♥」


……………はい?


「あ、あのしずかさん、意味が分からないんですが…」

「だーかーらー瑞樹くんが工藤くんのこと好きになったんだって」

何こいつ、めっさ嬉しそう…

てか何で彼氏がストーカー被害にあってるのにしずかはこんなに輝いているんだ?

するとしずかかが俺の後ろを指さした。不思議に思いその指先を見てみると一人の少年と目があった。その少年は目があったとたん顔を赤くして俯いてしまう。

どこかで見たことあるような…

「ほら、あれが瑞樹くん。可愛いでしょ」

「へぇー……え?」

「ね、ストーカーになってるでしょ?だって私が許したんだもん」

しずかの口から恐ろしい言葉がこぼれ出てきた。

許した、だと…。


しずかのバカーー!


実際に言うことはできないから心の中で思いっきり叫んだ。


しずかは席を立ち、その瑞樹くんのところに向かった。そして何かを話したと思ったら瑞樹くんだけが俺のところにきた。


「あの、工藤先輩、昨日はありがとうございます。…あの会長から聞いたと思うんですけど……一目ぼれです!付き合ってください!」

瑞樹くんは深々と頭を下げ右手を俺のほうに向けている。初めての告白なのか少し震え、耳までも赤くなっている。ああ、俺もしずかに告白するときはこんなんだったのか…。


俺は瑞樹くんの頭に手をのせ、撫でてやった。

勢いよく瑞樹くんの顔が上がり、嬉しそうに輝いている。しずかもそうだが、輝いている人間とはここまで美しく見えるのか…。

俺は優しく微笑み口を開いた。


「断る。」


いやいや、ストーカー君にかける慈悲とか無いでしょ。

てか俺はホモじゃねぇ!(これ重要!)


それが何のツボをついたのかは分からないが、次の日学校に行ってみると靴箱の中にラブレターが入っていた。もちろんあのストーカー君からだ。


工藤先輩へ

 昨日は突然すみません。

急に同性から告白されたら先輩も困ってしまうと後から反省しました。

でも僕はあきらめません。

だって、あの一夜の出来事は忘れることができないからです。

あの夜の先輩はすごかった。

僕を助けたと思ったら、攻めて、攻めて、攻めて、どんどん僕を欲望の渦に巻き込んでいきましたね。そして甘い接吻をかわし……

(以下16ページ)


うん、しずかと同じ分類の人か。

俺はその手紙をシュレッターにかけてすぐに捨てることにした。


それから毎日ト登校するときに視線をかんじ、トイレにいる時も視線をかんじ、下校するときも視線を感じるようになった。


放課後しずかと一緒に下校していると、後ろのほうからストーカー君の視線をかんじた。それに気づいたしずかは一気に坂を下りて行って俺を振り返った。

「さすが工藤くん、モテモテだね!」

嫉妬する様子もなく、ただ嬉しそうに笑っているしずかはとても可愛かった。


「もうしずか大好き!!」

俺はそう叫びながらしずかの後を追うため坂を一気に駆け降りた。



きっとしずかの全てが許せるのは惚れた弱みなんだろうな…。





ストーカーww


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