第十七話 運命の日。
いつもより長いはずの春休みも、舞い散る桜の花びらと共に、風のように過ぎていった。
そして運命の日。
クラス分けの掲示板の前には、既に人だかりができていた。
「一緒のクラスだといいな」
中等部にはクラス替えがない。
一年で同じクラスになれるかどうかで、私の中の幸福度はかなり変わる。
「六クラスあるからな……さすがに無理かも」
無理かもって優希君。
そんなにあっさりと。
私は何がなんでも、一緒のクラスになりたいのに。
確立は6分の1。
算数の苦手な私には、高いんだか低いんだかわからない数字だ。
でも優希君が無理って言うんだから、無理なのかな。
せっかく同じ中学に通えるようになったのに、入学式の喜びなんて全然ない。
クラス割りのことなんて忘れてたよ。
「あっ、あった」
「はやっ!」
暗い気持ちに掲示板を見るのを恐れていた私の思いなど、全く気付いていないかのような優希君の声に、ツッコミのようなノリで言葉を発してしまった。
「ほら、A組のところ」
「優希君はA組か」
私は何組だろう。
ああ、見るのが怖い。
「舞子もだよ」
「へっ?」
「舞子もA組」
「嘘っ!?」
そんなラッキーなことあるはずない。
信じられない思いに、急いで掲示板へと顔を向けた。
「あった!」
上下に並んだ矢神優希と夢野舞子の文字。
「あったよ、優希君!」
信じられない。
まさにミラクル!
「あった、あった!」
「合格発表じゃないんだから」
感極まり涙ぐむ私に、優希君は呆れ顔だった。
でも、その目は優しく笑っていた。
「三年間、よろしくな。舞子」
「うん」
三年間という響きが嬉しくて、私は満面の笑みで大きく返事をした。